きみとずっと、この星空を眺めていたい

三沢ケイ

プロローグ

プロローグ

 見上げた先にあるのは、満天の星だった。


「あそこ、夏の大三角形が見えるよ」

「えー、どこ?」


 隣に立つ幼馴染──原田はらだしずくはくりっとした視線を上に向け、ゆっくりと視線を彷徨わせる。俺は少し屈んで雫に顔を寄せ、空の一角を指さす。


「ほら、あそこ。白いのがこと座のベガ」

「白い……。あ、あれかな? 侑くん、すごいね。私、未だに前に教えてもらったオリオン座くらいしかわかんない。冬に見える」


 目的の星──ベガを見つけた雫は、空を見上げながら表情を綻ばせる。


「ベガは別名、七夕の織姫星だよ」

「そうなの?」

「そっ。これくらい、誰でも知っているだろ? 常識」

「えー、そうかな? 私もきちんと星座を覚えないとっ。侑くん、教えてよ」


 雫は焦ったように言ったので、口を噤んで押し黙る。雫は覚えなくていいと思うよ、とも言えないし、困った。


「自分で勉強しろ」

「ええー。けち!」

「けちで結構」


 ぷくっと頬を膨らませた雫が可愛くて、思わず笑みが漏れる。


 ひとしきり笑って、ふと星空を見上げる。

 夜空の星は、遥かずっと昔から同じ景色を描いている。百年前の人も、二百年前の人もこの景色を見たのだろうか。

 永遠とも思える時間、ずっと変わらない星々の関係。自分達はどうなのだろう。


 願わくは、きみとずっと、この星空を──。

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