「私のために死ねるなら幸せよね!」と勇者姫の捨て駒にされたボクはお前の奴隷じゃねえんだよ!と変身スキルで反逆します!〜あれ?いつの間にか助けた5億人の美少女に溺愛されて神と崇められてしまっているのだが
34話。いつの間にかボクの信者が増えているのだか?
34話。いつの間にかボクの信者が増えているのだか?
「ええっ! 嘘っ、なんて美しいお方……!?」
「どこからやってきの!? あなたのような美少年が生まれた土地って、どこからしら!?」
神官の一団と思わしきお姉さんたちが、ボクを見て歓声を上げた。
「えっと……王都?」
荒くれ者に取り囲まれたボクは、とっさに答える。ボクの出身はオーダンだが、この土地の者は移住の自由を禁止されているし、イルティアは王都出身だ。
「けっ! 顔がいいからって調子に乗ってんじゃねぇぞ、Fランク冒険者風情が!?」
「兄貴の言う通りだぜ。俺たちはCランク冒険者だぞ? 先輩を敬えやコラ!」
ルカ姫様親衛隊と名乗る男たちが、威圧してくる。
「それに王都だと? んな中央の遠いとこから、わざわざ来るってことは怪しいな。てめぇ、国王派の間諜(スパイ)かなんかじゃねぇか?」
「……それは言いがかりだ!」
オーダンは現在、間諜や工作員の侵入を防ぐために、各城門に聖騎士団を配置し、厳しい警備体制を敷いていた。
ミリアが通行証を持っているため、ボクたちはフリーパスのハズだが。変な難癖をつけられて、足止めを食うはめになったら、たまらない。
「な、なんですって、無礼者! このお方をどなたと心得るの!? 女神様より聖剣を賜りし勇者ル……!」
ミリアがプッツン切れて言い返そうになったので、仰天して彼女の口を手で押さえる。
「だめでしょ。ボクたちは、お忍びで来ているんだから……!」
「そ、そうでしたね。今日はお姉様とお忍びデート」
「それも違う……!」
「なにをゴチャゴチャ言ってやがるんだ? 女連れで旅とは良いご身分だな、キレイな兄ちゃんよ!?」
小声でささやき合うボクらの態度が、火に油を注いでしまったようだ。
「おい、詫びを入れるなら今のうちだぜ? まずは『ルカ姫様は愛と正義のために立ち上がった天使です! ルカ姫様のために命がけで戦うこと誓います!』って言ってみろや、コラ!?」
「な、なんだ、その恥ずかしいセリフは!? そんなこと絶対に言えるか……!?」
ボクは仰け反りながら、全力で拒否した。
「はい! ルカ姫様は愛と正義のために立ち上がった天使です! ルカ姫様のために命がけで戦うこと誓います!」
「おっ、こっちの嬢ちゃんは話のわかるヤツみてぇだな」
ミリアが手を挙げ、嬉々として宣言する。
ちょっと、何やってんの……?
「だが兄ちゃんよ。テメェはもうおしまいだ。テメェは俺たちを怒らせた。こともあろうに俺たちルカ姫様親衛隊の神聖なる忠誠の誓いを恥ずかしい? 絶対に言えるかだと……?」
ボクの目の前の大男が、怒りで全身をプルプルと震わせている。他の連中もそれに同意したようにウンウンと頷いていた。
「ごめん、バカした訳じゃなくて。ありがたい話ではあるんだけど……」
「うるせぇ! とりあえず地面に這いつくばっておけや、Fランク野郎!」
鉄拳がボクに向かって放たれる。
神官のお姉さんたちが悲鳴を上げた。
「……がっ!?」
ボクは反射的に、拳を弾く。
すると男は巨人に殴られたような勢いですっ飛んで地面を転がった。
「あっ、悪い……」
急激にパワーアップしたせいで、力加減がよくわかっていなかった。
ボクは慌てて追いかけて行って、男に【全快(キュアオール)】かけてやる。男は目を回して気絶していたが、傷はすべて癒えた。
その一連の様子を、列に並んだ人たちはポカーンとした様子で見ていた。
「な、なんだ、今の……!?」
「怪力もすげぇが。あの傷を一瞬で癒やしちまった回復魔法は、大神官クラスだぞ……!?」
「まあ、まあ、まあ! すごいわ坊や! 美しいだけじゃなくて、力も魔法も超一流だなんて!? もしかして高名な聖騎士様!?」
「何、揉め事を起こしていますの!?」
その時、馬に乗った美貌の少女騎士が声を張り上げてやってきた。数人のこれまた見目麗しい女騎士たちを従えている。
「わたくしはルカ聖騎士団一番隊隊長アンジェラ! ルカ王女殿下より、この南門の警備と治安維持を仰せつかった王女殿下のもっとも信頼厚き配下! ここでの乱暴狼藉は、わたくしが許しませんわよ!?」
ミリアが駆け寄ってきて、ボクにそっと耳打ちをした。
「もっとも信頼厚き配下って、本当ですか……? でしたら、ここは穏便に」
「……いや。ボクがもっとも信頼しているのはエリザだけど?」
聖騎士団の少女たちの顔と名前は、ここ数日で、なるべく覚えるように努力していた。特に隊長クラスの者は、食事を共にするなどして親睦を深めていた。
アンジェラは、金髪縦ロールの髪型が特徴の貴族娘だ。住む世界が違う人間であるため、やや取っ付きにくい相手だった。
「そこのふたり、何をヒソヒソやっておりますの!? わたくしは無視されるのが、この世で一番キライなんですのよ……! って、あなた様は!?」
アンジェラはボクを凝視して、口をあんぐりと開けた。
……まずい、さすがにバレたか?
「な、なんて、キレイなお方……! はうっ! こ、これはわたくしが直々に取り調べをしなくてはなりませんわね!」
「はあっ!?」
アンジェラは相当ダメな娘だった。
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