第二十四話 少女の話

 宿の一室、そこにいる俺たちは今から少女の話を聞こうとしていた。だがその前にと、


「お話の前に、まず私の正体についてお話させていただきます」


 含みのある言い方。何となく予想がつくのだが、


「私は人間ではありません」


 やっぱりかと思った。


「私は竜人族なのです」


 俺はその種族名を聞き、頭を捻る。どこかで聞いたことがあるはずだと。


「どうかなさいましたか?」


「いやどこかで聞いたような種族名だと思ってな」


「どこかの文献にでものっていたのでしょう。何せ私達竜人族は数百年前に人々の前にから姿を消しってひっそりと暮らしてきた一族なのです」


 少女の話を聞き、冒険者になる前に勉強のためといろいろな本や文献を読みあさっているときのことを思い出した。数百と言う本の中に一つ数百年前に消えた二つの種族のことが書かれている本があった。一つの種族はこの世界最強と呼ばれていたが突然と姿を消したと言う。そしてもう一つの種族はその種族を守っていたがもう一つの種族が消えると同時にこの種族も人々の前にから姿を消してしまったという。


 そして今目前にいる竜人族こそが、もう一つの種族を守っていた種族なのだ。


「だが、なぜそんな種族の君がこんな街中にいるんだ」


「はい、今からそのことについてお話します」


 少女は真剣な目で話し始めた。


「それは今から昨日のお昼間のことです」


 そこから少女の話が始まったのだ。


 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 私は里の男友達二人と一緒に竜人族の隠れ里近くの森で遊んでいました。隠れ里と付近には竜人族の以外の種族には見つけることが出来ないように認識疎外にんしきそがいの結界が張ってあり子供も安全に遊ぶことができるのです。


 ですが、昨日の私達は少し調子に乗っていました。


「サーシャ危ないよ」


 男友達の一人、リクが隠れ里を守る結界から出ようとする私をとめました。ですが、


「大丈夫だよ! こんな森の奥にあるんだから誰も来ないよ」


「でも・・・・・・危ないよ」


「リクは臆病だな」


 もう一人の男友達キビトは私の意見に乗ってくれました。


「ほら、キビトだってこう言ってるじゃない」


「でも・・・・・・」


 私はキビトと一緒にリクの手を引き強引に隠れ里の結界を抜けました。生まれてから一度として出たことのなかった結界。その外に何があるのかは私達子供にとってはとても興味深かったのです。


 ですが私はその後凄く後悔しました。もしリクの忠告を聞いておけばこんなことにならなかったのではないかと。


 それから、暫くの間私達は結界の外で遊んでいました。見たことのない動物に植物などどれも初めてで私達のテンションはかなり上がっていました。だからなのでしょう私達は周りの探索を忘れていたのです。結界を出てすぐは遊びながらも探知の魔法を使いながら辺りの気配を探る危険がないのを確認をしていました。ですが、時間が経ちにつれて少しずつ忘れていきました。その結果、近くに人がいたことに気づけなかったのです。


「もう暗くなってきたし帰ろうよ」


 楽しくて時間が経つのを忘れていた私達は、リクの言葉で周りが暗くなり始めているのを知りました。


「そうだね、今日の所はここまでかな、また明日こようね」


「そうだな、もっといろいろな物を見たいぜ」


 私達はまた明日といつものようなたわいもない会話をしていました。


 私達は隠れ里へと帰っている途中、少し開けた場所の出ようとしました。そんな時誰かが私の腕をつかんだのです。


「誰ですか!」


 とっさにそんなことを叫ぶと同時に竜人族の力を使おうとしました。ですが、その時には時すでにおそしでした。


「!! でない、なんで」


 私は力を使うことが出来なくなっていたのです。それに後ろを見てみると、ついてきていたリクとキビトが人間の男二人に捕まっていました。その手に付けられた手錠。そして、それと同じ物が私の手首にもつけられていたのです。


「あなた達何なの!」


 ですがその言葉に対しての答えはありませんでした。ただ、


「商品がしゃべるな!」


 私は腹を殴られて意識を奪われました。


 次に私は目を覚ましたのどこかの洞窟の中でした。その隣にリクとキビトもいました。


「何なのよこれ」


 私後ろに回された手には手錠を嵌められて、ロープで動けなくされている私たち。


「やっと目を覚ましたか」


「ここはどこだよ!」


「はなしてよ」


 キビトとリクも目を覚ましたようだ。


「元気だね~、自分たちの状況を見てもその元気が続くかな」


 リーダーらしき男が私達たちに向かってそんなことを言ってくる。


 私はもう一度竜人族の力を使おうとしたがやはり使えない。たぶんこの手錠の効果だろう。


「ふん! おまえらこんなことをしてただで済むと思っているのか、この近くには俺たちの隠れ里があるんだ! もうすぐ俺たちを探して里の皆が助けに来るぞ! そうすればたかが人間如き紙クズのように殺されるぞ」


「そうだな、もし助けに来てくれたらな」


 含みのある声でそんなことを言って来ました。その声で私たちは先ほどまであった里の皆が助けに来てくれるはずという一つの心の支えを失い不安にさいなまれていきました。


「そんなウソが通用するかよ」


「うそね~、だがな、ここはお前らがいた里からすでに数キロ離れているんだ。それにここには認識疎外にんしきそがいの結界がある。気配を消せるんだぜ、どうやって見つけるのかな」


 絶望しました。


 そして、そんな私たちに男たちはある提案をしてきたのです。


「おまえたちが俺たちの質問に答えてくれたら里へ帰してやるぜ」


 甘い誘いでした。すでにあきらめていた私は男の言葉に対して何とも思いませんでした。


 ですが、


「質問ってなんだよ」


「お前ら竜人族の隠れ里はどこにあるんだ」


 知られていた。私たち正体を、それにこの男たちは私たちの里の場所を知ってどうしたいのかと私は思いました。ただの人間が里を攻めた所で返り討ちに会うだけ。私たちを襲った時のように不意打ちでもしない限り決して遅れは取らない。


「知ったところでお前らには何もできねーよ」


 男の言葉に対して返答を返したキビト。だが、


「無駄口をたたくな! おまえらに里の場所を話すかここで死ぬしか選択肢がないんだよ!」


 腹や顔を殴りけられるキビト。


 それを見て思わず、


「話します、話しますからやめてくじゃたい」


 涙を流しながら言うリク。


「っふ! それでいいんだ」


 男はリクの声に反応し、キビトへ暴力をふるうのをやめました。


 それからリクは全てを話しました。


 そして、


「いい子だ」


 その場で首を斬り落とされて殺されてしまいました。本来であれば私たち竜人族は人間ではどうにもならない程の防御力を持っています。ですが、手錠のせいでそれすらも無力化されていました。そのために簡単に首を落とされてしまったのです。そしてリクに続きキビトも殺されました。


「バカなガキだぜ! 里の場所を話したとことで帰してやるわけないだろうが!」


 そして、いよいよ私の番がやってきた。


 男が私の首目掛けて剣を振り下ろしてきたとき、


「待て、女の方は売れる殺すな!」


「だがよ」


「お前は俺に口答えするのか」


「いえ」


「ちょうどレアな異種族の女を欲しがっている金持ちがいるんだ。そいつなら高値で買ってくれるぜ。しかも、丁度のその男の好みの見た目ときた。こんな上玉をミスミス殺すなんてもったいね~」


「分かったよリーダー」


 男の剣が止まりました。ですが、そこで私は意識をなくしてしまいました。たぶん、目の前にで友達が殺されたことに剣のせまってきた恐怖、その二つが合わさっては気を失ったんだと思います。


 次に目を覚ましたの男に連れられてこの里までやってきた時でした。それから私はあなた方に助けられて今に至ります。



 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 そこで竜人族の少女の話が終わった。話の途中で目には涙を浮かべて話していた。よほどつらく怖かったんだろう。


「そういえばまだ自己紹介をしてませんでした。私は竜人族が里の長の娘、サーシャ=クリスタスと申します」


「俺は、アルク=スピッチャーだ! それと」


「私はヒストリア=ミカエルだよ」


 ヒストリアは髪をかき上げて自分の長い耳をアピールする。


「見ての通りエルフです」


「アルクにヒストリアね」


 目に涙を浮かべながらも笑顔を作る。


「サーシャの依頼受けるよ」


 さすがにこんな話を聞いていやとは言えない。たぶんサーシャは男たちの狙いが隠れ里だと考えているんだろう。そして何か策があると、だからこそこうして俺に助けを求めてきたというわけだろうなと俺は考えていた。

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