変身出来なくなったヒーローの憂鬱・長編版

@HasumiChouji

序章:Empire of the Sun

ヒメミコ

「なるほど……私が生きてた頃は……今の呼び方では『弥生時代後期』から『古墳時代出現期』と云う訳か」

 私は取り憑いた女の知識と持っていた道具から現在の状況を把握した。

『ちょ……ちょっと……体を返してよ‼』

「気が向いたら返す……。でも、折角、この世に戻れたんだ……当分は好きにさせてくれ」

 私を封印していたモノが何者かに盗まれて数日後。

 たまたま……私が眠っていた塚……今の言い方では「古墳」らしいが……にやって来た若い女の体を乗っ取って、この世に復活する事が出来た。

 しかし、世界は大きく変っていた。

「『対異能力犯罪広域警察機構』レコンキスタに『御当地ヒーロー』か……。今の時代……敵が多そうだな……」

 不思議な道具だ。

 何の呪力・霊力も感じないのに……ここまで便利な事が出来るとは……。

 この時代は……これが1人につき1つぐらい普及しているのか……。

『そうだよ。あんた程度の悪霊なんてすぐに……』

 その時、聞きなれぬ轟音。夜の闇を切り裂く鮮やかな閃光。

 近くを見た事もない乗り物が、とんでもない速さで、いくつも通り過ぎて行った。

「あれが……お前の知識の中に有る『暴走族』か?」

『へっ?』

「私が生きてた頃……この国には……まだ馬は、ほとんど居なくてな……。一度、大陸に居る『馬』と云う動物に乗ってみたいと思っていた」

『な……何を言ってるの?』

「だが、今の時代……馬より面白そうなモノが有るようだな。我が下僕達よ……あの連中に取り憑くがいい」

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