第19話 最弱勇者⁉︎

 オレ(トーヤ)は、こっちに来て、2週間修練を重ねた。

 修練という、イジメを受けた。

 しかも、まだ聖剣では素振りだけだ。

 何も技とか教えてくれるわけでもないし、ただ振ってるだけ・・・ではなく、相対する敵を意識しながら振れって事で、一振り一振り気合を込めて振った。


 仮想した脳内の敵の動きをよく見て、隙を突こうとしながら、はたまた、フェイントを加えながら、はたまた、必殺の一撃を加えるイメージをしながら、振り続けた。


 腕の感覚がなくなるまで、、握力がなくなるまで・・・聖剣を握れなくなるまで振った。


 腕がダメになったら、今度は足だ、ということで、ランニング。

 いや、実はランニングって、腕振りが重要なんですけどって弱音は吐かない。


 オレは、もう、そんな愚痴は言わない。

 ただ、やるだけだ。


 そして、倒れたら、魔力枯渇まで魔法をぶっ放す。


 心身ともに悲鳴を上げて、救護所で回復させられ、もういいだろうと、今度は腕立て伏せ、スクワット、懸垂、ダンベル上げ、バーベル上げ、砲丸の様な物の遠投などなど。


 時々、ヒールで回復させられるも、疲労感が半端ない。



 そんなボロボロの状態で、今夜、パーティーに行けだと!!

 何を考えてんだよ、ピエールは!!


 アイツのことをちょっとでも考えると、腹が立って仕方がない。

 アイツがサーヤとキスしたり、サーヤに覆いかぶさったりする夢を何度見たことか!

 挙げ句に、母さんまで毒牙にかけようとして!


 もう、オレの中では、ピエールはそういう奴だった。


 オレは、もちろん、この前のサーヤのことが頭から離れない。

 でも、それでも、オレは、女神様に誓ったし、婚約者だ。


 アイツの心は、離れていたとしても、まだ婚約者であるため、アイツのいるパーティーに行かないといけない。

 ついでに、あの不良聖女たちにも、会わないといけない。

 

 重い空気で、今、朝を迎えた。

 朝食には、まだ時間があったので、オレにしては珍しく、散歩をした。


 あまり、城の中をウロツイタことがなかったので、新鮮だった。


 こんなところに、庭があったのか?


 オレは庭の周りを散策した。

 すると、銀髪の小柄な少女がいた。

 あれ?だれだっけ?

 すると、声をかけられた。


「おはようございます!勇者様?」

「あっ、おはようございます・・すみません、どなたでしたっけ?」


「うふふふふ、私ですよ・・癒しの聖女のソフィア=ファーガソンです、ソフィーと呼んでください」

「ああ、君が・・・なんか、前より綺麗になってるんじゃない?・・あっ、ごめん」


 コイツも、貴族のイケメンたちと着飾って、化粧や香水をつけまくって、遊んでいるのを知ってるからな。

 今も、粧し込んでいるし。

 高い(であろう)香水の匂いがするぞ!


「うふふふふふ、思った通りの方ですね。私、あなたの婚約者のサーヤさんとお友達になったんですよ」

「えっ?そうなの?」


「できれば、あなたとも、その・・お友達になれたらいいなと・・」

「えっ?いやいや、それはできないよ・・あっ、オレ、さっきからタメ口になっちゃってるか?」


「うふふふふふ、そんなところがサーヤさんに似てますよ」

「えっ?なんか褒め言葉じゃないような?」


「えっ?褒め言葉ですよ?・・あの、なんで友達になれないのですか?」

「それは、君にも婚約者がいるだろ?悪いじゃん」


「あら、そんなことを・・大丈夫です。私の婚約者は心の広い方ですので」

「へ〜〜、信頼してるんだね」

「もちろんです」


「ふ〜ん、あっ!オレ、もう行かなきゃ、それじゃあ、また」

「あっ、そうですか、それでは今晩にまた会いましょうね」

「ああ」


 こうして、オレは初めてソフィーと会話した。

 聖女とは話したくなかったけど、ソフィーは、そんなオレの事などお構い無しに、オレの心に入ってきた。


 これが、癒しの聖女のスキルか?


 そんなに悪いヤツではなさそうだった。

 オーラも安定してるし。

 しかし、オレはまだ、信用したわけではなかった。



 その後、オレは、騎士の宿舎で朝食を食べていたら、話しかけられた。


「勇者様ですよね~~。ちょっと、手合わせを願いたいんだけど、いいかな?」

 ニヤニヤしながら、オレとの対決を所望してきた。

 そいつの周りのヤツもニヤニヤしている。


 今は、ルーシーはおらず、オレはどうしたものかわからなかった。


「いや~~、勇者様って、しゃべらないのかな~~、それともしゃべれないのかな~~~」

「「「「「ひひひひひ、わははははは」」」」」


 オレは、無視をしようとしたが、相手はしつこく絡んでくる。

 仕方がないので、対決することにした。

 それぞれ、防具をつけて、木刀を構えた。


「じゃあ、どちらかが戦闘不能になったら終わりという事で、いいですよね、勇者様?」

「「「「「くひひひひひひ」」」」」


「では・・は」

 卑怯にも、はじめという前に剣を打ち込んできた。


 オレは、咄嗟に身体が動き、避けた。

 それは、彼のオーラが見えたからだ。

 急に、オーラが膨れ上がったので、すぐに警戒できた。


 しかし、コイツらのオーラ、腐ってるな。

 オーラには匂いはないのだが、なんかドブの臭いがしそうなんだよね。

 思いっきりやってもいいかな?


 さあ、オレの連撃を受けてみろ!と心の中で叫ぶ。


 瞬歩まではいかないが、一瞬で間合いを詰めると同時に初撃を放つ。

 まるで居合切りの要領で、右手で剣を鞘から抜く感じで、進行方向と平行に相手の右胴へ横薙ぎする・・しかし、敵もさるもの、伊達に王国騎士になってはいない。


 初撃を弾かれた。


 が、それは想定内。


 弾かれる瞬間から剣を弾く方向に力のベクトルを変え、受けた力がそれに加わることでよりスピードの乗った状態で素早く身体ごと翻し(スピンし)、返し技を放つ。


 敵は自分の剣ではその速さに間に合わないと知り、身体を逃がそうとするも、至近距離のためオレの剣速には及ばず、相手の左胴をぶち抜く。


「勝負あり!」

 ルーシーが声を上げた。


 ト「いつから見てたの?」

 ル「ふふふ、最初から・・ごめんね・・えいっ、ウィンク」


 ト「それ(ウィンク)、いつ覚えたの?」

 ル「子供の頃、親父にしてた・・・黒歴史だ・・忘れろ!」


 ル「お前たち!勇者様は、これでも、剣帝の弟子だ。お前らでは、格が違う!これからは、よく考えて行動することだな」


「「「「「はい!!!!」」」」」


 なぜ、こいつらはオレに絡んできたのか?

 それは、今代の勇者最弱説が流布されていたからだ。

 だから、こいつらは弱いと踏んで挑んできたってことだ。


 だって、毎日数回担架で救護所に運ばれるものだから、弱いと思われたのも仕方ないかも。


 後で知るのだが、故意に流布されたのもあるらしい。


 まあ、どうでもいいけどね。

 こっちは、やる事をやるだけ。


 それからオレは、またしても修練という過酷な訓練をした。

 夕方まで続き、ぶっ倒れたところを救護所で癒しを受け、ある程度回復してから、公爵家(母の実家)にルーシーの案内で行った。




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