最終章 魔族との戦争

第四十九話 姫様

 あれから一週間が経った俺達は、まだ竜人族の里にいた。


 本当は一週間前に旅出ようと思っていた。思っていたのだ。


 だが、里長から一週間くらいゆっくりしたってそんなに変わらないと言われてお言葉にお前ることに。


 そして、一週間里でゆっくりとして今日旅立つことにした。


「短い間でしたがお世話になりました」


「何を言っておる。アルク殿はこの里を救ってくれた勇者様じゃ、だからいつでもこの里へ来てくれて構わんのじゃ」


「ありがとうございます。また近くまで来たらよらせていただきます」


「お世話になりました」


 頭を下げるヒストリア。


「お父様! 行ってきます」


「行ってくるのじゃ」


 サーシャとリーヤスも一言別れの挨拶をすると、


「サーシャ、体には気を付けるのじゃよ。それとリーヤス様と勇者様に迷惑をかけるでないぞ」


「分かっています」


 それだけ言って、俺達は竜人族の里を後にした。


 山を下りている道中、


「勇者様、これからどうするのですか?」


「取り合ず、キリス村に行ってから考えるかな。特に先を急ぐ旅でもないし」


「そうじゃの。わしも今の時代の村がどのような物か気になるの」


「そうですね。それにいろいろと準備も必要ですしね」


 ヒストリアも賛成のようであった。


 それから、何処へ行くだの、村で依頼を受けたいなど様々な意見が飛び出した。


 俺はその光景を見ながら、今後の旅が賑やかで楽しいものになりそうで少しワクワクしていた。


 そんなこんなで村へと到着。


 すると、村の中が少し騒がしくなっている。


「お兄ちゃん何があったのでしょか?」


「さあな」


 とりあえず人が集まっている場所に行けば何か分かるかもしれないと思い行ってみると、


「誰か! 誰かアルクと言う冒険者を知りませんか! 知っていればどんな些細な情報でもいいのです」


 凄く豪華そうな馬車の近くにいる女性が俺と同じ名前の人物を探している。


「っあ!」


 女性と目が合って指を挿された。


「お兄ちゃんのお知り合いの人ですか?」


「知らないよ」


「じゃが、勇者様のもとへまっすぐに向かってくるぞ」


「そのようですね」


 全く知らないわけでもないが、何処で見た顔か分からない。


「お探しいたしました、アルク様」


 凄く豪華そうな服に、丁寧な話し方、どこかの貴族のように見えるのだが?


「どちら様ですか?」


「これはすみません。私は、クルシャ王国の第三王女、ネネ=クルシャと申します。アルク様」


 彼女の名前を聞き合点がいった。


 そら見たことがあるわけだ。だが、お姫様がこんなところまで来て何の用だ?


「アルク様、突然で申し訳ないのですが王都まで戻って来ていただけないでしょうか?」


「どうしてですか?」


「アルク様のお力がどうしても必要なのです。もうすぐ魔族の軍が王都にやってきます」


「魔族の軍だって!」


「そうです。その軍と我々クルシャ王国軍は戦争をすることになります。城では今その準備をしております。ただ、我が軍だけでは決して勝てないでしょう」


「まさか」


「本当です。魔族の相手を出来る者などそうはおりません。今わが国にはアルク様の力がどうしても必要なのです」


「なぜ俺の力が?」


「あなた様が魔族と戦ったことがあり、勝っているからです。しかもその力は未知数。あなた様がいないといるとでは、我々の勝てる可能性が天と地ほどの差があります。どうかお力添えいただけないでしょうか?」


 頭を下げるお姫様。


「良いのではないか? どうせ宛てのない旅じゃ。少し寄り道するくらい良かろうて」


「そうですね。お兄ちゃんの力をあの国に見せつけるいい機会です」


「私頑張る」


 皆がそういうのであればと、


「分かりました。お力を貸ししましょう」


 と俺は姫様の話を受けることにした。


 それから慌ただしくはあったがもう時間がないらしく、すぐさま王都に向けて出発することになったのであった。

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