第84話 傘の旅 ☂




 雨上がりの朝、庭に傘を干したまま、奥さんはどこかへ出かけてしまいました。


 しばらくすると風が出て来て、水玉模様の水色の傘をふわりと浮き上げました。


 街から里へ、里から野へ、山へ、傘は風に乗って、どこまでも飛んで行きます。


 家の近所しか知らなかった傘には、見るもの聞くもの、みな新鮮な驚きで……。

 

                      

          🍃


 

 でも、そのうちに傘は、ふっと心配になりました。

 

 ――このまま家へ帰れなくなったらどうしよう……。

 

 とそのとき、急に風の向きが変わり、傘はいま来た方向に飛ばされ始めました。


 山を越え、野を越え、里を越えて、街へ……傘は無事に家にもどりましたとさ。



 いやはやすみません、予定調和を絵に描いたようなお話でございます。_(_^_)_

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る