第47話 再度の叙爵
「はあ? なぜ私がノバル領の領主に?」
そんな無茶をすればまた、無用な軋轢を生むぞ。特に地方豪族の力が増し、門閥貴族との利権衝突し、小競り合いは各地で起こっているのだし。
「無論、領民がそれを望んだからだ。断るか? 余は構わんぞ。お前が断ればあの地は再度、門閥貴族どもの統治下に入る」
「マクバーン辺境伯やハルトヴィヒ伯爵はどうです? あの御二方なら、間違いなく善政を敷いてくれるでしょう?」
「既に頼んでいるさ。だが、現在、大幅に増えた己の領地の経営で一杯一杯だそうだ」
あのアンデッド襲撃事件により、両伯は死亡した地方豪族の領地を受け継いだ。だが、現在、すこぶる調子がよいと聞く。おそらく、理由は外にある。
「なぜ貴方はいつも私にクソかションベンのようなろくでもない選択をさせようとするのです?」
「うむ、クソとションベンか。中々いい例えだ」
妙なところで感心をする皇帝にゴホンッとエル宰相が咳払いにより戒める。
「なぜ、お前を領主にさせたいかだったな。もちろん、我ら政府が楽したいからだ」
ガハハッと快活に笑うこの〇び太皇帝を海に沈めたくなった。
「あのですね。それって理由になりますかね?」
憤りを無理やり押さえつけ尋ねるが、
「なるさ。人材を適切に割り当てる。元来、それが統治者の最も重要な仕事だしな」
まったく、〇び太め、どうしてこうも屁理屈だけは上手いのか。
「わかりました。わかりましたよ。では、ラドル領と同様、契約関係はしっかりしていただきます」
「もちろんだとも」
まあ、ノバル領は鉱山が豊富な土地。あそこには私達がまだ涎が出るようなレアメタルが多数埋まっている。かえってよかったかもな。
「それでは私はこれで」
もうここには用はない。踵を返そうとすると、
「そうだそうだ、グレイ、ノバル領を手に入れたことで、お前、陞爵して伯爵となったから、そこのところよろしく」
「はあ? ちょっと待ってください」
私は爵位というシステム自体否定派だ。それがこれ以上陞爵しては立つ瀬がない。
「ノバル領は、元来から伯爵領なのだ。受け入れた時点でお前の伯爵への陞爵は確定した」
もっともらしい理屈をこねているが、これも理由は外にあるな。
「本当にそれだけでしょうかね?」
「お前に隠し事などあるはずがないさ」
どこの口が言いやがる。この嘘つきめ。
「それにはとても賛同しきれませんが、どうせ拒否できないんでしょうし、頂いておきますよ」
「グレイ、やはり人間素直が一番だぞ。それ以上ヒネた性格になってどうするよ?」
だから、それをお前がいうなって!
何とも言えぬ憤りを覚えつつも、私は皇居を後にする。
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