【第十三話】ドラルスの街 ①
「いやー、まさかドラルスに辿り着くだけでこんなに嬉しくなるとは思わなかったぜ……。普段の健康な体の有り難みを感じるねェ……」
2人はドラルスに着いて早々、ベンチで休むことにした。
体中ボロボロな男が2人並んで座っているせいで、通行人から変に注目を集めている。
スパイルなんかはただでさえ目立つ容姿をしているため、尚更だった。
「だが、いつまでも休んでるわけにはいかない。どこか宿屋を借りて休もう。本当は医者に一直線で向かいたい所だが……まずは休憩しないとな」
「あぁ、賛成だ。さっきから通行人が俺らのことジロジロ見てくるし、お尋ね者としては……あんま宜しくねぇ状況だしな」
「そういうことだ。宿代くらい出してやるから、さっさと向かうぞ」
「いや、盗んだ金でマウント取ってくるんじゃねぇよ……」
そう言って、2人はノソノソと歩き出した。
恭司はドラルス自体初めてのため、宿の場所も分からない。
取り急ぎ、スパイルが先導して歩いた。
「懐かしいなァ……。あれから3年は経ったか。相変わらず賑やかな街だ」
ドラルスは前情報にあった通り、かなり栄えた街のようだった。
ここは『繁華街』で、屋台がそこかしこに並び、ミッドカオスの物やディオラスの物など、世界中の様々な商品が並んでいる。
人種も色んな人間が集まっていて、街中に活気があった。
ここまで笑顔が絶えず、色んな人種が分け隔てなく過ごしている場所など、ここを置いて他にないだろう。
『中立』という名に相応しい街だ。
恭司もまた、物珍しそうに辺りを見回す。
「こんな街を、お前らは襲おうとしたのか……」
「それは言わねぇ約束だろ?」
しばらく進むと、少し暗めの場所に出た。
出ている店の雰囲気が変わり、店の前には露出の多い服を着た女性たちが客引きを行っている。
看板を見ても、
『ご新規様大歓迎ッ!!』
『どんな娘でも揃ってますッ!!』
『ディオラス式マッサージ!!気持ち良いよ❤︎』
といった、かなり露骨なアピールがそこかしこに広がっていた。
要は『風俗街』だ。
スパイルの先導のもと、2人はいつの間にか、そういう人たちの区域に入っている。
繁華街の横に隣接されていた訳だ。
恭司はスパイルにジト目をぶつけた。
「お前……まさか……」
「いや、違ぇよッ!!俺らみたいな奴がマトモな宿屋に行って泊めてくれるわけねぇだろッ!!せめて変装くらい出来るまでは、こういう所に行くしかねぇんだってッ!!」
そう言ってスパイルが立ち止まったのは、一軒の宿屋の前だった。
宿屋は宿屋でも、こういう所にある宿屋だ。
看板には『1時間3,000ポッキリ!!お泊まりでも納得のご優待価格!!』とある。
恭司の表情は不安で一杯だった。
なんせ、
ここは宿屋にもかかわらず煌びやかなパーネーションに、お城のようや店構えをしていて、
この暗い雰囲気のする『風俗街』の中でも、特に違和感のない佇まいをしているのだ。
そして、
他は例外なく客引や宣伝を繰り返しているにもかからず、ここには何のアプローチもないときている。
そう、
簡単に言うと、ここは『ラブホテル』だった。
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