ポップ・ミュージック・クリティーク
加々美透
はじめに
いま、アナログレコードを買う意味
ついこの間の事。アメリカ国内でのレコードの売り上げがCDを上回ったとのニュースが世間を賑わせた。日本でもここ数年アナログブームが続いている。
社会人になり、僕の音楽人生に一つの転機が訪れた。それまでサブスク一辺倒だった僕の音楽視聴環境に「レコード」が入り込むようになったのだ。
僕は現在のレコードブーム以前からアナログレコードの収集を趣味としていた職場の先輩と音楽談義をしていく内に、自分もレコードを集めたいと思うようになっていた。そんなわけで、父親が使わなくなったベルトドライブ式ターンテーブルの埃を払い、少しづつレコードを集め始めてから早3年。現在はSL1200二台とフランス製ロータリーミキサーを揃えたアナログDJブースでお気に入りのレコードを楽しむ毎日が続いている――。
* * *
みたいな、ありがちなエッセイっぽい書き出しはここまでとして、このエッセイでは自分が集めてきたアナログレコードをテーマに音楽を紹介していきたいと思います。
さて、僕が主に集めていてるのはダンスミュージック系の12インチ・レコードです。所謂アナログDJ用のシングル盤というやつで、一般的なLP盤と聴き比べると、なるほどかなり音が違います。特に音圧(というか音の大きさ)がハッキリと異なります。ある意味、LP盤とシングル盤は「別物」とも言えるほどにその存在理由が違うのです。
という話は一旦置いておくとして、このエッセイでは(二回目)、主にLPレコードを中心に音楽を紹介していきます。
とは言うものの、紹介する作品の大半はフィジカルとしてCDのリリースがされています。特に邦楽ミュージシャンのLPレコードはコレクターズアイテム的な意味合いが強く、僕がそれらを買う理由も同じです。
つまりここで紹介する作品は、わざわざレコードを買う程に好きなものばかりだという事です。
いやちょっと自分で言ってて「本当にそうか?」って疑問符が上がりましたが、まぁそんな感じのノリだと思って頂けたら幸いです。
* * *
因みに、実を言うとCDは全く持っていません。多分で合計20枚くらいだと思います。世代的にはバリバリCDなのですが、本格的に音楽を聴き始めたのが遅く、その頃にはサブスクリプションが充実していました。なのでCDは数えるくらいしか持っていませんし、今後も多分買わないと思います。そもそもレコードを買い始めた理由と言うのも「聴くだけならサブスクで足りるけど、形として自分の好きな音楽が残らないのは寂しいな」から「じゃあCDよりレコードのほうが存在感もあるしなんかかっこいい」みたいな感じでした。
ですが面白いもので、レコードはおろかサブスクリプションにも引っかからないためCDでしか聴く事のできない音源というものが数多くあります。例えばマイナーなアニメのサントラとか(僕が人生で初めて買ったCDは∀ガンダムのオリジナルサウンドトラックでした。こちらは未だサブスクには来ていません)。
こんな感じで、今後「CDに取り残されたレア音源」がコレクター界隈で熱を帯びていく事になるでしょう。
現在のレコードブームは、レコードというモノに対して「音楽を聴くアイテム」としての用途以外の価値が見出されたから起きたものなんじゃないかな、ないしはそれが一因だと思います。現に僕がそうですし、アナログレコードの「所有感」というのは物質的・精神的にもCDを優越していると言わざるを得ません。また音質という面でもCDが劣っていることはこれは原理上仕方がない事で、ハイレゾ音源が配信されている事を考えればそういう意味での価値は皆無です。
ですがCDの「現代のPC環境に非常にマッチした光学メディアである」という点に着眼するとどうでしょう。なるほどCDが普及した理由とその価値が朧げに見えてきた気がします。この意味で、客観的に考えればCD音源という物のプライオリティはゼロになっていませんし、CDというフォーマットでしかリリースされていない作品の存在なども考えれば、現在のサブスクリプション思考の中で見過ごされてしまっているアナログレコードと同様の「モノとしての価値」が現在もCDに残されている事を再発見できる事でしょう。
CDにはCDの良さが、レコードにはレコードの良さがあるとした上で、僕がアナログレコードとして所有している楽曲の数々を紹介をしていきたいと思います。
ではいくぞい。
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