愛しきあなたと
予定ならこの後に領地へ向かうことになっていたのですけど、どうやらお母さまが公爵様に現国王の補佐をするようにと頼まれたようです。そのため領地には戻らず今は王宮の中で生活しています。
王都の我が家が建て直されればそこに戻ることになっていますが、ドルスもまだ怪我が治っておらず王宮に居るので、私にとっては嬉しい事ですね。
そして、今は私はやることが無かったため、王宮に居る怪我人の治療の補佐をしています。ドルスが居る近くに居られることは嬉しいのですけれど、あまり話すことが出来ないのが不満の種ではあります。
ですが休憩中は話すことは出来ますし、このようにくっ付くこともできるのですから、不満を言ってはいけませんよね。
「あの…お嬢様。このような場所で私と接触しているのはよろしくないと思うのですが」
「いいじゃないですか」
「いえ、貴族である以上、安易に異性と触れ合うのは良くないと」
「もう、何処にも行ってはいけませんよ? ドルス」
「え、ああ…なるほど。長期間合わなかったことによる反動か、これは」
「聞いていますか?」
「ええ、聞いていますよ。少なくとも私は何処にも行きません」
私もドルスの側を離れることは無いので一生一緒に居られますね。……一生ですか。
「あの…ドルス」
「何でしょう?」
「私、ドルスと結婚したいのですけど」
「は? あ、いや。さすがに使用人とは無理かと思いますよ?」
「先日、侯爵家の令息と平民上りのメイドが結婚していましたから問題は無いと思います」
なかなか思い切ったことをする侯爵家です。我が家は子爵ですし、ドルスは男爵家出身ですから当りは少ないと思いますが、平民上りを嫁として迎え入れると言うのは結構なことだと思います。ですが、そのおかげで私も思い切ることが出来るのですから、ありがたいことですけどね。
「あ…あぁ、確かに、それがありましたね。いや、そうだったとしても少なくとも奥様の許可が必要だと思いますよ?」
「そう言うと言うことは、ドルスは私と結婚してくれると言うことでしょうか?」
失言だったのかドルスは私がそう聞くと一瞬ですけど体を強張らせました。
「……まあ、私もお嬢様のことが好きですからね。結婚できると言うなら願ってもいないことです」
「そうですか。私もドルスのことが大好きですので、意地でもお母さまに許可を貰わないといけませんね」
「…そうですね」
何やらドルスが呆れたような気配がします。しかし、お母さまに許可を貰うにはどうしたらよいでしょうか? 何となくあっさり許可が貰えそうな気もしますけど、出来ることはやっておきませんと公開することになるかもしれません。
「お母さまに許可を貰いに行く時はドルスも一緒に来てくださいね?」
「もちろん。一緒に行かせていただきますよ。お嬢様」
さて、私とドルスが結婚できるように頑張らなければなりませんね。ですがまずは、私に振られた役目を全うしませんといけませんね。そうしなければお母さまの印象が悪くなってしまいますから。
さあ、頑張っていきましょう。
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