第二十四話〜王族〜
レツィア「ほら、早く自己紹介して」
I「あの…私本当に…副会長に…?」
レツィア「このメンツを前に、ドッキリなんてすると思う?」
I「……」
彼女は目から大粒の涙を流していた
レツィア「わたしは、誰よりも彼女のこと——Iのことを知ってる
愚直で、自分が決めたことなら良いことでも、
悪いことであろうと貫き通す」
ハミル「でも彼女は、総長を謀ったのでは?」
レツィア「確かにIは、わたしを裏切った——だが厳密には違う
わたしに弱さが、裏切らざるを得ない状況を作ってしまったに過ぎない
彼女が持つ善と悪は、これから立ちはだかる難題に対抗しうる
良い意味での起爆剤となるだろう」
I「私は…ッ」
レツィア「わたしができるのはここまで——あとはI、あなたの意志と言葉だけ」
——目と目が合う
彼女は泣いている——だけど、瞳の奥に映るIは——もう泣いていない
総長から一歩を踏み出し、金色の綺麗な髪が空を切る
I「私の名前は、錫城‐アンリ——魔術ランクはA
沁霊武装:
——ホールがざわめき立つ
ハミル「それは沁神ノ戦器の一つだね……戦器自らが意志を持ち、
器となる主を選ぶという——そうか君が」
ツヴァイ「アンリさんやばいじゃないか!神に認められてるって!」
アンリ「——主が夢見る理想郷に辿り着くまで、主の手となり足となり
そして、剣となる事を——今ここに宣言しますッ‼︎」
彼女は深々と頭を下げてお辞儀をした
辺りは静まり返り、時が永遠に止まっているような感覚が襲う
——沈黙が——怖い
すると、その永遠にも感じた長い静寂は、一人の拍手によって終わりを告げる
その拍手の人は、少し離れた場所でこちらを見ていた彼だと分かった
レイジ「錫城アンリか、良い名前だな」
アンリ「——ぇ」
急に胸が痛くなった
——そして会長に続くように、拍手が沸き起こった
レイジ「これからもよろしく頼む、錫城副会長」
アンリ「ァ—ぁ、はい…」
レツィア「——以上が、わたしの伝えたかったことだ
今日は私たちの為に集まってくれたこと、感謝する」
RS「はッ‼︎」
レイジ「錫城、これが新しい副会長の徽章だ」
アンリ「…会長」
レイジ「ん?どうした錫城」
錫城「いッいえ!ありがとうございます」
レイジ「以上、解散だ」
RS「会長—今日の昼二時より急遽、王室会談の予定が入りました」
レイジ「——早速動き出したか」
レツィア「会長?」
レイジ「—分かった、あと総長も同席すると伝えてくれ」
RSが立ち去ると会計と庶務が近づいて来た
レイジ「臨時王室会談が開かれる——恐らく
ユクシヌとルークの件とみて間違いないだろう」
ツヴァイ「ヤッて来たのは向こうからです、俺達に非はないですよ」
ハミル「それが通じる程、向こうは柔軟じゃない」
レイジ「とりあえず、俺と総長が同席して最悪の事態は回避する
“今”向こうと争う訳にはいかない」
レツィア「そうね—風紀委員会との合併、学園全体のランクアップ
下準備が全くできていない」
ツヴァイ「合併ですか?初耳なのですが」
ハミル「兄さん、僕から合併の件をメンバー全体に伝えておきましょうか?」
レイジ「そうだな——次開かれる評議会までに生徒会としては
四分の三以上の賛成者は作っておきたいしな——頼めるか?」
ハミル「了解、すぐに取り掛かるね—それと兄さん、総長
改めてこれからも宜しくです」
アンリ「あの…ユズリハ総長…」
彼女が人目を気にしながら近づいて来た
レツィア「もっと堂々としていいよ、副会長」
アンリ「あの……ありがとうございました!本当に副会長にしてくれて—」
レツィア「——信じる強さを持ってるあなただからこそ、
副会長になれたのは必然よ——期待してるからね、アンリ」
地下牢獄で粛正者ルークが襲撃して来た時、
わたしは咄嗟に錫城アンリを隠した——
副会長になりたいと切望していた彼女に、同情したわけじゃない
粛正者ルークから守る為にでも、きっとない
だけど—あの判断はきっと間違いではないと——彼女なら証明してくれる
結果が先なんておかしいかもしれないけど、
間違いじゃないと証明するために、錫城アンリを助けたんだきっと——
【アバカルノ大宮殿】
フィアノレイス王国の南西にそびえ立つ
国王とそれに連なる王族、政府機関が住まう建物
ロザリナ王女「——」
左眼が紅、右眼が碧の瞳の色をしたオッドアイで
髪の毛は金褐色で長い為、カールアップしている
クロウド「姫君様—先の件、先方は了承した模様です」
ロザリナ「クロウド!わたくしの事は呼び捨てにせよと、
以前から言っているでしょう?」
クロウド「ですが…」
ロザリナ「わたくしが何の為に、王室騎士ではなくレヴァノイズの貴方に
護衛を無理矢理代えたか…本当に理解しているのです⁉︎」
クロウド「恐れながら—」
ロザリナ「—なら、口に出して言ってみなさい——命令です」
クロウド「…立場があります故、明言は—」
ロザリナ「わたくしの夫となる人だからです!…全く
わたくしの口から言わせるだなんて、とんだ無礼者ですわね」
クロウド「からかわないで下さい、姫君様」
ロザリナ「——はぁ…レヴァノイズの頂点に立つ者が、こんな弱腰だなんて」
∬クロウド‐アズベリヒ∬
宮殿内部の防衛は本来、王室騎士隊が全て務めるのが決まりだが
特例として、王女専属騎士という名目で護衛を任されている
クロウド「話を戻します、本日14時より聖煉学園の生徒会長が
ここアバカルノ大宮殿に参られます」
ロザリナ「…まぁ良いですわ、呼び捨てで呼ぶ件はまた今度にします」
クロウド「ロザリナ様!」
王女は少し頬を赤らめていた—全くこの御方は…
ロザリナ「でも正直わたくし、学園の事に興味がないの
だってパパが勝手に言い出した事だし」
クロウド「国王が与えて下さった最初の公務ではありませんか
それは姫君様を認めている確固たる証拠です」
ロザリナ「まぁ…ね?」
クロウド「予定時刻まで30分を切りました、我々もそろそろ応接の間へ」
ロザリナ「…もっと貴方とお話ししたかったなぁ」
クロウド「何か?」
ロザリナ「いいえ‼︎」
∬大応接の間∬
一つ数千万はくだらないであろう豪勢な椅子やテーブル、装飾品が随所に置かれ
部屋全体に、いかにも権力者を迎え入れる異様な空気が漂っていた
王室秘書「レイジ様、ユズリハ様、そして護衛の方々—
こちらが会談場所となっております故、少々お待ちくださいませ」
レイジ「——」
レツィア「気になることでも?」
レイジ「いや——(なんだろうか…何か嫌な予感がするのは気のせいか)」
ロザリナ「お待たせしたわね、聖煉の魔術学生たち」
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