第50話 VS ガートルード②

 エリーは、動かなくなっていた!!



 エリーの手足は石化されていたのだった!!


 そのエリーへ、ガートルードの強化され,、多分魔力付与された右脚が、唸りを上げ迫って来た。




 その時、ビームがガートルードの胸を直撃し、ガートルードが後ろへよろめく。

 オレは、既に動いていた。

 オレの出来る最速で!


 ヤツが後ろへ態勢を崩した事で、ヤツのキックのスピードが遅くなったのと、その軌道が後ろへズレた事で、ほんの僅かな余裕が生まれた。オレは、エリーを右手で抱え、結界内へと戻った。


 だが、オレの左腕は、ヤツのキックを食らって千切れ飛んだ。


 ビームは、アヤカが放ったのだった。


 ソ『トーヤ!!エリー!!』


 ソフィーは、すかさず、パーフェクトヒールを掛けると同時に、対物理シールドを三重掛けし、尚且つハゴロモからの魔力を注ぎ、結界内を閉じる(完全結界)。


 オレは、痛みは、ヒールが効いたのか、あまり感じなかった。

 そして、血は止まった。

 エリーは動けそうもないが、パーフェクトヒールは時間をかければ石化に効くみたいだ。


 ト『えっ?アヤカ!』

 アヤカもビームを放った時から、石化が始まった。


 一方、ガートルードは、倒れて口から緑の血を流していたが、笑っていた。


 ガートルードがなぜ魔王を除いた魔族で最強なのか?


 それはこの石化にある。


 物理攻撃でも、魔法攻撃でも、最高レベルのこの魔人には、切り札というべき、この石化があり、自分自身の防御と相手への攻撃とに石化を使用する。


 それなら、最初から石化を使えば良いというものだが、実は石化は、この魔人の魔核のエネルギーを大きく消費する。そのエネルギー量により石化のレベルがあり、また、全てを直ぐに石化するのは無理で、局所なら可能だ。魔王がこのスキルを持っているのなら、完全石化ができる。なぜなら、魔核を複数持っているからだ。


 魔核は、命と同等の為、そのエネルギーを消費する事は寿命を縮めることにつながる。

 もちろん魔核の中に魔素を取り込めれば、そのエネルギーを補うことができるのだが、それには通常かなりの苦痛と時間を必要とする。その点、魔王は特別の存在だと言える。



 ト『アヤカにエリー、お前ら、どうして石化した?』

 エ『なんか、光った』

 ア『アイツの目が光ったのよ』

 ト「つまり、アイツの目を見たらダメってことか』

 ソ『そうしたら、どうしたら攻撃を当てるの?』

 ト『ソフィー、とにかく、聖結界を自分の限界まで掛けて、更にアンチマジックを何重にも掛けてくれ。ヤツは、もう、物理攻撃はないだろうからな』

 ソ『オーケー、でも、何か策はないの?』


 考えろ、考えろ!

 こうしている合間にも、ヤツの魔法が結界を一つずつ、壊している。


 エ『あのさあ、目を瞑っても当てることができるよ』

 ト『えっ?どうやって?』

 エ『私はまだできないけどね。剣聖とか、剣帝とか、剣王とかは心眼のスキルがあって、それを使うと寝てても攻撃ができるって話だよ』

 ト『寝ててもって・・・それ、盛りすぎだろ。でも、なんか前にもやったな。ちょっと違うけど』

 エ『試練の間の、アレね?』

 ト『ああ、でも、結局は聖剣任せで、最後は見えたからな、あの時は・・・』

 何か、ヒントが・・・あの時・・・・・。


 ア『トーヤは、ただ立ってただけだと思ってたわw何にも感じなかったもん』


 ト『・・・それだ!感じるんだ!魔力を感じるんだ!ヤツのオーラを!そして、魔核の位置を・・・アノン?どうだ、わかるか?・・・・』

 アノン『もう少し、魔力を食わせろ、そして、自分も感じて見ろ、見えるだろ、ほら!』


 ト『ソフィー、オレの聖剣に魔力をくれ!オレのヒールは後回しだ!』

 ソ『わかった』

 ト『アヤカ、アンチマジックをソフィーの代わりに張ってくれ!』

 ア『オーケー!』

 エ『わたしは?』

 ト『祈れ!』

 エ『うん』


 えっ?エリーの祈りって・・・・・。

 エリーの聖剣から、オレの聖剣へ魔力?が流れ込んでくる。

 オレは、彼女が、試練の間の時、そして、真名まながわかった時、いずれも祈ってたのを思い出した。

 そうか、アレは必要な事だったのか?

 今は検証をしている暇はないけど、いつかは・・・・・。



 見えるぞ。

 よし、魔核へ、今込められるだけ魔力を込め、細い高密度のビームで貫く!


『ソフィー、結界をオレたちには開放しろ(通常結界は、結界外から結界内への指向性の魔法に対して防御するし、ソフィーの結界は聖結界であり、魔族からの攻撃には特に防御力が高い。対して完全結界は、結界内からの魔法も身体などの出入りもできなくするが、外からの魔法攻撃はもちろん物理攻撃も防御する)』



 オレは、聖剣を目にも止まらない速さで振るう、ヤツの魔核へと!


 聖剣から放たれたビームが光速でヤツの魔核を貫いた・・・・



 と思ったが、ヤツの石化した皮膚に達した時、ビームが固まった。


 なに?

 エネルギー体まで、石にするのか?

 どうやら、幾重にもシールドを張りビームの速度を緩め、尚且つ、魔核の莫大なエネルギーをビームに当てたようだ。

 ヤツは、片膝をついていたが、大丈夫のように、こちらを見て笑った!


 しまった!つい、見てしまった!



 しかし、聖剣のチカラか、勇者のチカラか、石化の魔力が落ちていたのか、アンチマジックシールドが多重に張ってあったので、なんとか大丈夫だった。


 オレは、また目を瞑る。


 その瞬間だった!


 ソ・エ・ア『危ない!トーヤ!』


 みんなの声で、周囲の魔力への感知能力を全開にする。

 すると、すぐそこに、オレに向かって放たれた、ヤツの鉄棒が!


 なに?ヤツの手は、ダメになっているはず!


 対処しようにも、気が付いた時には目の前で逃げることも出来ずに、オレの腹は串刺しにされた。


 すぐに抜くが口から吐血。


 この鉄棒は・・・・対物理シールドは少しは展開していたが、対魔法攻撃に重きを置いて展開していたため、それがアダとなった。


 ヤツは、鉄棒を魔力で飛ばした?

しかも、オレが目を瞑るのを待っていた?


 そして、この鉄棒には、石化の魔法が付与されていて、傷口が塞がらず、逆にオレの内臓から石化して来ている。


さらに、ソフィーの石化が始まり、目が見えないと言う。

さっき、オレのビームが当たると思い、その時から見てたのか?

これ、絶体絶命だよね・・・・・・・。




 ガ「終わったな、勇者!これで、ナスターシャ様も・・・」

(ここで勇者を討つ計画はなかったが、これはオレの独断。ナスターシャ様が殺された時に決めていたことだ。お叱りは、覚悟の上。byガートルード)




ト『今だ!』

ソ『行け!』

ア・エ『お願い!』


 その時、巨大な光の球体が出現した!



 眩しくて、目を開けていられない・・・


 瞼を焦がすほど、まばゆく光った時、オレは目を開けた。

 そして、ガートルードを見る。

 大丈夫だ、オレを、いや、か。


 ガートルードは、思わず、目をつむった!

 瞑ってしまった!!



 今だ!

 オレは、腹の痛みなど無視して、居合切りの要領で、ヤツの所へ瞬時に移動すると共に聖剣を抜き払った。


 ヤツは、一瞬、気を抜いた(勝ったと思い)と同時に目を瞑った。

 気を抜いたから、目を瞑ってしまったのかもしれないが。

 それが命取りになった。


 シールドは張っていただろうが、関係ない。

 身体強化していただろうが、関係ない。

 次を見据えて準備した我々の勝ちだ。


 オレは、ソフィーにもう一つ、要求していたのだ。

 ビームが効かなかった場合の事を。


 ヤツの目を見なければよいのであれば、ヤツの目を瞑らせたらよい。

 それには、目くらましが必要で、聖なる光を発生させるのは、ソフィーの得意分野だった。

 できるだけ、強烈なヤツをお見舞いすることを言っておいた。

 そして、ビームが失敗したら、ヤツが何かを仕掛けてくるハズで、その仕掛けを放った後にやれと言っておいたのだった。

オレも、ビームの後、魔力を直ぐに練っていた。


 今までもそうだが、技を放った後の一瞬には隙が生じやすいものだ。

 今回は、それが最高のタイミングで行われた。

 オレは、傷ついたけどね。


 ガートルードの胴を真っ二つにし、魔核も破壊した。


 さらにオレは、とどめを刺すべく、その首を刎ねた。


ヤツの首は身体を離れ、宙を飛んだ、




 その時、瞑っていた瞼が開き、右目から熱線が出て、オレの左目が焼かれた。


 石化されないだけマシだったが、左目を激痛が襲う。

 なんという執念だろう。

 


 ガ「無念だ、魔王様・・後は、貴方に・・・」


 ガートルードは、身体全体が白い石の様になり、やがて、ボロボロと形が崩れ、粉になり、霧散していった。


魔核は破壊されたので、石化はされなかったが、その熱線はオレの視神経も焼き、脳神経を焼く寸前で止まったようだった。

これは、勇者のセルフガードのチカラか、それともヤツのチカラがそこまではなかったのか、それはわからないが・・・。

目から魔力を出すのが通常では石化になるが、それが成されない場合は、熱線となるのか・・・・・・。



オレは、もう、今となってはどうでも良いことを考えながら・・・・・・・・オレは、意識を失った。



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