第13話 合宿一日目
翌朝。
眠い目を擦りながら起床した俺は、朝食を食べたりして、身支度を済ませて、家を出た。今日もいつもと変わらず朝早くから。
合宿が故に、いろんな荷物が入っているカバンは、重いけど苦痛ではない。
合宿は学校内で行う。ゴールデンウィークなので、2泊3日だ。
学校で合宿なんだったら、わざわざ寝泊まりしなくてもと思ったが、
チームメイト同士でコミニュケーションを取るのも目的の一つだ、と監督が言っていた。
だが、そもそもこの合宿をしっかり乗り切れないと、夏は5泊6日の合宿があると聞いているし、ついていけなくなるだろう。
頑張らないといけない。
ちなみに、合宿のことを母さんに言うと、いいなぁー、と羨ましがっていた。
だが、たまには違う場所で練習をしたいなと思ったりする。
まあ、合宿ができるだけでもありがたいか。
俺は中学校の頃のことを思い返す。
あの頃は本当に周りのやる気がなかった。
うっかりすると俺までだらけそうになる。
そんな部に合宿があるはずもなく……。
でも、唯一顧問の先生が良い人で本当によかった。
なんとか手を回してもらって、体育館で練習させてもらえたことも多々あった。
そのことは本当に感謝しかない。
先生、元気にしてるかな……。
そんなことを考えながら、少し急ぎ足で学校に向かう。
***
学校につき、ひとまず体育館に行く。
寝泊まりは学校内の合宿棟で。
和室を備えていて、風呂などもあるかなり大きい施設だ。
しかし夏合宿では、どこかの他県の宿なんかに寝泊まりしながら合宿らしいので、夏が楽しみすぎて仕方ない。
まだちょっと気が早い気もするが。
とりあえず部室に荷物を置いて、先輩たちに挨拶をして、少しの間だけシューティングをする。
30分ぐらいが経過して、監督がやってきた。
「集合!!」
河田主将が、いつもより一段と大きい気迫のこもった声で集合の指示を出す。
ああ、始まったなと河田主将の声から感じる。
監督から、合宿のスケジュールや注意事項の話がされた。
さあ、いよいよ合宿開始だ!!!!
***
まずは学校の周りにある、外周コースを走る。
1周が1kmくらい。
それを5周。
その5周の中で、本気のダッシュとスローペースを交互に続けるというかなりきついメニューだ。
終わると、みんな息を切らしている。
俺も肺が悲鳴を上げていて、さらに足が痛い。
だが合宿はまだ始まったばかり。
次に、近所にある坂を利用した坂道ダッシュ。
これもとてもキツい。
この坂、意外と距離が長いのだ。
この長い坂を、何往復も何往復もダッシュ。
時々、自分を奮い立たせてやらないと、足が止まりそうだ。
メニューが終わると、外周を走り切った後以上に足が痛くなってきた。
ヤベェ、合宿乗り切れるかな……。
って言うか俺こんなんだと、夏はリタイアしてしまうかもしれない。
この合宿で、しっかり体力をつけるんだ……!
必死に走った後は、体育館に入って練習だ。
体育館ではいつもの練習を、じっくりと時間をかけて行っていく。
1日目は特に基礎的な練習でメニューが組まれている。
時間をかける分、負荷もよりかかる。
基礎的な要素だからこそ、たくさん足も動かす。
足を酷使して疲れてくる分、気持ちを保つために声を出してチームを盛り上げる。
3時間ほど練習して、お昼の時間になった。
川島高校には、購買と食堂がある。
両方とも今日から3日間、合宿のために特別に開けてくれている。
当たり前だが、休日はいつも閉まっているから、とてもありがたい。
ただし、夜は流石に開いていない。
夕飯はどうするんだろう。何も聞いていない……。
どっちにするか一瞬迷って、食堂に決める。
食堂に着くと、サッカー部と、バレー部、野球部も同じ日程で校内合宿を行っている関係上、かなり混んでいた。
しかし、混んでいる状態でも、余裕で椅子を確保できるくらい広い。
なんせ収容人数は約500人。生徒数はおよそ1000人なので、全校生徒の半分が食堂に押しかけてもなんとか座れるということだ。
川島高校の食堂は、校舎の管理棟と呼ばれる、職員室や特別教室のある校舎の5階にある。
5階のフロアをほぼ丸々使っているので、500人という大人数を収容することを可能としている。
しかも、安価でとても美味しい。
なので、食堂はかなり人気だ。
とは言っても、俺はいつも弁当なので、何気に食堂を使うのは初めてだったりする。
楽しみだ。
武田はじめ数人の部員は、通常の授業日と同様、カレーパンを求めて購買へ走っていった。
購買も食堂と同じフロアにある。食堂が5階の9割の面積を使い、購買が残りのスペースを使っている感じだ。
俺たちのために特別に開けていてくれる購買や食堂のおばちゃんたちに大感謝だ。料理を受け取るときにしっかりお礼を言った。
おばちゃんがすごくニコニコしているので、こっちまで笑顔になった。
なんか疲れが飛んでいった気がする。
おばちゃんスゲー!!
同じく食堂に来た植原先輩や、筒井先輩と昼食を楽しむ。
雑談がすごく楽しかった。
ちなみに俺は鯖の味噌煮定食をチョイスした。とても美味かった。
もうこれから昼ごはん食堂で食べようかな……。
あったかいし安いし美味いし。
***
束の間の休息を終え、再び練習に戻る。
再び自分を追い込んでいく。
シャトルラン、コート外周、フットワーク……。
食べた鯖が胃から逆走してくる。
必死で耐えながら、走り込む。
走る、走る、走る!!
そして、3メンなどボールを使いながらの練習も行う。
ただひたすらに追い込む。
途中でハンドリングの練習も交えながら、ただただ走る。
そして1日目の全ての練習メニューが終わった。
最後走り切った瞬間。
「「「「やったー!!!!!!」」」」
まだ初日でこの喜びよう。
だけど、とてつもない達成感がある。
汗でシャツはピットリと張り付いて、体は不快感でいっぱいだが、気持ちは爽快感でいっぱいだ。
「終わったな伊織!」
武田が話しかけてくる。
……あれ?今日しっかり会話するの初じゃね?
「武田?まだ初日だぞ?」
「ぬあ?」
「まだ全行程の三分の一をこなしたに過ぎない」
「なんだってー?!」
「だいじょーぶ、残りは実戦練習とか、ボールを使った練習だから。流石に今日みたいには追い込まないよ。まあ、ランニングはあるけどね」
そう説明してきたのは植原先輩。
今日の昼食で、「炭酸飲料の好み」で意気投合して、気軽に話せるようになった。
タメ語でってことじゃないよ?
「マジですか」
「おう、心配無用!」
「よかった〜」
隣で武田がホッとしている。
そんなに今日キツかったんだな。俺もキツかったけど。
部室に戻って、荷物を取って合宿棟に向かう。
荷物を置いて、入浴の準備。
「メシの前に先に風呂だ、汗だくだからな!!」
河田主将はそう言ってガハハと笑った。
***
シャワーでしっかり汗を流し、ふざけ合いながら湯船に浸かった後は、合宿所の中にある会議室でミーティング。今日の練習を振り返る。
それが終われば……、
「メシだ!!」
「「「わー!!!」」」
みんな盛り上がる。
ちょっと異常なほどに。
夕食を食べるために校門を出て、着いたのは近くの焼肉屋。チェーン店ではないが、結構大きい店だ。
てっきり自炊させられるのかと思ったから、かなり嬉しい。
何年も前の先輩たちがお願いしてくれたおかげで、合宿のたびに夕食を提供してくれているそうだ。
本当に、いろんな人が支えてくれているんだなと実感する。
「食べることも大事だから、たくさん食うように!!」
監督の言葉だ。
「よっしゃぁ!」
隣に座っている武田がガッツポーズをしている。
俺たち一年は半分に分かれてテーブルについた。
俺は武田と、小山と、佐々木、渡辺、石田、田中に小林といったメンバーだ。
実は仮入部初日の試合でのチームと同じメンバーだ。
「「「いただきます!」」」
挨拶をして、肉や野菜を焼き始める。
武田がすごい勢いで肉を食べていく。
全然焼いてくれない。食べてばっかりだ。
「武田!お前もはたらけ!!」
「いやいや伊織、俺は食べる専門なの」
「知るか!!ほらっ、トング持てっ」
「えー、やだー」
「この肉うめぇ!!」
「佐々木、とうもろこし美味いぞ!!」
「マジか!」
「ビールが欲しくなるなー」
「おいこら武田?!」
「誰だビールとかいったやつ?『た』から始まるやつの声だったと思うぞー」
「か、監督?!ち、違います!ちょ、ちょっとふざけただけで……」
「バレてんぞ武田ー!」
みんなで盛り上がりながら、腹がはち切れそうなほど食べた。
本当に美味しいお肉だった。
「「「ごちそうさまでしたっ!」」」
食後もしっかり挨拶をして、店を出るときもしっかりと挨拶をする。
「ありがとうございました!」
合宿所に戻る。
玄関で一旦監督の集合がかかった。
「明日は朝六時三十分おきだからなー。寝坊すんなよ。あと、朝ごはんは自分たちで作ってもらうぞ。材料はマネージャーが買ってきてくれてるしな。よろしく頼むぞ」
え?!マジで?!
俺、料理できないぞ……?!
____________________________________
読んでくださりありがとうございます。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます