亡き相棒の告白

つばさ

相棒が消えた日

僕は亡き相棒との会話を思い出す。

「なあ相棒?」

「なんだよ」

「お前、なんで歌い手やめたんだ?」

「決まってるじゃないか、歌が嫌いになったんだよ。頼むから二度と言わせないでくれ」

「何かの間違いだろ、あんなにステージで楽しそうに歌ってたお前が...」

「うるさい!」


突如あいつは怒鳴り声をあげた。僕はそれでも信じられなかった。歌が大好きだったあいつの口からあんな言葉が出るなんて。



これは、20歳の夏の出来事。相棒はそれからは一度もステージに立たなかった。そしてそれは尾を引いて他の出来事にも影響を与えていった。


遅刻が増え、大学の午前中の講義に姿を見せなくなっていた。僕は心配だったが、やれることなんてたかが知れてると自ら決めつけ、そのまま時は過ぎていった。



その半年後、雪の降る夜に僕の目の前からは一切の色が消え去った。相棒が死んだのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る