【第六話】王族狩り①

ミッドカオスは自他共に認める超大国である。


領土・人口、共に世界最大最多を誇るこの国は、三大国中で最も強い『数』と『量』の力を持つ。


武芸に携わる者の中には、多数で少数を押し潰すことを卑怯と見なす者も多いが、国対国の戦いにそんな甘いことは言ってられない。


結局は勝てばいいのだ。


勝つことが大事なのだ。


勝たなければ意味がないのだ。


それは従来からずっと定着してきた戦国の価値観で、ミッドカオスに住む者は皆それを自覚している。


この国の王であるバルキー・ローズは、その『数』と『量』こそを武器に、この国をここまで大きくしてきた。


そして、


圧倒的『数』をしっかりとした武器として扱うには、洗練された統率こそが何より必要となる。


バルキーの行う統率は、帝王学を元にした恐ろしく練度の高いものだった。


正直、民が喜ぶような生易しい政治を行ってきたわけではない。


『数』を支える『量』を確保するには金が必要で、民からは容赦なく取り立ててきた。


『数』を常に確保するには子どもが必要で、女性を物のようにも扱ってきた。


『数』の戦略には犠牲が付き物で、弱い者や敵国の虜囚は悉く捨て駒に使ってきた。


バルキーは凶王だった。


その下にいる王族たちも狂っていた。


そしてシェルも……傍目には分からないほどきっちり隠しているが、恐ろしく狂っている。


普段は出さないだけで、シェル自身もそれは、自覚していることだった。

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