第102話

「実は、昨日、吉原さんに課長を通じて、結婚前提のお付き合いの申し込みをされました」


「は? 男らしくないわねぇ……」


「課長にはきちんとお断りしたのですが」


「そういえば、帰りに課長と吉原君が話してるの見たわ。課長、気まずそうな顔してたから、その件かもね」


「じゃあ、課長は、伝えて下さったんですね」


「多分ね。こればっかりはダメ押しをすることも出来ないしね」


「……はい……」


「あの軽い吉原君がどうして伊藤ちゃんにこだわるのかしら?」


「吉原さん、ご両親の体の具合がだいぶ悪いそうで……」


「面倒見る人を探してるってこと? それ、吉原君に言われたの?」


「給湯室で他の部署の人に、話してるのを聞いてしまって……」


「はぁ……、やっかいね……。肥田さんに聞いたことあるんだけど、……吉原君って、うまくいってるときは調子の良いんだけど、ダメな時は感情のコントロールするのが難しいそうよ」


「……えっと、どういう……」


「怒りっぽくなるってこと。自分がイケてるっていう自負もあるだろうし、フラれたことを認められないタイプだから、その上、仕事もスランプみたいだし……」


「……そんな……」


「吉原君、3課のエースだって、鼻にかけてるけど肥田さんから引き継いだ取引先ばかりよ。新規は取れてないんじゃないかな……。もちろん周りは気づいてるし、本人もイライラしてると思う。最近では肥田さんの悪口ばかり……。私、肥田さんにひどい目に遭わされたけど、聞いていて気持ちの良いものじゃないわ」

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