第45話 襲撃

 土曜日の早朝。

 まだ、6時前のため人通りは少ない。


 かおりは、時々スマホを見ながら住宅地を歩いていた。


「この辺なんだけどなぁ・・・」


 キョロキョロとあたりをうかがいながら目的地を探していた。



 やがて、あるアパートの前で足を止めた。


 ちょっと古めの建物。


「え・・・・まさか・・・ここ・・・??」


 首をひねる。



 そのアパートは、ワンルームではなく家族連れが住むようなアパート。

 一人暮らしには、広すぎる。


「まさか・・・英ちゃんって家族と住んでるの?」


 しかしながら、普段はかおりの家で、祖母の澄子の夕食を食べることが多い。

 とても、家族と暮らしているとは思っていなかった。


「まさか・・・英ちゃんって、実は結婚してたりとか・・・」


 だんだんと悪い予感がしてくる。



 郵便ポストに書かれている名前を調べていく。


 204号室 澤木


 その文字を見つける。


 やはり、英一はここに住んでいるらしい。



 かおりは、建物をぐるっとまわって、ベランダが見える裏手に回った。


 204号室は・・・あの辺だろうか?


「うわ・・・マジ・・・?」


 窓はカーテンが閉まっていて、中は見えない。


 が・・・そのカーテンは・・・ピンク色だった。

 そても、独身男性が選ぶとは思えない。



「えぇ・・・」


 さすがのかおりも、この状況は想像していなかった。

 一人暮らしの英一の部屋に上がり込むことしか想定していなかった。


「英ちゃん・・・一体・・・誰と暮らしているんだろ・・・」




 その後、かおりはその建物の周りをぐるぐると歩き回ったり、電柱の陰からベランダを偵察したり・・・


 そんなことをしているうちに、1時間30分ほど経過した。



 カーテンが開くこともなく、誰かが出てくる気配もない。



「どうしよう・・・・」


 考えて・・・悩んで・・・


 そして、覚悟を決めた。


「じ~っとしていても始まらないしね・・・」




 かおりは204号室の扉の前に立った。



 そして・・・目をつぶって・・・呼び鈴のボタンを・・・・押した。


”お願いだから、女の人が出てこないで・・・!!”

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