第12話 オーク
今度はすぐにモンスターが見つかり朱音が対応することになった。
「あれがオークだ。倒してみろ」
「あんな大きいのを倒せるんですか?」
「お前次第だが、倒せるんじゃ無いか」
「わかりました。近づいてからの方がいいんですよね」
「そうだな」
朱音は意を決してオークの方に向かって行くが、その所作は完全に素人で、足下から普通に音をたてながら近づいて行く。
当然モンスターであるオークはそれに気がつき朱音を発見して、猛然と向かって来た。
「きゃ〜! 何でこっちにくるの? 来ないで『ウィンドカッター』」
朱音が魔法を発動すると前方の木が切断されて、朱音の方に向けて倒れて来た。
「きゃ〜!」
朱音が倒れて来た木を慌てて避けるが、そのせいで完全にオークから意識が逸れてしまい、目の前にオークが迫っている事に気づくのが遅れてしまった。
「きゃっ」
朱音はオークの一撃をモロにくらい吹き飛んでしまった。
吹き飛ばされた朱音を狙って更にオークが追撃をかけようと追って行くが、朱音が倒れているのを見て、俺の脳裏に妹が首を吊っているシーンがフラッシュバックした。
「おおおおぁああ〜! おい! 豚野郎こっちだ、こっちに来い!」
俺はオークを威嚇し、挑発する。
気の立っているオークは俺の声に反応してすぐさま突進して来た。
俺は向かって来るオークに対し駆けていき、すれ違いざまに剣を一閃して首を落とし、戦闘を終了させた。
俺は急いで朱音の下に走って行く。
一般の女性がさっきの一撃をくらえば命はないかもしれないが、腐っても勇者、死んではいないだろう。
「おい! 大丈夫か」
俺が呼びかけると、すぐに朱音が反応した。
「はい、大丈夫です。殴られたところがちょっと痛いですが、魔法で治せそうです」
「ちょっと痛いだけか」
「はい、本当は結構痛いかも」
やはり、こいつも化け物か。
オークの一撃をくらってちょっと痛い?
常人の命を刈り取る一撃がちょっと痛い程度とはとんえもない耐久力だ。
「そんなんじゃ、そのうち死ぬぞ」
「リュートさんがいるから大丈夫ですよ」
「大丈夫じゃない! 俺が面倒を見るのは今日だけだ。今日中に何とかしろ」
「わかりました。でもやっぱりリュートさんは優しいですね」
「俺が優しい?」
「はい、今も私を見殺しに出来ましたよね。本当は勇者である私の事も恨んでるんですよね。でも助けてくれました」
こいつ……俺がこいつを恨みの対象としている事に気がついていたのか?
「たまたまだ。次はないぞ」
「はい!」
その後も探索を続け数体のモンスターを発見し、全て朱音が倒す事に成功した。
元々圧倒的なステータスを誇っているので慣れてしまえば、低級なモンスターなど相手にもならなかった。
結局何度か隙を見て殺ろうと試みたが、どうしても出来なかった。
今日一日朱音を見ている限り最後まで悪意が感じられなかった。
もしかしたら朱音には本当に悪意が無いのかもしれない。ただこいつが世界に害をなせば即殺してやる。
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