第46話 聖女たちの奮闘、ふんとうに頑張った!

 オレたちはアヤカのことが終わった後でフランツ王国に帰り、訓練に励んだ。

 もう、アイツ等が作った修練とかはやらないし、意味がもうない。


 ソフィーは、自分の聖武具である聖扇ハゴロモの真名まなを得た。

 彼女は、ハゴロモに、何を思ったか、パーフェクトヒールを掛けて真名(シンシア)を得たのだった。


 ハゴロモを統べるのは女性だと聞く。

 パーフェクトヒールで彼女(シンシア)は気持ちよくなっちゃったんじゃないかなとか思った。

 そして、オレが、あれほど熱弁していたのは、いったい何だったのか?


 と、そんな事は思っても言わない。



 そして、アヤカも、聖武具である聖杖ハーネットの真名(ジーク)を得た。


 アヤカは、婚約破棄をした、その夜、ハーネットと一緒に酒を飲んでいたらしい。

 まあ、ハーネットの前に酒の入ったコップを置いていただけなんだけどね。


 そしてその日にあった出来事を涙ながらにハーネットに話していたところ、彼女は感極まって、ハーネットをかき抱きながらハーネットに涙と鼻水(推測)を垂らしたらしい。

 すると、ジークが語りかけてくれたらしい。


 聞くところによるとハーネットを統べるのは男性だと言うことで、涙と鼻水をかけられて感極まったんじゃねーかと思った。

 そして、あのオレの熱弁と熱弁した時間を返して欲しいとか、思った。


 そういうことを思っても、もう言わない。


 2人にはただ「よかったね。おめでとう、ほんとによくがんばったよ!」と、祝福した。

 こういう心遣いが勇者の仕事なのだと、オレは思っている。


 で、エリーなのだが、もともと聖剣ソーラーレイティアは、なぜか、オレが戦って得ることが出来た。

 そしてその戦いを聖女たちの中でエリーだけが見ることができた。


 その時、エリーはというと、俺をすごく応援していたようだ。

 まあ、それはわかるのだが、他の聖女たちに比べて試練を通過していないように思うのだが。

 そのためか、ソーラーレイティアとの意思疎通が中途半端であった。

 時々応えてくれるが、基本あまり応えてくれないと言う。


 そういう状態がずっと続いていたが、ある時、フランツ王国からの依頼で魔獣を討伐した。

 そこで出向いたのは、オレとエリーの前衛組二人だった。


 戦いが始まって直ぐにその魔獣は雷を打ってきた。

 余りの不意打ちに、オレは反射的にガードを起動できたが、エリーは魔法の能力が低いため、剣で緩和させたかもしれないが、直撃を食らい、痺れた状態で動けなくなった。

 更に、その魔獣は表皮がカメの甲羅状でとても固く、オレの聖剣が大きく弾かれたため、ちょっと遠くへ聖剣がすっ飛んでしまった。


 オレは、仕方なく、近くでうずくまるエリーの聖剣を手に取り、その魔獣の牙や角の攻撃を防ぎつつ、反撃を試みようと聖剣に魔力を注いだ。

 すると、この聖剣の扱い方がわかり、太陽に向かって、聖剣をかかげると太陽のエネルギーが剣に渦を巻くように集まり、すぐに剣にエネルギーが収束吸収され、空色の剣が濃紺に染まった。

 オレはすぐさま、魔核のある胸郭目掛けて剣を突き出した。


 一筋のビームとなり、固い表皮を難なく貫き、魔核を破壊した。

 そして魔獣は倒れて動かなくなった。


 その時、声が聞こえた。

「やっと、私を使ってくれたわね、勇者!私はこのソーラーレイティアを司るトヨカ。通り名は群青のトヨカよ。よろぴくね、勇者、そしてエリー」


 よろぴくって言うのか?とも思ったが、エリーは?と見ると、彼女は、腕を交差して目を瞑り祈っているようだった。


ト「問題ないわ、彼女にも聞こえているわよ、ね?エリー?」

エ「はい、聞こえているけど、わたし、使っていいの?」

ト「当たり前でしょ、もちろん聖剣っていうのは勇者の専権武具なわけよ。だから、勇者が使わないといけないっていう制約があるわけ。だから、こうして私の声がやっと聞こえ出したのも、聖剣が扱えるようになった勇者が私を使ったからよ。でも、勇者のパーティーである聖女の剣士はその勇者の武器が特別に使える、特別な存在なわけ。だから、貴女は特別なのよ!自信を持ちなさい!これからは、私が貴女を導くからね!」


「ありがとう、トヨカ。これからも、私、頑張るから、今後ともよろぴくね」


 いや、もう、よろぴくってのいいから・・・・。

 オレが、まず使わないと進化して行けないのか?

 って、そんなもん、わかるかよ!

 今までの聖剣の使い手は、どうしてたんだ?


 こうして、最後の関門となったソーラーレイティアも、真名がわかり、いよいよこれから、勇者パーティーのホントの戦いが始まるのだった。


 しかし、この場合も、オレの熱弁とか、特訓とか、無駄だったんじゃね?

 オレは、とても複雑な気持ちだった。

 だって、結構な時間を無駄にしてしまったんだからな。

 でも、そんなオレの気持ちを察してか、聖女たちは優しかった。

 特に、そのことには誰も触れず、それぞれ真名がわかった日の夜には、あの小料理屋にオレを誘ってくれて、祝杯を挙げた。

 お金は彼女たち持ちで。


 オレは、そんな彼女たちの優しさで、苦労が報われた感じがした。

 良いたちなのだ、彼女たちは。


 ~~~~~~~~

 ソフィー視点


 私も、ついに真名を得ることができた!

 もう、やったーーーーって感じだった。

 真っ先に、トーヤに報告した。

 彼は、ちょっと、はにかんだ感じで、素直におめでとうと言ってくれた。


 私は、ハッとした。

 彼の気持ちを考えもせずに、有頂天になってしまった自分はバカだと思った。

 だって、彼がいろいろとやってくれたにもかかわらず、結果として、私が勝手に思いついたことで真名を聞けることになったんだから。


 アヤカの時にも、結果としてアヤカが勝手にしたことが真名を聞くきっかけになった。


 そして、エリーもついに声がちゃんと聞こえるようになった。

 しかも、それは彼が偶々たまたましたことが、きっかけになった。


 ホントに何がきっかけになるのか、わからないから、多くの所有者たちは真名を聞くことなく使用していたと、私のハゴロモを統べるシンシアが言っていた。


 だから、何も、トーヤの言ったことや、やらせたことがダメだったと責めるわけにはいかない。

 それに、みんなは、もう気が付いているのだ。


 トーヤがやらせていたこと(聖武具と一つになれとか)は、非常に役に立っているんだってことを。

 トーヤが聖武具の声に耳を傾けるやり方を具体的に教え、私たちのつまらない疑問にも丁寧に答えて指導してくれたことによって、みんな、聖武具を身近に感じ、いつしか自分の分身のように思うようになった。


 私の場合は、ハゴロモに、感謝の気持ちと、武器としての扱いに痛い思いをさせたと思ったことから、ヒールをかけることを思いついたのだった。

 自分の分身とか思わなければ、そんなことをする発想が出て来なかったと思う。


 アヤカの場合も、聖杖と一緒に酒を飲み、涙するなど、聖杖を、一つの武器とか道具とかいうように見るのではなく、自分の友達的なモノかそれ以上のモノとして思えるようになったからこそ、そんな行動ができたんだと思う。


 トーヤにしてもらったことは、そういう聖武具に対する基本的姿勢を教わったことだと、今ならわかるんだ。


 そして、私のかねてからの疑問を彼女?シンシアに訊いた。

 魔力量がすぐに枯渇してしまうことに対しての対処法がないのかを。


 すると、シンシアは、魔力というものは魔素が集まり生じるので、魔素を集めればいいと言うのだ。

 魔素は、どこにでも存在する目に見えないモノだが、それを集めるなんてどうすればできる?


 ソ「どうすれば、集められるの?」

 シン「私には、そういう機能もあるの。私は扇よ。広げたら、大気中にある魔素を取り込んで、それで魔法を放てるし、貴女の魔力やパーティーのみんなの魔力も補充できるのよ。どう?私の凄さがわかったでしょ?」

 ソ「すごいよ、シンシア!わたし、これで足手まといにならなくてすむよ!」


 ってことで、私は自分の可能性が広がり、もっとできると希望に胸が膨らんだ。

 もっと、パワーアップしたら、更なる技も使えるとシンシアは言うから、もっともっと、訓練するんだ。



 そして、今、私たちは、トーヤお勧めのいつもの小料理屋に来ている。

 ここのお酒は、女子ウケが良く、口コミで最近多くの女の子たちがやってくるようになった。もちろん、お料理もうまい。

 でも、私たちは、それより以前の常連さん(とくにトーヤが)で、勇者パーティーということもあり、お店の綺麗な女将さんに可愛がってもらってもいるので(特にトーヤが)、いつも奥の座敷を利用させてもらっている。


 実は、サーヤの個人教師をしていたステファンが一年間貸し切りのお金をお店に払っているのだとか。なぜかは知らないけどね。


 そして、今、トーヤは酔っぱらって、私の膝の上で寝ている。

 私は、彼に感謝しているため、そのまま起こさないように、じっとしているんだけど・・・・・。


 ア「ソフィー?あなた、婚約者がいるんだよね。いいのかな、そんなことして?」

 エ「そうよ、私に代わりなさい」

 ソ「ダメです。こうして癒してあげるのが私の務めだから(私には、こんなことくらいしか、まだ彼に恩を返してあげてないけど、レベルを上げて、絶対パーティーに貢献して、彼を、そしてみんなを楽に戦わせてあげたい)」


 ア「まあ、トーヤくんを起こしちゃうのも不味いから、今は仕方ないけど、次は私の番だからね」

 エ「なにそれ?次はふつう、私でしょ?私の方が先にフリーになった先輩だし」

 ア「ふふふふ、私には、彼の大好物がふたつ、揺れているからね!」

 エ「なにそれ?それ、大きすぎて、膝の上に寝てると、窒息しちゃうよ!ねっ?ソフィーもそう思うでしょ?」

 ア「エリーさん、それはヒガミというものよ。ねっ?ソフィー?」

 ソ「二人とも・・・エッチよ!」


 こんな私たちだけど、トーヤ、私たち、がんばるから、魔王を絶対に倒そうね!

 そう私は心の中で呟き、彼の頭をちょっとだけ撫でるのだった。


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