第33話 惨劇の打ち上げ会場
第一期期末試験が終了してから次の日、私は目を覚ますと何故かそこは食堂兼リビングであった。
「あれ? 何で私、こんな所にいるんだ」
何故か、少し口のろれつが回らない違和感を感じつつ、起き上がると少し頭痛もした。
寝ボケながらぼんやりと周囲の様子が分かり始め、動こうとした時に隣に誰かいると分かり視線を落とした。
するとそこには、何故か上半身裸のルークがいた。
「っ!?!???」
私は言葉にならない事を口しつつ、何事かと飛び上がりると、その周囲辺に皆が倒れるように寝ていたり、何故か他の寮生までも同じように寝ている光景が目に入って来た。
周囲はお菓子や飲み物で荒れており、壁には落書きがあったりと、この場所は悲惨な状況になっていた。
なのに、何故こうなったのか全く思い出せず私は混乱していた。
「な、な、な、何で私が上半身はだ、裸のルークの隣で寝てたんだ!? 全く分からないし、思い出せない……えっ、私何かされた?」
私は頭を抱えていたが、直ぐに自分の体を隅々触って、何もされていないか確認していると、背後から誰かが起きる声がして体がビクッと反応した。
「っうう……頭いてぇ~……んぁ? ぼんやりとしか見えないが、お前クリスか?」
「と、トウマ? って、何でお前は下着姿なんだよ!!」
「え?」
私はすぐさま自分の目を両手で覆った。
トウマは、寝ボケながら両手で自分の上半身と下半身を触り、裸かを確認した。
「本当だ……って! 何で俺、下着一枚姿なんだよーー!!」
その事で完全に目が覚めたトウマは、立ち上がり叫んだ。
そして私が前にいる事に気付き、すぐさま近くにあった長い布を腰に巻き付けた。
トウマは、何故か着てたものが見つからないので、この場はひとまずこれで凌ぐと言って、椅子に座った。
「にしても、何だこの悲惨な部屋は……何があったんだよ、あれから」
「あれからって、覚えてるのかトウマ?」
私がトウマに問いかけると、一瞬首を傾げたが、思い出した様に首が上に動く。
「そうかお前、最初の犠牲者だったし、全く覚えてないのか」
「最初の犠牲者?」
聞き捨てならない言葉に、混乱しつつ怖い顔でトウマに何があったのか詰め寄ると、一旦落ち着く様になだめられた。
トウマはとりあえず、私の周りに倒れている寮生やルークが気になるし、見てられないと言って、座りながら教えてやると言われトウマの正面の椅子に座った。
そして、トウマが少し真剣な表情で口を開き、この惨劇に至るまでの経緯を語った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それは、時間を遡り、第一期期末試験終了後の事である。
ルークが尋常じゃないことを試験で行い、話題になり教員に呼び出された後、私たちは寮へと戻っていた。
「いや~ルークの奴、いつの間にあんな事が出来るようになったんだ? もう次元が違わないか?」
「確かに、もうありゃ第3学年レベル超えてるだろ」
私たちも寮の食堂兼リビングで、ルークの話で盛り上がっていると、トウマが声を上げた。
「おいおい、お前らいつまでルークの話をしてるつもりだよ。今日は、期末試験が終わったんだぞ。そしたら、やる事があるだろうが」
そう言うと皆が、そうだったと言い立ち上がるとトウマと同時に大声で叫んだ。
「打ち上げだーー!!」
皆は一斉に自室へと戻ったと思ったら、直ぐにいろんなものを持って帰って来た。
お菓子や飲み物から、変な道具や衣装の様な物まで沢山持ってきて騒ぎ始めた。
突然の始まりに圧倒されていると、トウマが飲み物を持ってきて渡してきた。
「ほら、お前の飲み物んだ。色々今日はあったけどよ、パーッと楽しもうぜ!」
「お、おう」
私はトウマから飲み物を貰い、近くの椅子に座って勝手に出されていたお菓子を食べた。
その時私は、ひとまず今は終わった試験の事とかルークの事とか色々忘れて、騒ぐ皆を見て私も楽しめばいいかと考えた。
そこからは、トウマたちが馬鹿な事をやっているのを見て笑ったり、リーガとの腕相撲試合や、ピースとの早食い対決など、色々と騒ぎ続けた。
騒ぎ続けていると突然、寮の入口の方から大きな野太い声が響き渡って来た。
「オーースッ!!」
すると私たちの所に、ダンデを筆頭にライオン寮の寮生たちがやって来たのだ。
「おぉー! ここだな、祭りの場所は! 今から俺らも、この祭りに参加させてもらうぜ!」
ダンデの掛け声にライオン寮生たちも叫び、私たちの騒ぐ中に参加して来た。
「おいおい、ダンデ! どう言うつもりだ、うちの寮に勝手に入って来て、勝手に打ち上げに参加するなんて」
「なに、風の噂でここで打ち上げが行われていると聞いてな、参加しにきてやったんだ!」
「いや、誰も呼んでねぇよ! てか、どこの風の噂だよ!」
するとダンデはトウマの背中を手で軽く叩いて、細かい事は気にするなと言って、騒いでいる所に混ざりに行った。
トウマは小声で、参加を認めたわけじゃないんだけどなと言いつつ、飲み物を飲んだ。
より一層騒がしくなった所に、また寮の入口の方から、嫌な予感がする声が聞こえた。
そして、騒いでいる所にスバン率いるカモメ寮生たちと、ロムロス率いるスネーク寮生たちがやって来たのだった。
「何、もうライオン寮は来ているの? 全く肉体派は、行動が速いこと」
「いや~想像してたけど、物凄い大所帯だね~本当、うちの寮でなくてよかった~」
「おーいっ、お前らも来たのかよ!!」
トウマが、先頭にいたスバンとロムロスに対して突っ込むように叫び声を上げる。
そして流れ込むように、カモメ寮とスネーク寮生たちが打ち上げに参加し始めた。
「ど・こ・か・ら、お前らは聞いて来たんだよ!」
「どこからって貴方、それは秘密よ~」
「こういう脅迫じみた聞かれ方には、黙秘するのが一番だと聞いた事あるな~」
「お前らなー、これは俺たちオービン寮内の打ち上げだぞ! 何で、他の寮のお前ら参加してんだよ!」
そこにダンデが戻って来た。
「やたらと急に人が増えたと思って来て見たら、なんだ、おまらが来たのか」
「何でお前は、うちの寮生側みたいに話してるんだよ!」
その場でトウマと他の次期寮長候補生たちとが話しているの見て、私はそっとその場を離れて、空いていた端の方の椅子に座った。
少し休憩しよう。
ちょっと、騒ぎ過ぎて疲れたし……でも、こんなにはしゃぎ騒いだのは、初めてかもしれないな。
今までこんな環境はなかったし、男子ともこんなにも近い距離で接する機会もなかったからね。
にしても、こんなに人が集まって騒ぐことになるとは……もしかして、男子ってこれが普通なのかな?
私はそんな事を考えて休憩していると、アルジュやノルマたちがやって来て、楽しく雑談をし始めた。
すると突如、トウマたちの方でダンデが大声で叫んだ。
「そんなに嫌がるな、トウマ。土産も持って来てある。お前らアレ持って来い!」
ダンデの掛け声を聞いた数名のライオン寮生たちが、どこかへ行くと樽を3つ抱えて戻って来た。
「おい、何だその樽は」
「よく聞いてくれた。これは、今国内で人気の酔った気分になれるジュースだ!」
そのダンデの声を聞いて、騒いでいた奴らもダンデの方を向いて注目した。
ダンデが持ってきた飲み物を、私が知らず近くにいたアルジュに聞くと、飲むと気持ちがフワフワとなって楽しくなるものだと言われた。
それだけ聞くと、何か危なそうなものなんだと思い、私は遠慮しておこうと決めた。
そしてダンデが大盤振る舞いで、寮生たちに配り始めると、そこへルークが寮に帰って来た。
「なんだよ、このうるささ。外からも聞こえてるぞ……おい、何だこの人だかりは?」
ルークは自分の寮に、想像以上の人数がいてかなり驚いていた。
「ルーク! いいとこに帰って来た、ちょっとお前らも言ってどうにかしてくれよ」
トウマが助けを求める声を上げると、瞬時に面倒事だと察知したのか、トウマに向かいお前なら出来ると言い切る。
まさかの返しトウマも驚き、引き返して帰ろうとするルークを引き留めるように声を掛けるが、ルークは頑張れとだけ言って去ろうとする。
そこに、フェルトがルークの正面に立ち塞がり、肩に手を置いて引き留めた。
「まあまあ、トウマの面倒事は置いといて、今日くらいはみんなで楽しもうぜ、ルーク」
「……分かったよ、フェルト」
そう言ってルークはフェルトと一緒に、騒がしい方へと戻って来た。
そしてこの後、ルークと私を中心に惨劇が始まるのだった。
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