30話。美少女の領主様と姉妹の契りを結ぶ
「フィアンセ! 結婚! ひゃっー、うれしい! 私はルカお姉様のお嫁さん!」
ミリアは大興奮して、手をブンブン振った。
「いや、あの、はい……?」
ボクは急展開に頭が追いついていかない。
なぜ、結婚なんて話が出てきているのだろう?
「お姉様も私のことは遠慮なくミリアと呼んで、人前では妹として、プライベートでは運命共同体の妻として接してください!」
「い、妹というのは、まだわかるのですが、妻ってなんですか!?」
「ルカお姉様も、たまには男性に戻りたくなるでしょう? 私の前では、遠慮なく男性の装いをしていただいてOKですよ。ほ、本当はキスもして欲しいのですが! ですが! 勇者の力を失ってしまうようなので……断腸の思いで、が、我慢します!」
ミリアは鼻息も荒く、ボクを見つめている。
「でも、それ以外のことは我慢しません! とりあえず『好きだよミリア。ボクがずっと守るよ』と耳元で囁いていただけませんか!? それから、それから! 憧れのお姫様抱っこもして欲しいです!」
「いや、待って! ストップ!」
ボクは慌てて彼女を押しとどめた。
「結婚が協力の条件だなんて、いくらなんでもムチャクチャです! ミリア様のお気持ちはうれしいのですがっ! ボクは今、完全に女性ですし……
恋文をいただいただけで、まだお互いのことをまったく知りもしない段階ですよ?」
「女の子同士というのは、まったく問題じゃありません! それに王侯貴族は相手の顔も知らないで婚約するのが当たり前です。婚約してから、ゆっくりお互いのことを知っていく……なにか問題ありますか?」
「ボ、ボクは、貴族ではないので……そのようなことを、おっしゃられても……!」
「ああっ! 王女であるお姉様の身体に、世界一愛しい人の魂が入っている……よく考えれば、これぞまさしく神の奇跡! 身分違いなんて気にせず、人前でいくらでもイチャイチャして良いってことじゃないですか!? 」
「……はっ!?」
呆気に取られる。
ミリアは今の事態を、そうとうポジティブに捉えているようだった。
もしボクとミリアが恋仲となるとしたら、最大の障害は身分だろう。
女の子同士の恋愛がタブーだとしても、平民と公爵という立場に比べたら、風当たりは無いに等しい。
男女では問題になること。例えば寝室を共にするといったことも、平気でできる。
と、そこまで考えて、ボクは妄想を打ち消すべく頭を振った。
「……わ、わかりました! ま、まずは、ミリア様はボクの義理の妹。ということで、どうでしょうか?」
このままだと押し切られてしまいそうなので、妥協案を出す。
さきほどミリアが、人前では妹として接して欲しいと言ったのを受けてのことだ。
「まずは、妹から……んーっ! わかりました! いきなり婚約というのは、お姉様の常識からしてありえないようですし。最初は姉妹という立場から、お互いのことをゆっくり知っていきましょう。
それじゃあ、ルカお姉様。今から、私に対して敬語は一切、なしですよ!」
「はい! じゃなかった……わ、わかった、ミリア」
大迫力でお願いされて、ボクは思わず首を縦に振ってしまった。
「お、お姉様! それじゃ『好きだよミリア。ボクがずっと守るよ』って、私を抱きしめながら言っていただけますか!?
オーダンが陥落したら、ルカお姉様も死んでしまうのですし。姉として当然のセリフですよね!」
「……姉として当然?」
どこが? もろにプロポーズのセリフじゃないか。
勢いに任せて、なんてこと言わせようとするんだ、この娘は!?
「さっ、お姉様! ギュッとしてください!」
ミリアの意図は明白だが……
国王に勝利するためにも、彼女とは信頼関係を結ぶ必要がある。
ここは変に意識せず、妹として好きだという意味だと考えれば、だ、大丈夫だ。
ミリアを見つめると、彼女は情熱に潤んだ瞳でボクを見つめ返した。
か、かわいいと思う。
心臓がこれ以上ないほど、早鐘を打つ。
ええい、ままよ!
ボクはミリアを抱き寄せ「好きだよミリア。ボクがずっと守るよ」と囁いた。
すると彼女は、鼻血を吹いて気絶してしまった。
究極の聖剣。現在の攻撃力21069
(ミリアから強く愛されたことでパワーアップ)
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