第16話 服屋

 マーサルの服が高級すぎることに気付いた私たちは、薬草採取の予定を変更して服屋に向かっています。


「どうも、さっきの男が後を付けてきているようね」

「そうなのか? これからどうする?」

「ここで襲ってくることはないでしょうから、先ず服屋に向かうわ」


 男につけられているのが気になるも、そのまま服屋に向かいます。


 向かった服屋は割と大きな古着屋で、庶民向けの服を扱っているところです。

 販売だけでなく、古着の買取も行っているお店です。


「いらっしゃいませ。ご自由にご覧ください」

「すみません。成人男性向けの服はどの辺にありますか?」

「それでしたら右奥になります」


 言われた通り右奥に進むと、男性用衣類が吊るされていました。私は、それには目もくれず、その脇にあった籠に山積みにされたサービス品に手をつけます。


「この吊るされている物の方が探しやすいと思うが?」

「そっちは高級品なのよ! 目立たない服を買いに来たのに、高級品を選んでどうするの!

 それに、そんな高級品買うお金もないし」

「そうか、こちらは高級品なのか。これが高級品となると、確かに今着ている服では目をつけられかねないな……」


「今着ている服をここで売ればかなりのお金になると思うけど、それは最終手段としましょう」

「そうだな。これは学園の制服だから、何かの拍子に日本に戻れた時にないと困るからな」

「そうよね。突然現れたのだから、突然戻れることもあり得るのよね……」


 私は少し寂しい気持ちになってしまいました。


「そんな寂しそうな顔をするなよ」

「寂しそうな顔なんかしていないわよ! それよりこれなんかどうかしら?」


 私は気持ちを切り替えて、サービス品の山の中から状態の良さそうなものを選び出します。


「こちらの基準がよくわからないが、悪くないんじゃないか?」

「それじゃあ試着してみて。問題なければそのまま着ていくから」

「わかった。試着はどこですれば?」

「店員さんが案内してくれるわ。すみません。これ、試着したいんですけど!」

「はい、ではこちらへどうぞ」


 マーサルは店員に導かれ店の奥に入って行きました。

 さて、この隙に。

 私は急いで女性の下着売り場に移動します。


 今は洗ったそばから魔法で風を当てて乾かして使っていますが、流石に、替えの下着は持っておきたいです。


 私は急いで下着を選んで会計を済ませます。


 待つまでもなく、マーサルが着替えてやってきました。


「どうかな?」

「問題なさそうね」

 私は一回り確認してからそう答えます。


「このまま着ていきますから会計お願いします」

「はい、かしこまりました」


 私たちはお金を払って、服屋を出て、薬草採取に向かいます。

 予定外の出費をしてしまいました。

 これは、何としても薬草を見つけないと、本当にミーヤさんの所に泊まれなくなってしまいます。


「元着ていた服はどうしたの?」

「アイテムボックスに入れたけど?」


「そう。後ろの男がこれを見て、服を売る程お金に困っていると思って、諦めてくれればいいんだけど……」

「そううまくいくかな?」

「せめて、薬草採取の邪魔だけはしないで欲しいわね」


 私たちは、王都の城門を出て、薬草採取の穴場に向かいました。


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