夏合宿編
第40話 地獄の夏合宿スタート
「夏だ!」
「海だ!」
「南の島だーー!」
と、地獄の夏合宿を行う場所の南の島に着くなり、トウマ、リーガ、ライラックが半袖短パンの私服の夏服を着て、大きく叫びながら船を下りた。
そう私たち、オービン寮第2学年20名は、今南の島ことハサウェイ諸島に来ている。
ハサウェイ諸島は、2つの島と小さな無人島々を総称した呼び名であり、2つの大きな島は王国でも有名なリゾート施設でもある。
だが私たちは、リゾート施設がある方の島ではなく、無人島側に来ており、その2つの島に次いで大きい島でもあり、魔法訓練施設場として有名な場所である所だ。
その島には、しっかりとした施設もあり、常駐で数十人の王国所属兵が管理している島であると事前に教えられた。
船から荷物を持って降りた私は、南の島には初めて来たので少しテンションが上がっていた。
すると、船から次にジュリルがいる、第2学年女子クラスことコランダムの生徒たちも降りて来た。
「ここが、魔法訓練施設場の中でも南の島にあるとされている場所ですのね。普通にリゾート施設がある島と、あまり変わりない程いい場所ではないですか」
ジュリルや女子生徒たちが降りてくると、トウマたちは彼女たちの、私服の夏服に目を奪われていた。
そして、その最後尾には医務室の悪魔こと、タツミ先生もサングラスをした状態で荷物を持ち、降りて来た。
その後からも、担当教員たちが数十名降りて来て、この島にやって来た人全員が揃った。
今回の修学旅行こと地獄の夏合宿は、一度合同授業を行ったコランダムの生徒と共に行う事になったのだ。
基本的に他のクラスと夏の修学旅行は合同では行わず、各クラス各学年事に行われるのだが、今回は何故か合同で行う事に決まったらしい。
その為、皆のテンションも上がっており、見ての通り完全に浮かれている奴が多かったのだ。
なんせ毎年男だけで、夏を暑苦しく過ごしていたのだが、今年に関しては華があるんだ最高の修学旅行だぜっと、船の中でトウマたちが叫んでいたほどだ。
しかし、一度墓穴を掘りかけたあのタツミ先生もいるので、私は注意してこの修学旅行を乗り切らなければと、たがを締めた。
そこへルークが近付いて来た。
「それで、あの後どうだった?」
「あぁ。レオンが来ることはなかったよ。ひとまず距離を取る作戦は、意外といいのかもしれない」
「あんまり気を抜くな。今回はジュリルもいるし、もしかしたらの想定をし忘れるな」
「分かってる」
私が契約を結んだ悪魔は、しっかりと相談に乗ってくれ、状況まで確認しに来たのだった。
あの後、ルークとどうするか相談した結果、こちらから行動を起こすのを止めようと言う事に至った。
なのでレオンに会いに行くことはせず、もし向うから会いに来たとしても、対応せずにするという事になった。
現状から私の秘密が広まっていない事と、レオンがジュリルにも話していない事から、現状維持することで状況の悪化はないと決めたのだ。
その後レオンからの行動はなく、状況も悪化していないため、判断は間違っていなかったと感じていた。
そして修学旅行を迎えて、ジュリルのクラスが同行すると知った時は少し驚いたが、見た感じレオンからの報告もなさそうなので安心していた。
そんな事を考えていると、担当教員筆頭に移動し始めていて、トウマに置いて行くぞと呼びかけられていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おぉーここが宿泊施設か。思ってたよ広いな!」
「一応、学院の寮と同じく部屋数は10あるから、それぞれで部屋は決める事。後、女子側の寮も近いが、勝手に立ち入る事は禁止だ」
「えぇー! こういう時くらいダメなのかー?」
「ダメだ! 一応、女子の教員が見張りで付いているから、死ぬ覚悟があるなら行っていいぞ」
その担当教員の言葉に、威勢が良かった男たちが黙る。
「それじゃ、各自荷物を部屋に置いた後、制服に着替えて外に集合だ」
「はぁ~い」
気怠そうな返事をして、皆は各自荷物を持って移動し始めた。
私も荷物を持ってトウマと一緒に、部屋に向かった。
自然に寮室と同じのペア同士で行動し、部屋割りも話し合うことなく決まっていた。
そして、言われた通り着替えた後、外に行くと担当教員から島の地図を渡された。
担当教員曰く、本格的なカリキュラムは明日からと言われ、本日はまず島を知る事が優先だと言われ、地図を見ながら散策して来いと言い渡される。
私たちは言われるがまま、地図を元に宿泊施設を出て、島の散策を始めた。
だいたい2、3人組みとなり回り始めるが、何故か私は、トウマとルークと回っている。
私は1人で回るつもりだったが、そこにトウマが一緒にどうだと話し掛けて来て渋々許可を出した後に、直ぐにルークもやって来て、何故か勝手に付いて来ている。
道中トウマとルークが、小さな言い争うをしたりしていた。
なので今はとてつもなく、雰囲気が悪く、居づらい……トウマは何となく、同室のルームメイトであるので一緒にいる意味は分かるが、何故ルークお前がいるんだ。
その視線をルークに向けると、何故か一度見たのに無視された。
おい! 何無視してんだ! と心で訴えつつ視線を送るも、その後は無視されっぱなしで終わる。
私はこの居づらい空気に耐えられず、適当な嘘を言って、2人から離れて灯台に続く、森の道へと入って行った。
そのまま、森の道を歩き続けると、思っていた以上に登ってきていたのか、開けた場所に辿り着くと、そこから海を一望できた。
「うわぁ~凄い~」
私はそこで海風に当たりつつ、景色を楽しんだ。
暫くしてから、そろそろ戻るかと思い来た道を戻ったが、何故か道に迷ってしまった。
「あれ? おっかしいな~確かこっちの道から来たと思ったんだけどな~」
周囲が高い木で囲まれており、今どこにいるのか、いまいち分からないまま歩いていると、ぬかるんでいる地面をちょうど踏んでしまい、足を取られてしまう。
「やばっ」
そう思った時には、既に体勢を崩してしまい、なだらかな斜面を滑っていた。
そこは道ではなく、背の高い草木が生えている場所で勢いのまま滑って行くと、目の前が崖になっており勢いを止めるも止まらず、そのまま投げ出された。
だが、その崖の下は砂場になっており軽い尻もちで済んだ。
落ちた場所から見上げると、1メートル程に上に先程の崖があり、背の高い草木で見えなかったのかと思っていると、誰かが私に声を掛けて来た。
「びっくりした~いきなり人が出てくるとは思いませんでしたわ。そこの貴方、大丈夫ですか?」
「えっ、あ、はい。すいません、足を滑らしたらずるずると滑ってしまい、ここに出てしまっただけなので」
私が片手で頭を触りながら、心配させてしまい申し訳ないと思い立ち上がり、声を掛けてくれた人の服装を見て、私は言葉を失った。
「そう言われましても、念のためうちの医師に見てもらう方が良いかと思います。ちょうど、あの方もおられますし、声を掛けて聞いて見ますね」
「……はっ! ちょ、ちょっと、ま」
「あっ! アリスさーん! 今、少しよろしいでしょうか?」
目の前の女性が、そう聞き覚えがある名前で、遠くに居る目の前の女性と同じ服を来た女性らしき人に声を掛けた。
な、な、何で、ここいるんだよ……そんなの聞いてないし、最悪にマズイ展開なんじゃないかこれ……。
そう、私に声を掛けて来たのは、私が通っていたクレイス魔法学院の制服を着た、同級生だった。
つまり、今彼女が呼びかけたアリスと言う名の人は、もしかしなくても……。
そして呼ばれた女性が私の方に近付いて来て、はっきりとその姿を見て確信に変わった。
「どうしたのですかって、おや? 貴方、その格好は王都メルト魔法学院の生徒ではないですか? こんな所で、何をしていますの?」
それはこっちが聞きたいよ、マリア!
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