第154話 悪目立ち変装と二重尾行

「な、何でタツミ先生が?」


 するとタツミ先生は私の姿を上から下まで見て、一言呟く。


「いや~見違えるほどだな。改めてお前が女だと理解出来たぞ、クリス」

「ちょっ、あんまりその名前を出さないで下さいよ!」


 私は小声でタツミ先生に言うと、「悪い悪い」と言って来た。

 まさか、タツミ先生とは……そこは予想してないよレオン。

 てか、何でタツミ先生なのよレオン!

 私は頭の中でレオンに強く訴えていると、タツミ先生が声を掛けて来た。


「と言うかクリスお前、俺に声掛けれてて直ぐにデート相手だと思ったろ?」

「え? そうじゃないんですか?」

「違えーよ。お前、俺は教員だぞ。教員が生徒くらいの年齢の奴とデートすると思うか?」

「いや、先生ならあり得るかと」

「お前な……はぁ~まあいい。俺は伝言役だ。たっく、最近そんな役回りばっかで困る」

「伝言役?」


 するとタツミ先生は、私の横に立って軽くため息をついた。


「クリス、前にも言ったがお前の事情に首を突っ込む気はない。だから、俺はデート相手でじゃなく、お前の相手をしてくれる所へと連れて行くだけだ」

「私の相手をしてくれる人って誰ですか?」

「それは付いてからのお楽しみだ」


 そう言って、タツミ先生は歩き出してしまう。

 私はモヤモヤしたままタツミ先生の後を追って行く。

 とりあえず、今日デートの相手をしてくれるのはタツミ先生じゃないという事は分かったけど、結局誰なのよ?

 私はタツミ先生の後を追いつつも、何度か質問し続けたが全て流すように答えられてしまい誰の所へと案内されているのか分からなかったのだ。

 そんな私とタツミ先生が歩く姿を物陰から見つめる1人の男がいた。


「あれがアリスさんの恋人? いや、雰囲気からして恋人ではないよな。ひとまず、追いかけるか」


 その男こそ、マリアから聞いていた告白して来たクレイス魔法学院の男子であった。

 服装は学院服ではなく、人混みにいても疑われない様に私服であった。

 その男がアリスとタツミ先生を追いかけて行く姿を、更に後方にて物陰から見つめる者たちがいた。


「おいおい、クリスの女の子の姿ってあんなに可愛いのかよルーク」

「うるさいと気付かれるぞ、トウマ」

「おいルーク、何でお前そんな平然としてるんだ? はっ、もしかしてお前、どこかでクリスのあの姿見てるな!」

「ほら、あの付けてる男も動き出したから行くぞトウマ」

「無視すんなよルーク、見たんだろ? 見たんだよな。そうじゃなきゃ、そんな普通の反応しないもんな。なぁ!」

「(何か面倒いぞ、今日のトウマは……はぁ~適当に聞き流すか。てか、反応するのはそこじゃなくてタツミの方だろうが。何であいつがアリスと一緒にいるんだよ)」


 そんなやり取りをしながらルークとトウマは、その男とアリスとタツミ先生の後を追って行った。



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 私はタツミ先生が全く問いかけに答えてくれないので、もう答えてくれないと観念してただ後ろを付いて行くとある広場前でタツミ先生が足を止めた。


「着いたぞ、クリス」

「え? 着いたって、どこにですか?」

「お前の彼氏役との待ち合わせ時間だよ。ほら、あそこにいる奴だよ」

「ど、どれですか?」


 その広場にも多くの人が行きかいしていたので、誰の事を指しているのか分からずキョロキョロしているとタツミ先生が特徴を口にし出した。


「髪をオールバックにして、サングラスをし、少しチャラついている服を来ているあいつだよ」

「……あっ。……あれですか? あの少しというか、物凄く悪目立ちしている」

「あぁ」


 タツミ先生はそれだけ言い、それ以上の事は言わずただじっとその方を見つめていた。

 私も黙ったままその人の方を見つめていると、向こうが私たちの視線に気付いたのか、こちらに気付き少し嬉しそうに軽く手を振って来た。


「あの~手振られてますけど?」

「そりゃ、お前にだろクリス」

「……タツミ先生、1つ聞いてもいいですか?」

「何だ?」

「あれ、オービン先輩ですよね」

「……」

「タツミ先生?」

「……本人に訊け」


 そう言ってタツミ先生は、軽く私の背中をして来て私は前へと一歩を踏み出してしまう。

 私はジト目でタツミ先生の方を見るが、タツミ先生は片手で早く行けと言うジェスチャーで返してきたので私は、ゆっくりと変な変装をして悪目立ちをしているオービンの元へと行くと先に声を掛けられる。


「やぁ、アリス君。待ちわびたよ今日を! さぁ、早速楽しいデートに行こうか!」

「あ、あの~」

「ん? どうしたのかな?」

「オービン先輩です、よね? な、何してるんですか」

「あれ? もう分かっちゃった? 結構変装してバレない様にしたんだけど」

「どこがですか! 変装と言うか、ただ悪目立ちする様にしているとしか思えませんよ。とりあえず、その似合わな過ぎるサングラス外してもらえます?」

「え、そんなに? 結構良い感じとか言われたけど」

「誰にですか?」

「お店の店員さんだよ」


 オービンは渋々そう言いながらサングラスを外した。

 私は持ってきたショルダーバッグから伊達メガネを取り出し、オービンへと手渡し代わりに付けさせた。

 その後、私はオービンから改めて事情を問いただすと、オービンはレオンの代わりに私の偽デートに付き合いに来たのだと答えた。

 そうレオンが代役をお願いした相手は、オービンであったのだ。

 その証拠に、以前レオンに渡していた今日のデートコースや内容が書かれた紙をオービンが持っていたのだった。

 しかも、レオンがオービンに代役を頼んだと言うメモもそこに書かれていたので、これは嘘ではなく本当なのだと私は信じたのだ。


「分かってもらえたかな、アリス君。それじゃ、早速デートと行こうか」

「いや、ちょっと待って下さいオービン先輩。貴方がレオンの代役と言うのは分かりましたが、その前に服装をどうにかしましょう。第1王子とバレない様にと考慮してくれたのはよく分かりますが、もう少し綺麗にしましょう。さすがにそのままどこかに行くと言うのは、私が許せません。と言うか、オービン先輩どういう服のセンスですか! ですから、先に洋服屋に行きますよ」


 私はオービンの手を引っ張り、少し早歩きで近くの洋服屋目指すことにしたのだ。

 オービンは抵抗する事無く私に手を引っ張られていると、途中でタツミ先生に向かい軽く頭を下げるとタツミ先生は、軽く片手を上げて返事をするとその場を立ち去って行った。

 そのまま私とオービンが洋服屋へと一直線で向かう後を、クレイス魔法学院の男子がこっそりと追うが、ルークとトウマは開いた口が塞がらずにいた。


「おいルーク、あれはどう言う事だ? 変な変装してたが、あれオービン先輩だったよな? まさか、クリスのデート相手ってオービン先輩!?」

「俺が聞きたいんだが。……兄貴、何であんたがアリスと一緒にいるんだよ」

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