第5章 魔族幹部との攻防

第48話 ガーランド帝国

 ピエールに謁見。


 ピ「急な事ですまないが、君達には帝国へ行ってもらう!では、シモン、詳細を」


 シモンが詳細を話す。


 ~~~~念話

 ト(ソフィー、君にシモンの話は任せるよ)

 ソ(・・で・・、ちゃ・・・いて・・・い)

 ト(うまく、聞こえないな)

 ア(な・か、・・・へ・・・・い?)

 オレは念話を諦めた。


 どうやら、オレたちが念話をしているのをなんとなく分かったんではないかなと思った。

 まあ、謁見の間で、至近距離だけど、これだけ妨害されるという事は、ここにより強力な結界が張られたということだな。


 これからは、これら結界にも注意観察が必要という事か。



 というわけで、帝国へ行くこととなった。

 ガーランド帝国とフランツ王国は、犬猿の仲だ。

 どちらもお互いに長い歴史からのシガラミがあり、昔は戦争が絶えなかった。


 今は和平条約が結ばれ、互いに交易もあり、人的にも物的にも交流が盛んである。

 また、実際、王(皇)族通し、お互いに婚姻関係を積極的に結び、平和を維持しようと努めている。


 帝国までは、本来なら1か月以上を要するが、帝国と王国を隔てるラウル山脈を転移で登らずに移動できるようになったため、約20日強で行けるようになった。そして、帝都まではさらに10日を要する。


 そのように、結構、大変な移動になるので、オレは、シモンのじじいの所に、直接、故郷の事やオレの両親の事、サーヤのことなどを訊きに行った。


 シモンは、オレを表面上は歓迎してくれた。

 サーヤを含め、オレの両親もアジャ村方面の防衛に当たっているため、こちらへ来る予定はないとのことだった。

 オレは、手紙を出しているし、サーヤは怒っているから来ないかもしれないが、両親からの返事がないのが、おかしいと思っていた。


 それについては、今、アジャ村方面は戦時下の様相を呈しているため、よほどの事でない限り、手紙などを受け付けていないらしい。

 それでも、何かの伝手を頼って、オレに手紙とか、伝言とかがあっても良いのにと思うのだが。


 そして、ルーシーのことを訊くのだが、これもあちらの任務が難航を極めており、敵との闘いがまだあったりして、手紙どころではないという事だった。

 オレは、シモンの顔色、魔力や声、心臓の鼓動など、いろいろと探ってみた。

 分かったことは、一つだけ。

 両親のことを訊いた時に、心臓の鼓動の様子が少しだけ変化したことだった。


 オレは、次に帰ってきたら、両親やサーヤの事を徹底的に探るのと、ピエールたちに何を言われようとも、ルーシーに会いに行こうと決心するのだった。


 この時、聖王のじじいが居てくれれば、何か情報を得られたかもしれないと思うのだった。



 帝都までの道のりは、長く、つらかったが、聖女たちも弱音を吐かず、道中は時々訓練をしながら、移動した。

 夜間も移動することが多く、いつも身体が揺れているのではないかと思う程だった。


 そうして、帝都に1か月と少しくらいで到着した。


 皇帝ルドルフ14世と謁見する。

 おっさんだな。


 横には、おっさんより年若い皇妃がいた。

 ムネを強調する衣装が眩しく、おっさんが何を言ってるのか、頭に入ってこなかった、って言うのは半分ホントw


 なんか、質問とかはソフィーに任せて、オレは周囲の人たちの人物観察に勤しむ。

 いろんな人がいるんだなとか、ふつうの感想を言ってるようではダメなんだよね。


 オレは、ナンダか不気味な気配をさっきから感じているのだが、気配遮断のスキルか魔法を使っているのか、姿を隠す魔道具でもあるのか、あやふやなというか、視覚的には不鮮明なモノがあるのを察知している。

 そこからは、何か得体の知れない暗い想念が漂っている。


 オレは、そこに神経を使いながら、全体を探査する。

 他にも、怪しき影がうごめき、オレ達を観察しているようだった。


 帝国には暗部あんぶという組織が存在しているという。

 たぶん、その者たちの気配なのだろうが、そいつ等は危険なオーラを纏っている様で、色も暗い。


 謁見が終わり、オレ達はベッドのある部屋へと案内された。

 オレに付いた女官は、お食事はこちらへお持ちしますと言って、ここで夕食をとり、シャワーを浴びた。

 ベッドに行くと、先ほどの女官が薄着を着てオレを待っていた。

 女官はオレと寝る気満々のようだったが、オレは彼女を追いだした。

 彼女も任務だったかもしれないが、オレにはサーヤとルーシーがいるので、相手などできない。


 その夜、オレは、変な夢を見た。


「姉さん、どこに行くの?」

 姉「アナタは何も心配しなくていいのよ。私が守ってあげるから」

  「姉さん、どこにも行かないでよ」

 姉「アナタは男の子でしょ。だから泣かないの。お姉さんがおまじないをしてあげるわね」

 姉「おつむとおつむをくっつけて、うふふふ、ほっぺにちゅっ!ほら、もう元気が出て来たでしょ。これでお姉さんはいつもアナタの傍にいるわよ。さあ、笑って。アナタは私の大切な弟。そして、将来は私の勇者になるんだからね。強くなるのよ。そして・・・・・・」

  「姉さん、ぼく、強くなるよ!姉さん、それまで待っててね!」


 そう言って、オレ?は笑ったようだった。

 でも、目からは涙が止まらなかった。

 ナンダ、これ?

 誰だ?この人たち?

 ぼくって、オレなのか?

 勇者になる?

 オレ、もう勇者なんだけど?


 この夢は、起きたら、殆ど忘れてしまった。

 ただ、私の勇者って言葉と、ほっぺにちゅっ!の感触だけは忘れなかった。


 翌日、みんな揃って朝食を食べた。

 そして、外に出て、この国の騎兵部隊とオレ達は魔族が進軍して領地化し、砦を作っている土地へと出発した。


 帝国騎士たちは、重武装しており、スピードが出なかったが、騎兵部隊及び騎士団千人、帝国兵9千人を動員する規模であり、大きな戦いとなることは容易に想像がついた。騎士団と騎兵部隊千人というのは、対魔族のために最大規模の動員をしたもので、フランツ王国よりも多い兵力だった。人口10万人もあれば中規模の国の首都に匹敵する大都市という人間族世界にあって、総勢1万人規模はとても大きなモノだった。


 そうして、10日後、例の土地の端に到着した。

 陣形を左翼、中央、右翼に分け、さらにそれぞれ前中後の3陣で構成し、中央で敵の中心を叩き、左翼右翼がその中央を包み込むように横からあるいは、後方から攻撃するという作戦だった。敵の数はせいぜい2千くらいのため、この包囲殲滅戦法が採用されたのだが・・・・。


 戦いは、双方の遠距離魔法攻撃から始まった。


 魔族の広範囲殲滅魔法である直径20メートルの大火球が100個出現する。こちらは同時に光の矢を1万個出現させた。

 対して、それぞれが防御シールド及びアンチマジックシールドを展開強化。尚且つ、各人が身体強化魔法や防御魔法、反魔法結界を施す。双方の広範囲魔法はそれぞれの防御網にかかり、消滅する。


 魔族側は、火球が消え去るのと同時に紫色の毒霧を発生させる。

 さらに、上空から火の槍が1万出現し降って来た。

 そして、地面から、これも槍状に尖った突起が付き出てきて、上と下から槍攻撃を食らう。

 これは、過ぎだなとか、アヤカと言い合う。


 空からのモノはシールド発動中のため防ぐが、地面からのが厄介だった。オレたちはシールド以外にも聖魔法による結界もあり、地面からの魔法攻撃も無力化できるが、他の兵たちには防ぐのが難しい。


 それでも、聖属性の魔力を周囲に展開し、毒霧と土属性の魔法を発動している魔力に干渉して妨害し、無効化するも広範囲のため、風魔法も使い毒霧を散らしたり吹き飛ばしたりする。しかし、この3面攻撃により、戦闘できる人数が2割以上減った。しかも、場所によると前進ができない所とかがあり、このままでは、包囲網の構築に支障をきたしそうである。こちらもお返しと、また、光属性の光の矢を5千出現させて攻撃する。

 しかし、またしてもシールドに阻まれる。


 敵の中央が突然突出し、我々の中央部を寸断しようと動く。

 ここからは、肉弾戦へと突入していくが、オレ達の魔法は聖属性で指向性があり、広範囲魔法でも、魔族へのピンポイント攻撃ができるため、連続でアヤカが中心となって魔法を放つ。


 それで、なんとか寸断されるのを食い止めていたが、敵も聖属性攻撃に対するアンチマジックシールドを個人と集団に付与しているため、大きなダメージは与えられない。

 しかし、こっちもソフィーを中心として魔力をアヤカに集めているため、しつこく魔法を放ち、シールドの破壊を試み、被害を与えだした。

 このまま押し切れるかと思ったら、オレ達の前に一際ひときわ大きな魔族が立ち塞がった。


 あの、エミリを奪取した魔族だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る