第25話:謀殺
「お気遣いいただきありがとうございます、皇太子殿下。
ですがもうお気になされないでください、殿下。
貴族が権力闘争で命を狙われるの仕方のない事でございます。
私が殿下の想いにお応えした以上、狙われるの貴族の定めでございます。
それに我が家も公爵家の端くれでございます。
皇都を離れ領地に戻ればそれなりの実力がございます。
少々の敵に敗れはしません。
もし敗れたとしてもそれはファルド公爵家の力不足、殿下がお気になされる事ではございません」
やはりマチルダ嬢は気高く誇り高かった。
貴族令嬢として揺るぎのない覚悟を持っていた。
自分を助けてくれた皇太子にこれ以上負担をかけたくないという想いでいた。
万が一ファルド公爵家に肩入れするあまり、皇太子殿下自身の護衛が手薄になる事を恐れ、そんなことにならないように毅然とした態度で覚悟を口にした。
皇太子の心はマチルダ嬢の言葉を聞いてズキリと胸が痛んだ。
自分がやろうとしている謀殺を恥じる気持ちだった。
「ありがとう、マチルダ嬢。
マチルダ嬢の覚悟が私の心を強くしてくれるよ。
マチルダ嬢に恥ずかしくない生き方をするようにする」
そう言いながらも皇太子のモーラ夫人を殺す気持ちは変わらなかった。
マチルダ嬢を護るためなら手を汚す事も厭わなかった。
だが流石に明け透けにモーラ夫人を殺すとはマチルダ嬢には言えない。
できる事なら秘密裏に殺したっかった。
そんな汚れ役を務めるのは信頼する密偵だった。
それも間に幾つもの暗殺ギルドを仲介してバレないようにだ。
★★★★★★
「よう、久しぶりだな小頭」
密偵は皇室とは全くかかわりのない配下がいるアジトに現れた。
密偵のもうひとつの顔、それは義賊と呼ばれる盗賊団の頭だった。
この盗賊団では密偵の事を仁義をわきまえた首領だとしか思っていなかった。
「お頭、お久しぶりです。
久しぶりにお務めをなさるのですか。
引き込みが準備万端整えた悪徳貴族の屋敷が幾つかあります」
「そうか、日取りは小頭に任せる。
ただ今日はお務めの話ではない。
悪徳貴族の夫人を殺さなければならなくてな。
しかも間を幾つもはさんでやらねばならん。
小頭の配下で心利いた奴に暗殺ギルドと連絡を取ってもらいたい」
「分かりました、お頭。
殺す相手はどこのどいつですか」
「以前はフランドル王国に仕えていて今はルーサン皇国に仕えている、ファルド公爵家のモーラ夫人だ。
予算は金貨五百枚だが、受け手がいなければ増額もあり得る。
小頭に一割、使いの者にも一割の仲介料を渡す」
「明日にでも皇都の暗殺ギルドに人をやって、ファルド公爵家に一番近くて信用できる暗殺ギルドに依頼を流させましょう」
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