【第十一話】ティアル・サーライト ⑤

「う、ウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」



ガードごと後ろに吹き飛ばされたスパイルは、数々の民家を突き破って吹き飛ばされた。


目を見張るほどのスパイルの巨体が軽々と宙を滑空し、一瞬意識を失いそうになる。


だが、


そんなことを言ってられるような場合じゃなかった。


ティアルは自分で殴り飛ばしたスパイルを追いかけ、既に追いついていたのだ。



「くそッ!!化け物がッ!!」



湧き上がる焦燥ーー。


スパイルは咄嗟に炎を出して、自分の背後を爆発させた。


その瞬間、


スパイルの体は爆発によって上に軌道修正され、その一瞬に再びティアルの拳が炸裂する。


スパイルがさっきまでいた所にティアルの攻撃が通過していき、その拳は辺りに凄まじい衝撃を放った。



ドガァァァァアアアアアアアアアアアアアアア!!



衝撃の余波で、近くにあった家々は瞬く間に吹き飛ばされる。


地面はクレーターのように陥没し、辺り一面、満ぐるりに吹き飛ばされた。


スパイルは思わず息を呑む。


少しでも判断が遅れていたら、スパイルの体もあの家と同じようになっていただろう。


動く度に家ごと破壊する攻撃に、気持ちとしては辟易するばかりだった。


やはり規格外ーー。


現時点で既に戦闘が開始したティアルの屋敷から200メートル以上離れているが、この攻防に割いた時間は数秒ほどだ。


圧倒的速度に、圧倒的パワー、


そして……



「いつまでも逃げてんじゃねぇぞ、カスがァァアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」



ティアルは再び腕を"伸ばした"。


宙にいるスパイルに向かって、ティアルはまっすぐに腕を突き出している。


その先はいつの間にか槍状に変化していた。


まるでドリルのように先端を尖らせた形状で、ティアルはスパイルを突き刺しにかかる。



「畜生ッ!!」



スパイルはそこに爪をカチ当てると、またしても後ろへ吹き飛ばされた。


もはやスパイルの巨体が子供扱いだ。


攻撃される度にピンボールのように吹き飛び、民家を巻き添えにして宙を舞う。


そして、


ティアルはお決まりのように、その後を追ってくるのだ。


自分で吹き飛ばして自分で追いついて、すぐに次の攻撃を仕掛けてくる。


それは今もだ。


ティアルは吹き飛ばしたスパイルを追い、今度は両腕を槍状に変えている。


このままだといずれはやられるだろう。


スパイルは飛ばされながら爪の先にいくつもの炎の槍を作ると、それをティアルに向けて放った。



ダァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアンッ!!



ティアルは咄嗟のことに防御が間に合わず、直撃して動きを止める。



「はぁ……はぁ……」



荒れる息に、湧き上がる焦燥感ーー。


スパイルはここにきてようやく、地面に足を付けることができた。


地面に足を付けるのは久々のことだ。


ティアルの初撃を受けて以来、初めてということになる。


スパイルはティアルを見た。


だが……



「チッ。クソが…………」



炎の槍がいくつも直撃し、防御は確実に間に合っていなかったはずだが、ティアルは全く意にも介していない様子だった。


火傷一つ負ってない。


あの黒光りした体は、全く何でもないように、民家の屋根の上に立っている。


相も変わらず、厄介な体だ。

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