★8R》対話と虚偽
ここはシェルズ城の二階にある、クレイ・マルスのために用意された部屋。
あれからクレイはニックに連れられ、この部屋にきていた。
クレイとニックはソファに座り話をしている。
「……なるほどな。この世界をおびやかす連中が現れたさかい、俺を召喚したってわけか」
そう言いクレイは、真剣な面持ちでニックをみていた。
「はい。この件に関しましてはクレイ様に、我が配下の者と、その悪の元凶をつきとめ倒していただきたいのです」
ニックはそう言い深々と頭を下げた。
だがこの時ニックはクレイに嘘を教えていた。
クレイは、ニックからその事を聞くと、テーブルの一点をみつめ考えていた。
(悪い奴らか。どうも話が曖昧な気ぃする。せやけど現に、俺はこの世界に召喚された。それに、なんかあるさかい召喚されたんやろうし。
まさか、龍騎が異世界に召喚された時みたいに、無意味な召喚ってことはあらへんよな?
……もう少し様子をみるか)
「……事情は分かった。俺の力がこの世界のために、どこまで役に立つか分からへん。せやけど悪い奴らを、このまま野放しにておくわけにもいかへんしな」
クレイは、この世界の状況を知るため、協力することにした。
「クレイ様。ありがとうございます。それでは配下の者たちを紹介したいと思いますので、しばしここでお待ちください」
ニックはそう言い立ち上がった。
「ああ、分かった。……それとニック。俺を呼ぶ時は、呼び捨てで構わへん。どうも『様』をつけられると落ちつかへんしな」
「承知いたしました。……ではクレイ。連れて参りますので、失礼いたします」
(クレイか……。まぁいい。異世界の勇者だとて、この者は、どうせ捨て駒の1人にすぎんしな。
……この計画を成功させるためだ!その時のために今は好きにさせておこう。……)
ニックはクレイに会釈をすると部屋を後にした。
そして、クレイはそれを確認すると、色々と思考を巡らせていた。
(城の地下での召喚か。シュウ達が異世界に召喚された場所といっしょやな。せやけどまさか、同じ世界に召喚ってことはあらへんよなぁ。流石に……)
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