10話 私(お茶してる)VSオスカル(悪魔)


 執事悪魔以外にも、多くの悪魔がこの戦いを見学していた。


「出てこいやぁぁぁ!! 優雅にお茶飲んでんじゃねぇぇぇぇぇ!!」


 オスカルは丁寧な口調すら消え去っている。

 私は紅茶に角砂糖を1つ追加。

 うーん、甘くて美味しいね。

 この角砂糖は私の創造だけれど、実はこの世界、すでに角砂糖が存在している。


「ま、お茶しながらゆっくり見学しよう。愚かな悪魔が死ぬところ」


 正確には、私が殺すところ。

 私は青ポを飲んで魔力を全快に。

 それから【神の目】という魔法を使用。

 上空から俯瞰して周囲を索敵することが可能で、しかも熱探知なども可能なので、建物内部にいる人物も見分けられる。

 どうやら、現在屋敷には誰もいないらしい。

 みんな見物に出てきているのだ。

 よし、じゃあ。


「F-2戦闘機」


 私の攻撃魔法であるF-2戦闘機バイパーゼロが空中の魔法陣から出現。

 カッコよくバレルロールしたり、まずはアクロバティックな機動を見せる。

 戦闘機の音に、悪魔たちは驚いている様子だった。

 中には耳を塞ぐ者も。

 そして屋敷を精密爆撃。

 屋敷は木っ端微塵に吹き飛んだ。

 ローレッタが「さすがお姉様!」と拍手。

 オスカルと見物の悪魔たちが口をあんぐりと開けて、今はなき屋敷の面影を見ていた。

 正確には、瓦礫と化した屋敷に驚愕している。


「このクソ令嬢がぁぁぁぁぁぁぁ!! よくも僕の屋敷を!! 出てこいコラァァァァ!!」


 ガンガンとバリアを殴るオスカル。


「無様ですね」


 ふん、と鼻で笑って、ローレッタはお茶を啜る。


「さて次はっと」


 私は【前世の私】を攻撃魔法として使ってみた。

 バリアの外、オスカルの近くに黒髪の女性自衛官が出現。

 そう、マリンだ。

 マリンはもちろんフル装備。

 ちょっと年齢は若く設定して、22歳とかにしておいた。

 えへ。

 マリンは速攻で20式小銃を構え、オスカルを撃った。


「ぐおっ!?」


 オスカルは何発か銃弾を喰らってから、回避に動く。

 マリンがオスカルを追う。


「くそっ! なんだこの攻撃は!!」


 血を流しながら回避運動をしているオスカル。

 ふふっ、小銃で撃たれるのは初めての経験かい?

 さっき私が撃った分は躱したもんね?

 てゆーか、マリンの方が今の私より正確に射撃できるってことか。


「お姉様、あれは誰です?」

「うん? 架空の傭兵お姉さんだよ」


 てゆーか、マリン強いな。

 前世の私の戦闘能力そのままで再現したはずだけど、めちゃくちゃ強いな。

 普通に悪魔であるオスカルと渡り合っている。

 あれ?

 私ってこんなに強かったのね。


「僕がこんな程度の魔法でやられるかっ!」


 オスカルは身体に魔力を流し、銃で撃たれた傷口を回復。

 マリンと接近戦へ。

 マリンは小銃を使って上手にオスカルの攻撃を捌いている。

 私は瓦礫と化した屋敷に新たに狙撃手マリンを配置。

 もちろん攻撃魔法である。


 で、オスカルの右足を撃ち抜いた。

 私、狙撃も案外いけるじゃん!

 団長には「マリンは狙撃が下手だね」とか言われたのにっ!

 あれはきっと団長が上手すぎただけだね!

 そして最初に作ったマリンがオスカルの腕を両方とも蜂の巣に。

 更に狙撃手が左足も撃ち抜く。

 オスカルは倒れ込み、絶叫していた。


「手を出す相手を間違えましたね」


 ローレッタが冷ややかな声で言った。


「僕が、人間のガキなんぞにぃぃぃぃ!!」


 オスカルは魔力を流しに流し、傷口を回復する。

 すごいな悪魔。

 魔法を使わず、魔力だけで回復とかできるんだね。

 もう何回も見たけど、何度見てもすごいと思う。


 オスカルは転移して、狙撃手マリンを蹴り殺した。

 凄まじい威力の蹴りだったけれど、まぁバリアの中にいる私にはまったく脅威ではない。

 オスカルは再び転移。

 出現したのは最初のマリンの背後。

 私は最初のマリンを消す。

 いやぁ、昔の自分だからねぇ。

 殺されるのはやっぱりちょっと、気分がね。


「ハンマーどーん」


 私はオスカルの頭上に巨大なハンマーを出現させ、そのままオスカルを叩き潰す。

 もちろんこれも攻撃魔法。

 仮想像より攻撃魔法の方が魔力の消費が少なくて済む。


「おのれ! おのれ! おのれ!」


 地面に埋まっていたオスカルが、元気に飛び出した。

 さすが悪魔!

 あれでも死なないとは!

 生命力というか、防御力というか、そういうのも人間より割と上なんだね!


「卑怯者め!! 出てこい!!」


 オスカルはまたバリアをガンガンし始める。

 無駄だよ。


「これ、試合でも決闘でもないからね?」私が言う。「これ、ただの制裁だから。私らに手を出した君への制裁に過ぎないからね?」


 とりあえず『Mk45.62口径5インチ単装砲』をバリアの外に設置。

 オスカルを含む悪魔たちの視線が単装砲へと注がれる。

 しかし当然、誰もそれが何なのか理解している様子はない。


「屈辱はもう十分かな? だったら、そろそろ死ね」


 1分間に約20発撃てる上、弾丸は魔力がある限り無限。

 更に私の攻撃魔法なので、砲身の寿命なども存在していない。

 青ポを飲みながらひたすら撃ち続けてみるつもり、だったのだけれど。

 最初の一発でオスカルが肉片になった。

 まともに当たっちゃったみたい。


「……あっけなかったですね」


 ローレッタがちょっとビックリした風に言った。


「まぁ、でも、そうだよね……」


 人間サイズの生物に耐えられる威力ではない。

 まぁ、魔力で盾を作るとか、何かしら防ぐ方法はあるけれど。

 生身で当たったら、そりゃ、ね。

 私は単装砲を消して、バリアも消した。


「帰ろうか」

「そうですね」


 お茶会セットも消して、私は背伸びした。


「魔力量で劣る人間が、本当にオスカルを殺すとは……」


 悪魔執事が寄ってきて、酷く驚いた風に言った。


「君らは発想が貧弱なんじゃない?」


 私が言うと、ローレッタが風の魔法を使用。

 私たちは来た時と同じように空を飛んでイーナが待っている場所へと向かった。


「悪魔って割と微妙な存在ですね」とローレッタ。


「そうだね。少なくとも中級以下は、ね」


 3大悪魔とかは割とヤバそうな気がする。

 まぁ、会うこともないだろうけど。



 私たちが戻ると、イーナは相変わらず下級悪魔たちと会話していた。

 私とローレッタはイーナの会話が終わるまで、筋トレをして待つことに。


「……ふぅ。そろそろ、いいかな」


 イーナが話を切り上げて寄ってきた。

 私とローレッタは筋トレを中断。

 続きは帰ってから。


「……本当に、好きなんだね、訓練……」

「まぁね。アスラも100年間ずっと訓練してたかな?」


 聞くまでもないことだ。

 あの団長が訓練してないはずがない。

 話題の提供とか、その程度の言葉で深い意味はない。


「……団長は、まだ100歳に届かない……」

「だいたい100歳ぐらいじゃないの?」


 傭兵団《月花》とアスラ・リョナの名前が正式に登場したのは、今から約80年前。

 その時点で、アスラは13歳前後だったらしい。


「……まだ、3桁は、いってない……あたしも、ギリギリで」


 おや?

 年齢3桁を気にしてるの?

 ちょっと可愛いとこあるんだね。


「不老不死なんですか?」とローレッタ。


「違う……、あたしらに、年齢の概念が無意味なだけ……。普通に、あたしらは死ぬ……」

「どうして、ずっと若いままなんですか? 誰かの魔法ですか?」

「まぁ、色々……」


 イーナは説明が面倒になったのか、ローレッタから目を逸らした。

 ローレッタも特に追求はしなかった。


「さぁ、帰ろうか」


 私が両手を広げる。

 ローレッタとイーナに魔力を分けてもらおうと思ったのだ。

 2人は私の意図を理解して、私の手を握る。

 そしてすぐ、私に魔力を送った。

 私は魔界に来た時と同じ扉を作る。

 イーナが下級悪魔たちにお別れを告げた。

 下級悪魔たちは小さく手を振った。

 ずいぶんと仲良くなったみたいだね。

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