第四十四話 地竜
地竜からの咆哮による攻撃が終わると、少しの静寂が訪れた。
お互いに向き合っている状態。少しでも動けば相手が攻撃を仕掛けてくる。そのことをお互いに理解し、動かない。
「ヒストリア! サーシャ! リザードマンとの戦闘時と、同じ戦法で行くぞ!」
「でも相手は地竜だよ? リザードマンよりかなり強いよ?」
「ヒストリア様のいう通りです。相手は地竜、もっと違う作戦を取らないと、ダメかと思います」
「いや! このままで行く!」
二人の言葉に対して、俺ははっきりと言い切った。
相手はモンスターの中でも、かなり強力な地竜。最高ランクのSランク冒険者でないと勝てないと言われている。そのため別の作戦を取るのも一つの手かもしれない。
だが、今のメンバーなら何とかなるだろう。
そんなことを考えながら、
「ヒストリア! サーシャ! やれ!」
二人に攻撃を仕掛けるように促す。それにより、サーシャは弓を構え、ヒストリアは魔法を発動させる。その二人の攻撃が、一直線に地竜に向かって飛んでいく。サーシャの矢は、地竜に当たると弾かれ、ヒストリアの放った魔法は、鱗に当たった瞬間に消滅した。
ダメージはゼロ。まったく効いていないと言いたげな顔をしている地竜。
矢が弾かれるのは想定内だが、まさか魔法が消滅させられるとは思っていなかった。それに、地竜がヒストリアの放った魔法に対して、何かをした感じもない。ならなぜヒストリアの魔法が消滅したのか?
俺はその理由を探るため、地竜に対して、解析を使ってみる。
すると、
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
地竜
スキル:咆哮
土魔法
魔法無効化
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
魔法無効化のスキルを持っている。魔法への完全耐性。
確かにそんなスキルを持っていたら、ヒストリアの魔法も効かないわけだ。
俺は、正面から剣で斬りかかっていく。それに対して地竜は、動かない。
俺の剣が地竜へと当たるが、
キーン!
弾かれる。ほんの少し、ウロコに傷をつけることが出来た。だが、地竜は蚊に刺された程度にしか感じていないようだ。
「この程度か人間」
俺たちの攻撃を見て、そんなことを言ってくる。
なら今度は、剣に魔力を纏わせて攻撃を仕掛けていく。だが、結果は先ほどと同じで、ダメージを受けていない。
「そろそろ本気を出さないとダメだな」
地竜相手に、精霊の力を使わずに戦うのは、さすがに相手をなめすぎだったかもな。
俺の言葉に対して、反応する地竜。
「面白いことをいいよるな! 我を相手に手を抜いていたというのか」
「ああ、この剣を使えば、本気を出さなくても地竜くらいは倒せるかと思っていたのだが、さすがにムリのようだな」
「剣だけで倒せると思われていたとわな! 我も随分となめられたものだ。まさかほんの数百年見ない間に、人間どもがここまであほになっているとは思わんかったぞ」
俺たちを見て笑っている地竜。
それに答えてやる必要もない。
俺は、
「テプロ!
俺は武器の精霊王を呼び出す。
「精霊王だと」
おっと、俺の言葉に反応した。だがそんなことは関係ない。
テプロと融合した後すぐに、ヒストリアとサーシャに子精霊を付与。
「二人とも、全力でやっていいぞ!」
「勇者様! 私たちの攻撃では地竜にダメージを与えることは出来ませんよ」
「お兄ちゃんこれって」
「おお、わかるか! ちょうど今、二人に子精霊を付与しておいた。これで地竜相手にでも引けを取らないはずだ!」
「勇者様、子精霊って何ですか?」
サーシャが聞いてくる。
「簡単に言えば、付与魔法と同じようなものだ」
「同じようなものですか?」
「そうだ」
サーシャは何か納得したような表情に。
地竜は、
「人間ども、話は終わったか! 我は寛大だ! そのことに感謝しろ」
「・・・・・・」
この地竜は、何をいっているんだ?
俺は、地竜の言葉をスルー、
「サーシャ! ヒストリア! 全力でやってやれ! きっと地竜の度肝を抜けるはずだ!」
「わかった」
「わかりました!」
と、二人は最初の攻撃と同じように、矢と魔法を放つ。
二人の攻撃は明後日の方向へと飛んでいく。だが、その攻撃が当たった壁に、穴が開いた。大きな穴ではないが、それでも、硬化の魔法が施された壁。その壁に穴を開けたのだ、地竜の顔はいうまでもないが、かなり驚いていた。
「今のはいったい!」
俺たちの方をじーっと見てくる。
そこへ俺が、攻撃を仕掛けていく。
先ほどと違う二人を見て、驚いているのかもしれないが、その隙が命取りになるぜ。
俺は一瞬にして、地竜との間合いを詰める。
隙をつかれたことで、俺の接近に気づけなかった地竜。そこへ攻撃。
地竜が俺に気づいたのは、俺の剣が当たる寸前だった。瞬間的に魔力でシールドを張り、攻撃を防ごうとするも、紙切れのように斬れて消滅する。そして俺の剣が地竜へと命中。鱗を数枚斬り落とした。
だが、地竜は俺の攻撃を受けてすぐ、反撃を仕掛けてくる。
その場で回転。その勢いを利用した尻尾での攻撃。まともに受ければ、普通の人間なら一撃でやられてしまうだろう。
だが、俺はその攻撃を片手で受け止めて、地竜の回転を止める。
「な! なんだと!」
かなり驚いているようだ。まさか自分の攻撃を、人族が片手で受け止めるなんて思ってもいなかったのだろう。
驚きに満ちた顔。だが、地竜はすぐに何かを納得したような顔をするのだった。
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