第100話
さて、今度は私たちが悩む番だ。この様子だと、少なくともイーサン様は、スィーが精霊であることは聞いているだろう。
冬菜が私やエラに精霊であることを明かしている以上、精霊であることを誰かに話してはいけないわけではなさそうだし、特に問題はない。そう、ないのだが……。
私達はどうすればいいのだろうか。私達の秘密も、イーサン様に話してしまうべきなのだろうか。躊躇う要素は、どこにもない。イーサン様はきっと、秘密を守ってくださる方だ。逆に協力者を得られ、動きやすくもなるだろう。
けれど、なんなのだろうか。この漠然と湧き上がる恐怖は。まるで、してはいけないことをしようとしているようだ。私は、私達は何一つ悪いことなんてしていないのに。
「雪菜。どうかした」
冬菜に話しかけられたのに、うまく首が回らない。ああ、やっぱり怖がってしまっている。
「……雪菜、大丈夫よ。私達は何があってもずっと一緒よ。必ず守るから」
親友にこんな風に慰めてもらうなんて、なんだか恥ずかしい。けれど、それよりも安堵が混ざってしまっているのが現実だ。エラも心配そうに私を見上げている。イーサン様は少し難しい顔をして見守ってくれていた。
「私、あなたが死んでも、あなたの遺骨、持ち歩く覚悟なのよ」
冬菜は何故か自慢げに笑っている。エラは何故かニコニコ笑っている。きっと冬菜なら、エラの遺骨も持ち歩くのだろう。そして、冬菜のことだ。冗談っぽくいってはいるが、おそらく本気だろう。
そう、か。死んでもずっと一緒なら、それも悪くないかも。なーんて、変なこと考えちゃダメね。
なんだか、先ほどまで悩んでいた自分が少しバカらしくなってくる。確かに、警戒心は必要だ。生きていく以上で、必ず持っていなければならないものの一つなのだから。けれど、だからといって、いつもいつも周りを警戒していてはやっていられない。たまには自信を持たないと。
そうよね。……そうよねっ。きっと大丈夫よ。だって、こっちには1人でも災害を起こせる精霊がいるどころか、五大精霊もいるのよ。聖女の力も一応あるし、何も心配することないじゃない。
少し笑えてくる。恐怖はどこかへ逃げて行ってしまったようだ。私は口元を隠し、少し微笑むと、イーサン様に向き直った。
「多数決しましょう。話してもいいと思う人ー」
迷わず全員が手を挙げる。その中にはフゥやゼラ達もいて、私は楽しくって小さく声を出して笑った。
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