☆2R》辺境の地

 ここは秘境の祭壇から北西に進み、数キロの位置にある辺境の地と言われている場所。


 タツキとグロウディスは歩きながら話をしている。


「おい! グロウディス。この土地はいつからこんなに荒れているんだ?」


 タツキは辺りを見渡しながらそう言った。


「さあな。俺の知る限りでは、元からこうだった。だがタツキ。やはりおまえは……」


「ああ、グロウディス。確かに、おまえが思っている通りだ。ただ、二百年前の俺とは違う。中身は同じだけどな」


「それはどういう事だ?」


「グロウディス。恐らく説明しても。理解できねぇと思う。あまりにもあり得な過ぎてな」


「なるほど、まぁいい。ただ、これだけは聞いておきたい。さっきも聞いたが。おまえのその名前は、本当の名なのか?」


 そう聞かれ、タツキは下を向き、どう答えたらいいか考えている。


「……ああ、この体では本当の名前だ。だが、なんて説明すれば」


「この体? それはどういう事だ! 他に、別の体が存在するというのか」


「そうなる。だが……」


「異世界の者は、皆そうなのか?」


「どうなんだろうな。ただ言えるのは、二百年前の俺と今の俺とじゃ。中身は同じでも体と能力が違うって事だけだ」


「なるほどな。そうなるとおまえは、リュウキ、シュウ、クレイ・ディオンのうちの、誰なんだ?」


「……悪いグロウディス。今はその事について、明かさねぇほうがいい」


「なぜ言えない?」


「いや、この件が片づいたら話す。それに神々の塔に行き、女神に会って確認してからのほうがいいだろうからな」


「そうか。自分の過去の名前を出し、下手に動けば、神の怒りに触れるかもしれんというわけか」


「ああ、それもある。だが、それだけじゃねぇ。なんで昔とは違う体で、また召喚されたのか。それも他のヤツよりも先にな」


 タツキは元きた道を振り返り、秘境の祭壇があるほうへと視線を向けた。


「それも正規じゃねぇ、あの祭壇でだ!」


「俺には、良く分からんが。……少し気になった事がある」


 そう言うとタツキをみる。


「仮に正規の祭壇で、最初に異世界の者を召喚してたとして。タツキ、俺はおまえを召喚していたか?」


「いや、それはないだろう。正規の祭壇で、召喚される者は、選ばれた者のみのはずだ」


「そうなると、正規ではない秘境の祭壇で、召喚されたおまえはどうなる?」


「さあな。だからそれも踏まえ、神々の塔に行き、女神にいろいろと聞かなきゃならない」


 そうこうしながら歩いていると、寂れた村が見えてきた。


 タツキはその村を見て驚く。


「まさか!? ヒスイ村なのか?」


「ああ、そうらしい。だが、昨日あの村に立ち寄った時には、誰も住んでいなかった」


「そうか。ここで何があったのか分からねぇが。ここまで変わり果ててるとはな」


「タツキ。二百年前、この辺はどうだったんだ?」


「そうだな……。その事について話しても、問題ないだろう。その事についてはあの村で話そう」


 タツキがそう言うとグロウディスはうなずく。


 そしてタツキとグロウディスは、ヒスイ村へと向かった。

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