第38話 気を抜いた時に悪夢は訪れる
もしそうだとしても、どこからつけられてた? ルークと会った時か? それとも、女性服に着替えた時……いや、それはないよな。
この服に着替えた時は、預屋に試着室があったからこっそり借りて着替えたし、他の誰にも見られていことも確認してたらか、そこは大丈夫なはず。
私は内心物凄く焦っていた。
そんな時に、トウマたちがこちらに気付くと何故かあたふたし始めると、それを見てレオンが声を掛けて来た。
「あれ? もしかして、君がルークだったりする?」
「ん? お前は確か、コンテストの時に会った奴だったか?」
そのままレオンを筆頭にこちらに近付いて来るのを見て、私はルークの後ろに隠れるようにして、小声て話し掛けた。
「ルーク、私の事は適当にごまかして。絶対に、クリスって事が分からない様にして」
「それはお前がやった方が良いんじゃないのか? まぁ、先に見つかったのは俺だし、何とかしてみるよ」
その時、初めてルークがほんの少しだけ、頼もしく思えた。
「よ、よう。ルーク、こんな所で会うなんて奇遇だな」
「ほ、本当ですわね。まさかルーク様に出会うなんて、最高ですわ」
聞くからに、どこか棒読みな感じもしつつも、そこには突っ込まずに私は身を潜めたが、私に気付いたレオンに追求されてしまう。
するとルークは、少し言葉が詰まると、その答えにトウマとジュリルは気になるのか、物凄く前のめりになっていた。
「この人は……」
「その人は……」
「クリスの姉のマリアだ。俺が、会った事がない人に会いたいと言ったら、あいつ姉を連れて来たんだよ」
「なるほど、クリスの姉か」
引っ張ってひねり出した答えがそれかっ! と、私は心の中で突っ込んだ。
もうそれは、クリスから離れていないじゃないか! もう少し、ナンパされたとか、メイドとかなかったのか。
そう紹介されてしまったので、そのように振る舞うしかないと覚悟を決め、トウマたちの前に出た。
「皆さん、初めまして。クリスの姉のマリアと言います。いつも、弟がお世話になっています」
「これは、これは、ご丁寧にどうも。こちらこそ、クリスにはいつもお世話になってます」
トウマが礼儀正しく挨拶し、続く様にジュリルとレオンが挨拶をした。
その光景に、とてつもなく気恥ずかしくなった。
「そう言えば、ルーク。今日はクリスと会っていたんじゃないのか?」
「クリス? あー確かにマリアと会う前に、待ち合わせ場所だけ教えて、自分はどっかに行っちまったよ」
「ふ~ん。もしかしてだが、今日のこれが前に言ってたクリスにさせた、例の件と言うやつだったりするのか?」
するとルークが、私の方をちらっと見て来たので、小さく頷いて答えた。
ルークは、そうだと素直に答えると、トウマは何故か安堵のため息をついていた。
トウマはルークが、クリスに対して度が過ぎた悪戯をすると思っていたらしく、後をつけていたとぽろっと漏らした。
それを私は聞き逃さずに、マリアとして問い詰めた。
するとトウマは、動揺して勢いよく謝ると、ルークと私が出会った時くらいから付けていたと聞き、私が変わる所ではないと分かり安心した。
これで一件落着かと思われたが、ジュリルが割って入って来た。
「まだ、聞きたいことがありますわ。その、どうして今日手を繋いでいたのですか? もしかして貴方、ルーク様に対して何か企んでいるんじゃないでしょうね」
「えっ!? えっと~それは~私が強引に繋いで欲しいと、頼んだのです。そしたら、ルークさんが、優しく許してくれたので、それに甘えて、つい……申し訳ありませんでした」
私が顔を真っ赤にして、ジュリルに対して謝罪をすると、ジュリルもそこまでされると思ってなく、少し焦り顔を上げるように言われる。
その後、暫く話した後トウマたちの疑問や誤解が解決して納得してのか、邪魔したなと言ってトウマが去って行くと、ジュリルとレオンも一礼して去って行った。
トウマたちが去った後も、暫くの間顔の赤さが治らない為、ルークの方を一切見なかった。
もし見たら、ニヤニヤしながらいじられると思っていたからだ。
そして、恥ずかしさも治まった後、やっと胸をなでおろした。
「ふぅ~~何とか切り抜けた~~。まさか、トウマたちがつけてたとは、想定外過ぎる展開だよ」
「俺の機転もよかっただろ?」
「全くだわ! そんな意地悪い顔して、言う言葉じゃないわ」
こいつ、狙ってクリスの姉だとか言いやがったのか。
その後ルークと出店の食べ物を買って、またトウマたちと出くわさない様に時間を潰してから、噴水の時計台まで戻って来た。
「じゃ、ここでお別れだな。色々あって疲れたが、これでデートの約束は終わりだからな」
「分かってるよ。それじゃ、次は第二期期末試験後だな」
「おい! 何勝手に、次も私が負ける前提で話してるんだ! もう、お前には負けないわ! 必ず勝ってその伸びてる鼻折ってやるから、覚えとけ」
「めげないね、お前は」
「ん? 何か言ったか?」
私は、ルークがボソッと言った言葉を聞き取れず聞き返したが、何もと返された。
そして私は着替える為に、その場でルークと別れて立ちさろうとすると、ルークに引き留められ、1つ質問された。
「なぁ、お前てフォークロスって名乗ってたけど、あれは本当でいいんだよな?」
「えっ……ま、まあね」
「そうか。なら……いや、やっぱり何でもねや、忘れてくれ」
そう言ってルークは背を向けて一足早く寮へと戻って行った。
どうしてルークが、フォークロスに関して質問したのか分からないが、別にそこまで嘘をつく必要はないと判断して答えたが、少しは気になっていた。
時刻は夕暮れになり、綺麗な夕焼けが街を照らし始めていた。
私も急いで服を預けた預屋へと戻り、一瞬の隙をついて更衣室に入り、男装の格好に戻り女性用の服は、また何か使うかもしれないと思いそのまま預屋に預けた。
一息ついて何か食べて帰ろうかと、預屋がある路地を出るとまさかの人物に声を掛けられる。
「待てたよ、クリス。いや、マリアと言った方がいいのかな」
「えっ……」
私がその言葉を聞き、動きを止め真横を見るとそこにはレオンが立っていた。
声を掛けて来たタイミングから、ここで私を待ち伏せしていたような感じであった。
「レ、レオン? な、何をいっているのか、よく分からないんだけど」
「あっ、急にごめん。その、今日の感じを見てどうしても気になってさ。クリスが、何で男装してまで男として、学院に入学しているのか」
そこで一気に私の血の気が引いてしまい、何を言っていいか分からなくなり、軽く手が震えてしまった。
「初めて会った時から、気にはなっていたんだ。何か事情があるんだろとは思って、黙っていたんだけど。今日のマリア? の感じを見て、女子として振る舞うのが嫌という感じがしなかったから、男装している理由を聞きたくなってね」
「……」
私は沈黙し続けた後、その場の雰囲気に耐え切れず逃げ出してしまった。
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