第114話 ジェイ達のパーティー①
ジェイ達は、学年8位以内のシード組だけのささやかなパーティーを開いていた。
ジェイの発案である。
アーネは、来るのを渋っていたのだが、次の世代を担う者と親睦を深めることは、皇室の者であれば重要な責務であり、トーマが来ないので、2位であるアーネが皇室を代表して参加しないといけないとジェイやフローラに説得された。
実を言うと、ジェイはトーマに出席依頼はしていない。
でも、もちろん、トーマに言っても、欠席したであろうが。
アーネは、ジェイから貰ったアームレットを着けて、ピンク系のドレス姿で出席した。
セーラは、空色のドレスを身につけ、いつもより伯爵令嬢風になっていた。
「では、みんなが今までやって来た努力によりこの好成績が得られたことを祝すと共に、今後のみんなの健闘を祈念して、乾杯!!」
パチパチパチパチ・・・。
「ジェイ、最後の決勝はお見事でしたね、どうぞ、これ、お好きでしょう?」
そう言って、ブラックチェリーが一つ入っている、ベリー系のカクテルを差し出したのは学年5位のフローラ=ルコックである。
4、5、6位の順位は僅差であり、仮にジェイやアーネ、セーラという飛び抜けた能力の者がいない例年通りの学年であれば、その3人が1位を争う構図が出来上がっていたのだが。
ルコック家は、デフォー家やユグノー家と同様に伯爵家であり、ジェイの家柄と同列の為、婚約者となってもおかしくはないのだった。
皇室系の人たちは銀髪が多いのだが、彼女は、金髪碧眼の美人だった。
スタイルは、Aクラスでナンバーワン。
ちょっと、気取った感じがする、整い過ぎた顔立ちは、とても大人びて見える。
因みに、トーマの一番苦手とするタイプだ。
なぜなら、このような美人は後宮には多く居て、幼少期に、彼を見るなり酷く顔を背けたり、部屋を出て行かれたりは、まだ良い方で、ぎゃっと大げさに叫んで見せたり、化け物とひそひそ声?で話されたりしていた経験があるからだ。
「ジェイ様、これを。そのカクテルには、これが合いましてよ」
そう言って、クラッカー?にブルーチーズ系のチーズが乗っている、塩味とクリーミーさがクラッカーにマッチした一品を持って来ていたのは、学年7位のエスカレーナ=マードル。
子爵家の長女であり、子爵家の中でも、伯爵家並みの財政力があり、財務官僚を歴任する家柄だ。
すでに女性らしい身体つきの小柄な子で、愛くるしい笑顔をいつも振りまく陽気な性格だが、曲がったことが嫌いな潔い正義感を持つ。
ボブにしている金髪の髪が、これまた良く似合っていて可愛らしい。
アーネが居なければ、男子生徒のアイドル的存在になったであろう。
アーネにタイプが似ているエスカレーナは、アーネとジェイが大好きだった。
そして、トーマが大嫌いだった。
トーマは、自分が王子だという権利を行使して、良く休んだり、早退をしたり、試験にも欠席するし、やりたい放題に、他人からは映るのだ。
それでいて、Aクラスにずっと居るのも、気に食わなかった。
そして、そのくせ、アーネやジェイに馴れ馴れしいのも
こうして、ジェイの事を大好きな二人が接待している中、アーネは。
「アーネ様、こちらはとても女性に人気のお飲み物ですよ」
そう言って、ピンク色の液体のカクテルを差し出したのは、学年6位のリッツ=シュルツ。
シュルツ家は由緒正しい家柄で、魔法や剣技だけでなく、学者も多く輩出している名門の子爵家。
分家も多く、リッツは本家筋にあたる。
何か新規な事案はシュルツに通せ、と言われているほど、発言力がある家系だ。
リッツは、銀髪碧眼のイケメンで、特に女性の扱い方が上手く、踊りも一番上手い。
流行にも敏感で、髪型もよく変更する。
今日は、シンプルがテーマらしく、長髪を後ろに靡かせており、華奢な身体には良く目立つ。
スッと、その髪に指を絡ませ後ろに撫でつける仕草が乙女心をクスグルのだった。
「アーネ様、こちらも人気のカクテルですよ。私がシェイクし、少し甘めにしたホワイトレディーです。アルコール度も優しめにしました」
そう言って、白い液体が入ったカクテルを差し出したのは、学年4位のリッター=アインハルト。
七三分けされた、珍しい茶髪のイケメンで、鼻筋が高めのところがイケてる。
アインハルト家は、剣でもっとも有名な家系で、多くの騎士達を輩出している名門だ。
騎士になりたければ、アインハルト家に弟子入り志願しろというのは、ホントの話である。
「ありがとうございます。あまりたくさん飲めませんので、ゆっくりと頂きますね」
アーネは、まだ、お酒に慣れていないので、少し心配だった。
でも、みんな優しくしてくれるので、お酒にチャレンジするいい機会だと思った。
『トーマ王子様も来ればよかったのに、大好きなお酒がありますよ』
そう、心の中でトーマに声をかけるアーネだった。
そして、『トーマ王子様はお酒が強いとセーラから聞いているので、私も強くならないと』と思うアーネだった。
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