第152話 十人十色 🍴




 日曜日の朝のファミレスはいつになく賑やかで、6割がたの客入りでした。

 店長さんにこっそり訊くと、「給料日のあとだからじゃない?」とのこと。


 ――コロナ前にもどって来つつあるのかな? 長い自粛に飽き飽きして。


 そう思いながら見慣れない顔ぶれを眺め渡してみると、これはいけませんねえ、店内随所に「会話はマスクを付けて小声で」と明示されているのに、やんゃっぽい若い兄さんたちがマスクなしの大声で談笑し合っています。こういうときの常で、店長さんが頻繁にその席の周囲を歩くのですが、一向に応える気配がありません。


 いやはやと思いながら目を転じれば、これはまた対照的にもの静かな中年の紳士が、なんとも美味しそうないい表情でドリンクバーのカフェラテを飲んでいます。こうまで美味しそうにされると、関係ないこちらまでなんだかうれしくなります。


 別の席では、黒縁のメガネをかけた小学校低学年の男の子が、なんとも愛らしい笑顔でオレンジジュースのストローを吸っていますし、別の席では幼児が汚したテーブルと椅子の下を丁寧におしぼりで拭いている若いママさんのすがた。(^-^)


 十人十色の客模様を観察しているスタッフの気持ちが少しわかったような……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る