第二話 新たな旅立ち
「アメリア! なぜおまえがそんな無能をかばうんだ!」
(ごもっとも)
なぜか、ガイルの言葉に納得してしまった。
「アルクは無能なんかじゃありません! アルク程の冒険者を私は他に見たことがないですもの」
(???)
首を傾げてしまった。
自分のことを良いように言ってくれている。だが、そこまで俺のことをアメリアがどうして評価してくれるのだろう?
「それにこいつを追い出す理由は無能ってだけじゃないんだよ。俺たちの目標はCランクになることそして数年の内にAランク冒険者となりこの国一番を名乗ることだ。そうすれば勇者と呼ばれる伝説の冒険者になることも夢じゃねえ!だが、そんな無能なお荷物を抱えていたら何年かかってもAランクに上がれるか分からねえからな」
「別にいいじゃない! 少しくらい遅くなったとしても、確実にAランクまで上がれたら!」
物凄い
だがそれは、他の皆も同じであろう。
「時間を掛けたら誰だってAランクになれるだろう、それじゃ意味がないんだ! そいつを除けば俺たちは十分優秀だ! それはこのギルドの全員が認めている。それに新しいメンバーの加入も決まっているんだよ!」
「っはぁーーーーーーーーーーーーーーーー!」
物凄い声で驚くアメリア。
「冒険者パーティーの登録メンバーは五人って決まっている。今の状態じゃ新たなメンバーを入れることは出来ない。そこで誰を追い出すかとなったら当然、無能で何の役にも立たない荷物運びのアルクに決まっているだろうが!」
(そうなのか~~?)
なぜか心の中頭を捻る俺。
「それなら別に・・・・・・」
アメリアがガイルに言い返そうとした時、
「それならなんだって言うんだ! 無能を追い出さずに他のパーティーメンバーを追い出せってか! 冗談も大概にしろ! 他のメンバーを追い出せば、それこそパーティーの戦力ダウンだろうが!」
(そうなのか?)
俺は別にそうならないと思うがな。
だが、この二人の中で俺の存在が真逆になっていた。
片や必要としない者、片や必要とする者。
そんな二人の言い合いに俺もそうだが、他の二人も口を挟めないでいた。
そんなとき、
「アルク様、もうよろしいのではないでしょう?」
俺の耳元で小さな
「このパーティーを追放されること……つまりはあのお方との約束が終了したと言うことではないでしょうか?」
「なるほど。そういう考え方もあるのか」
俺は小さな
「このパーティーはアルク様を必要とはしておりません。アルク様がこのパーティーに所属している意味が無いように感じます」
「確かに!」
「でしたらガイルの提案に乗り、このパーティーを出る事こそ今のアルク様に必要な事のように感じます」
「そうだな」
「おい! そこの無能、何一人でコソコソやっているんだ!」
おっと、俺が
そして、そのことがガイルをより怒らせることになった。
「無能が! 何無視してんだよ! 無能のくせに本当に人をイラつかせる事だけは得意だな!」
そこから始まる罵倒の数々、
「そうよ、そうよ」
なぜか、それに参戦するセシルとリア。
ギルドにいる人たちは少しずつ悪くなっていく空気に耐え切れず離れていき今ギルドにいるのは俺たちと職員の人たちだけになった。
そして、
「は、は、は」
息を切らせるガイル。
「分かった、俺は出て行くよ。それでガイル、おまえが納得するならな」
「ああ、出て行け! とっとこの俺のパーティーから出て行ってくれ!」
そして、
「アルクが出て行くなら私も出て行きます」
(はい?)
何を言っているんだ?
「何を言っているんだ! おまえは俺のパーティーメンバーだろう! 何を勝手なことを言っているんだ!」
「勝手なのはあなたです! 私には何の相談もなくアルクを追放するなんて何を考えているのですか!」
「確かに相談しないのは悪かった! だが、おまえだって俺たちと同じ気持ちだと思っていたんだ!」
「そんなわけありません! それに」
アメリアがその後を言おうとしたところで、
「別にいいよ、このパーティーを追い出されたのは俺だけだ! 君までそんな危険な道を進むことはない」
「で、でも」
「本当にいいんだよ! 俺なら何の心配もいらない」
「分かりました」
少し落ち込んだ感じに答えるアメリア。
そして、
「ガイル、最後に一言だけいいか?」
「なんだ? 最後の言葉だ聞いてやる!」
「本当に後悔しないのか? 俺がいなくなっても」
「お、おまえはまだそんなことを言っているのか! 自分の置かれている状況を理解して、このパーティーに
よりガイルの怒りを買ったようだ。
「了解!」
「オッケー」
俺は二人に掴まれて、ギルドの外へと放り投げられた。
「もう一生あなたに会うこともないでしょうね」
「せいぜい、死なないことね」
そんな言葉を残して二人はギルドの扉を閉めた。
ギルドの前を行き交う人々が俺を見ている。
憐れむ目で見られている俺は、
「ふ~、これでやっと俺の冒険を始められるな」
「はい、アルク様」
俺は左肩に乗っている小さな精霊と言葉を交わしながらギルドを去り新たな冒険へと出発するのだった。
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