僕の妻は、悪の組織の大幹部

属-金閣

第1話 僕の妻

 世界は今、異世界からやって来た悪の組織によって侵略攻撃を受けていた。

 だがある日、同じ世界からやって来た1人の青年が世界を守るためにヒーローと称し、悪の組織と戦い出す。


 そんなレッドを助けようと世も動き、レッドに認められた青年と幼馴染の女子が力に目覚め、悪の組織と共に戦い世界の平和を守っていた。

 そして悪の組織は一度世界に身を潜めながら、世界侵略を狙っていたがレッド達も日常生活を送りながら正体を隠して戦っていた。


 だがこれは、そんなヒーローと悪の組織の戦いではなく、そんな世界で普通に暮らすとある新婚夫婦の日常物語だ。



「うん。いい出来だ。にしても、今日は遅いな」


 僕は、夕飯に作った味噌汁の味見をしていた。

 その味の出来栄えに僕は頷き、火を止め鍋に蓋をしてリビングへと向かい携帯を手にとった。

 遅くなったが、僕の名前は風谷俊平かぜたにしゅんぺい28歳で専業主夫をやっている。

 今更だがこれは、僕と妻である彼女との日常を何かに残そうと始めた日記的な物だ。

 妻とは最近結婚し、妻はバリバリ働くタイプであり僕の事情もあって、僕は彼女を支える為に専業主夫をしている。

 すると玄関のチャイムが鳴り、僕は直ぐに玄関へと向かい、扉を開けるとそこには僕の妻がとても疲れた様子で立っていた。


「ただいま~」

「おかえり、エリナ。今日もお疲れ様」


 今目の前にいる、綺麗な黄金の髪をなびかせスカイブルー色の瞳をした彼女こそ僕の妻であるエリナ・スーウェンである。

 妻はきっちりとしたスーツ姿でとぼとぼと玄関に入って来て、手に持っていたバックを置きヒールを脱ぎ始めた。


「エリナ、今日は先にご飯を食べるかい? 明日休みだったよね」

「うん。もうおかなペコペコだし先に食べるよ」


 僕は妻の置いたバックを持ち、先に部屋に進みリビングにバックを置いてからハンガーを手に取り、彼女のスーツを貰い掛けた。

 そのまま妻と共に作り立ての夕飯を用意して食べ始めると、流しっぱなしにしていたテレビから今日のニュースが流れだす。


「今日のヒーローと悪の組織の戦いの結果、もうテレビで流れてるんだね」

「ぶっ」


 突然妻はその言葉を聞くと、飲みかけた味噌汁を少し噴き出した。


「だ、大丈夫? むせた?」

「う、ううん。ちょっとね……それにしても、これが味噌汁って味なのね~初めて飲んだけど美味しいわね、俊平」

「そうでしょ。エリスが飲んだ事ないって聞いて驚いたけど、口に合って良かったよ」

「う、うん! 本当に美味しいわ! お、お代わりもらおうかな~」


 僕は妻から器を貰い、キッチンへと移動した。

 この時僕は、妻は僕をテレビから流れる映像を見せない様に遠ざけたのだと薄々感づいていた。

 その訳は、僕の妻が世界侵略を企む悪の組織の大幹部だからである。

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