第四匹 旅団の愚者達(追放SIDE)
近頃、旅団の夕食はパンと野菜のスープしか出ない日が続いていた。
「おい、なんだよ。また食事に肉がないじゃないか、肉が。こんなんで、俺らの身体が持つはずがねぇじゃねぇか」
「そうだ、そうだ。こんな肉がない料理、何の冗談だ」
一部の低級冒険者達から不満が吹き荒れる。その様子にひげを生やした嫌味な旅団長は、秘書に尋ねる。
「なぜ、あの者達に肉料理が行き届いていないんだ」
秘書は、言いにくそうに答える。
「厨房部に聞いたところ、何やら肉の調達に手間取っているらしく。近頃の夕食の際に全員には行き届かなかったようです」
それを聞いた旅団長や幹部達はクスクスと笑い、幹部の一人が
「たまには、そういうこともあるだろう。むしろ、食事の内容に差を出すことによって、低級冒険者の向上心に火がつくんじゃないか」
そう言いだす始末。旅団長もその意見に賛同しているようで、深くは追求しなかった。この時は、この場にいる誰もが、食事の重要性を十分に理解していなかった。
次第に一部の団員の中には、上層部に対して不満を抱く者も現れ始めていた。
そんなことなど、つゆ知らず。愚かにも内部対立を煽るような行為をなんとも思わない旅団上層部の無能さは、つくづく愚の骨頂であり、いつの時代もこういう連中が蔓延るのであった。
∴ ∴ ∴ ∴ ∴ ∴
それから、しばらくしたある日。
「なぜだ、なぜ・・・我々の旅団の評判が下がっているのだ・・・」
嫌味な団長は頭を抱えながら、旅団が置かれている問題に直面していた。なぜか、わからないが団員達が請け負うダンジョンクエストの成功率が低下し始めていたのだ。
それにより、今まで高い成功率を誇っていた旅団の評判が次第に悪くなり始めていた。
ただひとり、その原因がわかる者はもう旅団にはいなかったのだから、無理もない。
この世界で強さというものは、その食物から活力を得てそれに応じて能力が上昇するというでもあった。だが、そのことを理解している者は、ほんの一握りしかおらず、大体の者は腹を満たす程度にしか考えていない。
そして、活力は常に減り続けるもので、高い能力を維持するには活力の多い食材を効率よく日頃から獲り続ける必要があった。
食材と言っても、農作物で得られる活力は少なく、それより動物からの方がはるかに活力が得られる。
さらに、厳しい自然界で生きていない畜産動物からの活力は、野生でたくましく生きている動物よりも格段に少ない。
肉食獣は肉を食べているから食物連鎖の頂点に立っている。つまり、野性の肉は最強食物であり強さに必須の要素ということが証明される。
故に、旅団全員の肉を毎日、狩りに出かけて肉を調達していたアキトは陰ながら旅団の強さを維持し向上させていたのである。
そんな彼を追放してしまった旅団の決定は、強さやスキルなどの戦闘で役に立つかという表面上でしか物事を考えられない愚か者の行為にほかならなかった。
だが、崩壊への序章はまだ始まったばかりである。
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