第4話 寮対抗魔力腕比べ(前編)
トウマの女性用下着着用事件から数日後。
何故かトウマは女に飢えすぎて、おかしくなったという風に解釈され噂はなくなった。
当の本人は釈明したが、仲間たちからは肩を軽く叩かれ優しい目で見つられめるだけだったそうだ。
噂が無くなるまでは、トウマも少し落ち込んでいたが、意外にもすぐに元に戻り仲間たちも今まで通りに接するようになっていた。
「つうわけで、そろそろ今期初の寮対抗魔力腕比べがやって来るぞ!」
その日の夜、食事をしながらトウマが寮生全員に向けて大きく叫ぶ。
それにみんなが、食事しながらもノリ良く叫ぶ。
「寮対抗魔力腕比べ?」
私が夕飯を食べながら首を傾げていると近くにいたアルジュが話しかけて来た。
「言葉の通り、各寮で魔力を競うのさ。うち以外のダイモン寮・エメル寮・イルダ寮で競って1位だと特別ポイントが貰えるんだ」
「へぇ~さすがアルジュ。委員長と呼ばれるだけあるね」
「それはあんまり褒め言葉じゃないよ、クリス。後、あまり詳しいルールを知ろうとする奴が他に居ないから、結局僕が見るから詳しいだけ」
アルジュが淡々と夕飯を食べ続けると、そこへシンリがやって来る。
シンリは、クラス内ではアルジュに次ぐ情報役と言われている。
童顔で天然があり、ビビりだとトウマには教えられている。
「やぁ、クリス。みんな寮対抗戦で盛り上がってるね~やっぱり特別ポイントは大きいよね」
「どの寮も特別ポイント狙いだろ。1位になれば50ポイントも貰えるからね」
アルジュとシンリがポイントについて話して時に、改めて詳しく教えてもらおうと私は思い立って質問した。
「ポイント制度ってたしか、うちの学院特有のものだったよねアルジュ?」
「そうだね。ポイントは寮ごとに振り分けられて、各内訳は各寮長が振り分けているんだよ。うちは学年で獲得したものは、その学年のものとしてるよ」
それから詳しく話を聞くと、よく寮対抗戦はあるらしく、他にも期末試験でのトップ10や学院対抗試合などイベントごとに特別ポイントを貰えるものらしい。
また、減点もあり授業のサボりや規則違反をすると、その寮から減点されるらしい。
ポイントでは、外出権や装備品や寮の設備など月毎にラインラップが変わったりするので、よくポイント交換する生徒が多いらしい。
ちなみに私にも30ポイントが振り分けられており、夕飯のランクアップなどが今月はおすすめとアルジュとシンリに勧められた。
「つーことで、お前ら明日魔力事前測定会を行うぞー!」
トウマが再びそう叫ぶと、そのままルークを指さした。
「まぁ、うちの優勝は決まってるようなもんだしな! ルーク頼むぜ!」
「ん? あ~それ今年パスで。なんか面倒だし」
「え?」
するとルークは、夕飯を食べ終わると自室へと戻って行った。
突然のルーク辞退宣言に仲間たちは、理解できずに固まっていた。
「(あれ、何で急にみんな黙っちゃったの?)」
私は、アルジュにこっそりと話しかけると小声で答えた。
「うちの寮で一番の実力者がルークで、他の寮より圧倒的だから今年もルークだよりで、勝つつもりだったんでしょ」
アルジュが淡々と話すのに対して、近くに居たシンリは続けて少し笑いながら口を開く。
「トウマたちは、特別ポイントで多分今月目玉の、映像を映し出す機器を寮設備として買うって言ってたし、それが出来なくなって気が抜けちゃってるんだよ」
そのまま他のみんなの魔力はどの位か聞くと、悪い訳じゃないが他の寮と比べると全体的に低いらしい。
また、寮対抗魔力腕比べでは3つの勝負をして、総合ポイントが高かった寮が優勝するものだと教えてもらった。
次の日、魔力講義中に前日トウマが言っていた魔力事前測定会を先生立ち合いの下、行うことになった。
「よーし、寮対抗試合があるのは聞いている。魔力測定を行うのは私が立ち会うが、その前に対抗試合の種目でもある魔力の3つの分類を答えて見ろ、トウマ」
「えっ、俺すか? えっと……確か、健康・安心・安全!」
「分からないなら、素直に分からないと言え。適当に答えるな」
「さーせん」
トウマは先生に注意を受けると、少ししょんぼりした顔で席に座る。それを仲間たちは、笑いをこらえるように顔を逸らしていた。
そして次に、ガウェンが指名され立ち上がる。
ガウェンは、少しツリ目が特徴でクラス内では魔力に関する授業や知識ではトップに入る人材だ。
あまり表だって話すことがなく、寡黙なタイプである。
皆からは職人と呼ばれているが、家柄も王国兵が使う魔道具から一般家庭でも使わる魔道具を扱う職人の家庭である事から、あだ名が付けられたらしい。
「魔力を3つに分類すると、力・技量・質量と分けられる。力は、単に魔力を使って放てる魔法の威力を指す。技量は、魔力をどれだけ繊細に扱う事が出来るかを指し。質量は、対象に対しどれほどの魔力を注げるかを指す。また、魔力の質も最近では注目されている項目である。以上です」
「完璧だ。ガウェン座ってよし」
ガウェンの回答に周囲の仲間たちも、拍手して尊敬の眼差しを向ける。
そして先生は、教壇前に3つの魔力測定装置を魔法陣から出現させた。
そこからはトウマが仕切りだし各自魔力測定を開始し始めた。
ちなみにルークは、魔力測定が始まると先生に許可を取って教室から出ていった。
トウマにサボりになるのではと言ってみると、今はもう授業ではないからならないと返されていた。
いまいち授業との線引きが分からずにいたが、私はひとまず今は変に目立たずに魔力測定に参加することにした。
「結果発表~~!」
癖のある感じでトウマが叫ぶと、仲間たちは掛け声で盛り上げた。
結果は、魔力測定装置に手をかざした時に表示される50点中の各数値を見て、各項目のトップ3名を発表する形式となった。
そして、その3名が寮対抗戦に出場することになる。
発表者はアルジュが務める事となり、結果の用紙を見ながらクラス全員に発表を始める。
「では、僕の方から言わせてもらうよ。まず質量トップは、ガウェン! 力20、技量35、質量43。次に力トップは、トウマ! 力26、技量14、質量20」
「え!? 俺が力トップ!? ……はっ! まさか、お前ら」
トウマはクラス内を見渡すと、ほとんどの奴が口笛を吹いてとぼけた顔をした。
シンリが言うには、下手に寮対抗戦の代表になって出場すると痛い目を見るから、基本的は数値が30ない場合は出ないのが普通なんだと。
力は前年はルークが出ていたから、ルークの代わりに出るとなると絶対に他の寮生に馬鹿にされるのは目に見えている。
だから、みんな手を抜いたが運悪くトウマは抜ききれていなかったのだ。
そう言えば、確かこの学院は女子もいたが女子側もこういうものはあるのだろうか。
「あれ、もしかして女子もこう言うことしてるのかって思った?」
「えっ……ま、まぁ思ったけど。何で分かったのシンリ?」
「簡単だよ、転入生がだいたい考えそうなことを言っただけさ」
「そ、そうなんだ」
この学院でもそうだが、基本的に男子と女子は分かれて授業を行う。
それは魔力の本質や行える分野が変わってくるためだ。
なので、クラスでも男女混合にする学院はほぼなく、男子は男子の、女子は女子の授業が行われる。
ちなみに私は、事前に男子の魔力の本質や行える分野は予習しているからついていけているのだ。
話を戻すが、結論的に女子は寮対抗戦などはないらしい。
だが、ポイント制度は同様にあり授業成績などで追加分などがあるらしい。
余談としてだが、女子との交流は別に禁止されいないので校内の中庭などでよくいちゃつくカップルもいるとかいないとか。
私が学院の女子の事をシンリに聞いていると、そこへノルマがやって来た。
ノルマはクラス内では、ザ・普通の男と言われている。
何かが秀でているわけでもないが、劣っているわけでもない。私からすればある意味凄い才能を持つ奴だ。
特徴は、右目下に泣きぼくろがある所だ。
「クリスも女の子に興味があるんだね。あんまりそんな感じがないから、そっち系かと思ってたよ」
「そっち系?」
「あ、いやいや。何でもない今のは忘れてくれ」
何故がノルマは、少し焦った表情で自分の発言を撤回した。
その横でシンリは何故が笑っていた。
「そ、それより、後1人は誰になるんだろうね。ガウェンは順当だし、トウマは……うん、まぁドンマイだけど」
「普通なら、前年も技量部門で出場したヴァンじゃないかな」
「えっ……ヴァンって、あのヴァン?」
少し嫌な顔して私が聞き返すと、ノルマが何故そんな顔をするのと問いかけられる。私が答える前にシンリが答えてくれた。
「ヴァンはね、クリスに軽い毒を吐いてるんだよ。ほら、ヴァンってよそ者に厳しいし、今までの輪が乱されて気に入らないんだよ。まぁ、クリスもいずれ仲良くもなれるって」
「そうかな」
私がヴァンとの今後の関係に不安をいただいていると、アルジュから最後の対抗戦出場者の発表が行われた。
「ほらほら、最後の出場者を発表するぞ」
「順当ならヴァンだろ。こいつ少し口は悪いが、魔力の技量はなかなかだしな」
「確かに、口は悪いが腕はそうそうだもんな」
クラス内では、ヴァンであると既に決めつけて話していた。
「まぁ、僕に技量で敵う奴はこのクラスはいないよね。特に転入生なんて、僕の足元にも及ばないだろうよ!」
ヴァンはそう言いながら、私の方を見下す毒を吐く。
私は引きつった笑いでそれを受け流した。
周囲からは、気にするなと声を掛けてもらった。
そして、アルジュが技量トップ者を口にする。
「技量のトップは、クリス! 力20、技量48、質量29。ちなみにヴァンの技量とは3つ差だったよ」
「え? 僕じゃなくて、転入生がトップ……? うそ、だ……」
そのままヴァンが後ろに倒れる。
「おい、マジかクリス。技量48って、凄すぎだろ! こりゃ、意外と優勝目指せるぞ!」
「ちょ、ちょっとみんな。俺は出るなんて一言も」
トウマのやる気みなぎる声と、私への予想以上の数値に対抗戦に期待に寄せてクラス内は私の声を打ち消して大騒ぎになる。
そのまま、流される様に対抗戦代表者として任命されてしまった。
その日の夜、寮のリビングにてトウマ、アルジュ、シンリから改めて詳しく対抗戦について話を聞いた。
「いいじゃねかクリス。お前は技量数値が高くてよ。俺なんて、26で出るんだぞ……あんな注目される場で、大恥かくんだよ俺……」
トウマは少しいじけてしまっていた。
二人はそんなトウマに構わずに、明日開催される寮対抗魔力腕比べについて話し始めた。
「今日魔力測定で出た3つのもので競うのが魔力腕比べだよ。力では破壊力、質量では保存力、技量では精密さを見るんだ」
「クリスが出場すつ技量部門では、前年だと大きな氷を造形するものだったよ。ちなみに去年うちの寮は総合優勝だったんだよ」
「優勝って凄い」
「まぁ、ルークもいたしそれに……」
何故か、そこでアルジュは言葉を止めた。
「それに何?」
「え、ああ。ヴァンも技量部門で2位だったから総合で勝てたんだよって、言いたかっただけ」
「へぇ~ヴァンはやっぱり実力はあるのな」
寮対抗魔力腕比べでは、各寮とも3部門が得意な人たちが出てくるので意外と接戦になるらしい。
だけど今年は、力部門はトウマなのでもう捨てているとシンリが落ち込むトウマにとどめを刺した。
そして各寮の特徴も教えてもらった。
まずは、ダイモン寮。
イメージカラーは赤で、肉体派が多く力に特化している人が多い寮。
力でねじ伏せてくることから、別名ライオン寮とも呼ばれている。
次は、エメル寮。
イメージカラーは黄で、魔力質力の優良者が多い寮。
他者への声援が凄く、鳴き声に聞こえることから別名カモメ寮と呼ばれる。
そして最後に、イルダ寮。
イメージカラーは紫で、魔力の技量に特化している人が多い寮。
物静かだが、相手が弱ったり隙を見せると一気に畳みかけて相手を倒すことから、別名スネーク寮と呼ばれる。
ちなみに、うちのオービン寮のイメージカラーは青。
群れになって騒いでいることや一匹狼がいること、別名オオカミ寮と呼ばれているらしい。
「他の寮の特徴は何となく分かったかな? と言うわけで、クリスの一番の強敵は、スネーク寮だよ」
「情報によると、スネーク寮はゲイネスが技量部門でまたでるらしいよ」
「ゲイネスか、強敵だな」
「ゲイネスって誰?」
シンリが言うには、前年の寮対抗魔力腕比べに第1学年ながら出場し技量部門でヴァンに勝って1位になった生徒だそうだ。
他の部門だと、前年力部門2位のライオン寮、次期寮長候補であるダンデ。
前年度質量部門2位のカモメ寮、次期寮長候補のスバン。
と、侮れない生徒が他の寮にもいると似ているか分からない似顔絵付きでアルジュが説明してくれた。
その後は、他の注目する生徒なども教えてもらいその場はおひらきとなった。
私はトウマと共に部屋に帰り、そのまま就寝についた。
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