第14話 勇者池谷
勇者と思われる男が縋り付く男性を蹴り飛ばし、蹴られた男は派手に吹き飛んで道
に転がった。
その光景を見た瞬間俺の中で完全に決まった。こいつは俺が殺す。
「う、ううっ、お願いです。そのお金が無いと、うちはやっていけなくなります」
「そのぐらいまた稼げばいいだろ。じゃあな!」
俺は勇者の男を観察する。
正面から戦って勝てるか?
体つきも身長も俺より一回り大きいのでパワーはありそうだ。
「こんなしけた金じゃあ禄な所いけね〜な。アフロディテは無理っぽいからカリスで我慢しとくか」
男の声が聞こえて来た。
どうやらこいつはこの金で娼館に行くようだ。俺は行ったことは無いが名前だけは聞いた事があるので間違い無いだろう。
俺は距離を保ちながら男の後をつける。
「これはこれは、池谷様お待ちしておりました」
「あ〜これで何人か頼むぞ」
「はい、かしこまりました」
あいつの名前は池谷か。人が働いて貯めた金を強奪しておいて娼館であっという間に使い切るのか。
本当に腐っている。やはりこいつらは人間では無い。完全な害悪だ。
金は使われてしまったので、先程の男に返してやることは出来ないが恨みだけは晴らしてやる。こいつを野放しにすれば、明日にでも違う犠牲者が出る。
俺は、池谷が出て来るまで店の外で待った。
完全に夜を迎えて、人通りが減った頃にようやく奴は出て来た。
「やっぱりアフロディテの方が上玉が多いな。明日はもっと金を奪って来ないとな。今日のおっさんはしばらく寝かしとけばまた金がリポップするだろ」
話を聞くだけでムカムカして怒りが渦巻いて来る。
どうする。ここで殺るか。
だが、こいつは昨日今日、この世界に来た感じじゃ無い。店の常連のようだった。と言うことは、今の俺よりも強い可能性が高い。
なら、隙を見て背後から殺るか。
俺は暗闇に紛れて池谷の後をつける。
しばらく後をつけると池谷が脇にそれ、ズボンを下ろし始めた。
どうやら用を足そうとしているらしい。
チャンスだ。
俺は剣を抜き、一気に池谷の背後に迫り剣を振るう。
「ぎゃっ! イッテ〜! お前なに者だ! PKか?」
池谷が訳の分からない事を騒いでいるが仕損じてしまった。
暗闇で距離感を誤ってしまい斬り込みが浅かったようだ。
こうなれば後は正面から討つしか無いが、手傷を負わせた分動きは鈍いはずだ。
「クソが! ふざけんな。勇者は絶対安全じゃね〜のか『アイスジャベリン』」
池谷が魔法を発動して俺に攻撃を放って来たが、辛うじて交わす事が出来た。
『火炎剣』
俺は剣に炎を纏わせ池谷をしとめにかかる。池谷が手持ちの剣で受け止めるが
「そのスキルお前もやっぱり勇者か! クッソ〜リアルでPKとかありえね〜だろ。頭おかしいんじゃねえか!」
「俺は勇者じゃない。ブレイブスレイヤーだ」
何か訳の分からない事を喚いているが、俺にとっては無防備に隙が広がっているようにしか見えない。
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