第2話 ポートレート
自分の横顔が写った写真を見て、またあの子のことを思い出していた。光の加減で曖昧になった自分の形があの子のそれに少しだけ似ていたから。私たちは驚くほどよく似ていた。まずは名前、思考回路に病気、果ては姿形まで似てきたらしい。私たちは一つの魂が分裂してできた存在に違いないと思った。私たちはお互いに自己愛をぶつけ合うような愛し方しかできないところもそっくりだった。私たちの愛はいつも同一化の愛。元来性を持たない私たちが、意図せず異なる性であるとされる肉体に生まれたことも、同一化の動きを要求しているように感じられた。しかし、どうにも暴力的な私たちは、どちらかがどちらかを吸収する形でしか一つにはなれないらしい。
私は/私たちはいつも愛についての解を求めているね。もう何年も会っていない、もう何年も連絡すら取っていない、噂すら聞かない。運命が食い違ったふりをして、自ら会わないことを選択しているね。し続けているね。ね。もうすでに、私の中のお前が正しい記憶のお前であるのか、それとも私が練って作ったお前のひとがたであるのかも分からないけれど、ただ私たちが、私たちの蜜月期に「私たちはとても似ているね」と何度も言い合ったから、だからこれは永遠に消えることのない呪いの類義のお約束。これが私の信仰対象。私の/私たちの人生における、一つの確かな愛であったと信じている。
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