第22話 アイアンウルフ
「おい、ちょっと静かにしろ」
「リュートさんが私にだけ厳しいのです」
「そうじゃない! モンスターの気配がする」
「え? そんなの分かるんですか?」
「分かる時もあるんだ」
モンスターは、ほとんどの場合は目視で探す事になるが、偶に気配を感じる事がある。
そして今は嫌な気配を感じる。
今までのモンスターとは違い、囲まれているような嫌な感じを受けるがモンスターが囲んでくるのか?
これは、俺も初めての経験だ。
「リュートさん、姿は見えないようですが、敵はどんなモンスターなんでしょう」
「おそらく一匹じゃない。複数いる。囲まれている感じがする。三人でトライアングルを作って気を抜くな」
「「はい」」
少し開けた場所に移動して相手の出方を窺うが、まだ姿が見えない。
トロールのような大型であれば目視出来ているはずなので、それ程大型ではないと思う。
それに俺が心配しているほど数も多くはないのか?
緊張からか額から頬を伝って汗が流れ落ちる。
「リュ〜トさ〜ん、何も出て来ませんよ。勘違いとかではないのですか?」
「それはない」
蒼花には俺の緊張感が全く伝わっていないらしい。
『バキッ』
前方から枝の折れるような音が聞こえて来た。
「くるぞ!」
音の方に集中していると四方から突然大きな黒い塊が飛び出して来た。
俺は剣を振るい退けてから『アイスジャベリン』を放ち一匹を仕留める。
獣型。オオカミか? ただ普通のオオカミとは大きく異なり毛皮の部分が黒光し、金属質に見える。
そして大きさは通常の狼の三〜四倍はあり、かなり大きい。
こいつはアイアンウルフ。
数十頭単位の群れで活動し、単体であれば数の力で勇者をも葬る事があると言われている、大型獣だ。
こちらは三人いるとはいえ、経験の浅い二人と俺だ。かなりまずい。
『風切り』
背後から蒼花がスキルを発動するのが聞こえてくる。
「二人とも大丈夫か?」
「はい、びっくりしましたが大丈夫です」
「私もなのです」
息をつく暇も無く次のアイアンウルフが襲って来たので迎え撃つ。
接近されると結構怖いので近づかれる前に『アイスジャベリン』を発動する。
アイアンウルフの毛皮は文字通り鋼鉄並みの硬さを誇っているが、元々勇者のスキルだった『アイスジャベリン』はその毛皮をも貫いている。
遠距離攻撃の無い蒼花はタイミングを間違えばダメージを負いかねないので、経験の浅いのが不安材料だが今はそんな事を言っていられない。
倒したそばからどんどん次のアイアンウルフが飛び出してくる。
しかも都合よく一体ずつ襲ってくるわけでは無く、複数同時に襲いかかってくるので、俺も『アイスジャベリン』だけでは間に合わず、剣を使って倒している。
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