49話。神域の一撃

「ほう、おもしろい。では、剣聖を超えし、余の秘剣を見せてやろう」


 シュナイゼルも腰を落として、ボクたちは鏡合わせのように同じ構えを取る。

 膨れ上がる闘気がぶつかり合い、王座の間を震わせた。


「エリザ! スキルを使わせてもらうぞ!」


「はっ! ルカ様、ご存分に!」


 エリザのスキル【巨人の力(タイタンパワー)】を共有、発動する。

 筋力の能力値を10秒だけ10倍アップするスキルだ。


『ルカ様、わたくしもお力添えしますわ!』


 さらにアンジェラのスキル【魔法ブーストA】を共有、発動。【筋力強化(ストレンクス・ブースト)】のバフ魔法を自分にかけて、筋力を限界以上まで引き上げる。


「……つうっ!」


 無茶な筋力強化のため、全身のあちこちの筋繊維が破断し、骨が軋む。スキルと魔法のありえない重ねがけの代償は、想像以上だった。


 だが、ボクのスキル【コピー復元】は、それらのダメージを瞬時に回復した。


「ほう、なるほど。すさまじい力だ」


 シュナイゼルが賞賛の吐息を漏らす。

 瞬間的に、ヤツ以上の能力値を得れば、必ず競り勝てる。それがボクの狙いだった。


「これで筋力はお前を超えたハズだ!」


 激痛の中、ボクは自分を奮い立たせる。この一撃が通用しなければ、もはや打つ手はない。

 この一撃にすべてを込めて、ヤツを倒す。


「そうだ。それでこそ、倒しがいがあるというものだ……!」


 シュナイゼルも覇気をみなぎらせる。

 ボクたちは、踏み込むや剣閃を同時に放った。


「変移抜刀【二天刃】!(へんいばっとう、にてんじん)」


 斬撃を複製した!? 一瞬、息を呑む。

 シュナイゼルが繰り出した【天破雷神閃】がふたつに分裂した。


 刃のひとつはボクの首を。もうひとつは、ボクの弱点である呪いの腕輪めがけて疾走する。


 シュナイゼルのスキル【複製】を攻撃に応用した、まさに超絶の絶技だった。


 永遠にも引き伸ばされる刹那の瞬間。それは起きた。


『私の力もお使いください!』


=========


イルティアのスキル【光翼(シャイニング・フェザー)】を共有します。


同スキルは、すでに保有していたため、統合、進化しました。


 スキル効果が、全能力値6倍アップにパワーアップ!


=========


 ボクの剣は光となって加速した。


「ぉおおおおっ!」


 師匠から、いや父さんから受け継いだ【天破雷神閃】をシュナイゼルに叩き込む。


 王座の間を衝撃派が突き抜け、支柱が弾け飛び、床が裂けた。


 シュナイゼルの秘剣は、ボクに届かなかった。ヤツは、仰向けに地面に倒れた。

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