第38話 何が出るかな?



「第3魔法『土』【バレット】ッ」


 しーん...


「第4魔法『風』んーと、【ウインド】ッ」


 しーん...


 えーと、僕は今、太陽が沈みかけてる中、他の魔法が使えるか実験中です。

 自分の身を守る為に出来る事を探そうと思って。


 ちなみに今いる場所は街道の途中にある森なんだ。

 そこで野宿をする事になって、休憩中なんだけどアビゲイルさんに頼んでいろいろ試してたんだ。


「第5魔法『無』え~と?【身体強化】?」


 しーん...


 ぶっちゃけ第5魔法はイメージが湧かないから無理だと思ってたけど。


(チキショー、ファンタジーの夢が1つ失われた。

 魔法を極めて究極な魔法が使いたかったのにぃ。

 颯爽と現れる偉大な魔法使いに憧れてたのにぃー!)


 チーン。


 僕は四つん這いになって地面を叩いた。泣きながら。


「ユ、ユウ?そんなに落ち込むな?ほ、ホラ、お前の第7魔法は美しい光ではないか!それにユウしか使えない奇跡のような魔法なんだぞ!?」


(そ、そうだったね!僕には使える魔法が1つあるんだった)


「ありがとう、あ、アビー。僕しか使えない魔法なんだよね!僕しか出来ない事もあるよねッ‼落ち込んでなんかいられないよねッ‼」


 僕は立て直した。

 そうだ、魔法だけじゃない。

 僕にも神から授かると言われる『スキル』があるかもしれないんだった!


「アビー?『スキル』ってどうするの?」


「『スキル』は自身が得意とするモノがキッカケとなる。そしてふとした時に感じるんだ。それが頭にイメージとして結びつき、形と成す」


「ッ!?」


(な、なんだって!?

 自身が得意とするモノッ!?)


 僕は倒れるように地に膝をつき、四つん這いの恰好になって地面を叩いた。

 そして絶望した。


「ど、どうしたんだユウ!?スキルが無くても生きてはいけるんだぞッ!?」


(チキショー、またファンタジーの夢が1つ失われた。

 あのゲームみたいにスキルマスターになりたかったのにぃ。

 颯爽と現れる偉大な冒険者になろうと思ってたのにぃー)


 チーン。


「ユ、ユウ?スキルは得意であれば、いずれ覚えられるかもしれないんだぞ?」


「...僕の得意なモノは、料理とお菓子作りです。あと洗濯」


 そう、僕は家庭的なスキルしか覚えれない気がする。

(そんなんで誰を救えるんだ、ちくしょうめっ)


「う、む。そ、うか。、な」


「それ1番聞きたくなかったぁー!うぅ」


(ファンタジーな世界に来てまで誰かの嫁とかなりたくないよッ‼

 そもそも僕は男だから...その...嫌だ。)

 考えたら何か恥ずかしくなってきた。


「そ、そうだな!ユウに釣り合う男なんていないからな!」


(それは僕に魅力が無いという事?

 それはそれで、なんか悔しいな。

 あれ?そうでもないのかな?)


「と、とりあえず諦めるな!練習すれば得意になるかもしれんぞッ‼」


「は、はいッ‼頑張りますッ‼」


(分かんないけどとりあえず頑張ろう。

 出来れば守るスキルがいいなぁ。

 攻撃のスキルは誰かを傷つけるから怖いし。

 魔物でも動物でも殺してしまうよりは守りたい、かなぁ。

 カインさんにでも聞いてみようかな。)

〈...ユウは...スキル使えるよ?...〉


「えッ!?本当ッ!?」


 突然発した僕の声がアビゲイルさんを驚かせたみたい。


「ど、どうしたユウ?もしかして、ルナか?」


 その質問に僕は首を縦に振ってルナに聞いてみた。


(ルナ?僕はスキルとか何も感じないんだけど?)

〈...ユウは...寝てたから...分からないのかもね...〉


(もしかして1週間寝てた時に覚えたって事なのかな?)

〈...そう...レベルアップ?...したよ?...〉


(れ、レベルアップだって?現実なのにゲームみたいなのがあるんだ?)

〈...だから...スキルがされた...〉


(解放?とりあえず覚えたって事?)

〈...そう...スキル【月の瞳】...ってやつ...〉


(なにそれーッ‼超かっこいいんですけどッ!?)

〈...目に意識を集中して...スキルを言えば出来るから...〉


(ほ、ホントッ!?やっても大丈夫!?気を失ったりしない?)

〈...大丈夫...ルナは出来る子だから...〉


(ルナ先生、僕は先生と一緒で良かったです。うぅ)

〈...それはなにより...なんでこれくらいで...泣くの?...〉


(だってこのままじゃ家庭的なスキルしか覚えれないかもって、思って)

 

(あれ?先生?ルナ先生!?

 急にルナ先生の存在が感じなくなってしまった。

 どうしたんだろう?)

 

 僕が辺りを見回していたらアビゲイルさんと目が合った。


 「どうしたんだ?なにかあったのか?」


 アビゲイルさんは心配そうに聞いてくれた。

 さすがお姉ちゃん。

 とても優しい。


「えと、ルナ先生が僕には【月の瞳】というスキルがあるって言ってたんだけど急にいなくなって」


「そうか。とりあえずそのスキルを使ってみたらどうだ?私はそのスキル名は聞いたこと無いから何とも言えん。どんな効果か分からなければ意味が無いしな」


「そうですね。ではやってみましょう!」


 なんか、凄い楽しみ。

 大きな箱のプレゼントを貰ったみたい。

 それに中身が分からないドキドキ感がたまんない。

 

(目からビーム、とか?

 フッフッフッ。

 答えはなんだッ!?)


「スキル【月の瞳】ッ」


 僕は目に意識を集中させてスキルを使ってみた。



 結果、答えはの能力みたいでした。



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