ポジティブシンキング童話&ゆるふわエッセイ 🦜

上月くるを

VOL.1

第1話 象と星と 🐘 ✭




 4本の足に重い鎖をいく重にも巻かれた母さん象は、森の木材を運び出したり、人や荷物を乗せたりして1日中働きづめでしたが、半年前に生まれた赤ちゃん象がいつも一緒にいるので、自分のことより、その子の無事が一番の気がかりでした。


 夜になっても、がんじがらめに巻かれた足の鎖は解いてもらえません。粗暴な男たちに大声で怒鳴られたり、容赦なく鞭で打たれたりしないだけましですが、ふたりだけになって大喜びで甘えてくる赤ちゃん象を鼻でやさしく撫でてやりながら、

 

 ――やがて、この子も同じ目に遭うのだとしたら……。

 

 母さん象は真っ暗なジャングルの上に広がる空に、長く深い溜息をつきました。


 とそのとき、チカチカ光っていたひとつの星がすうっと尾を引いて流れました。


 何を隠そう、それはそう遠くない未来に起こるはずの吉兆のしるしだったのです。

 

 

                🌠

 

 

 しばらくして、その国の法律が改正され、象たちは重労働から解放されました。


 法の目をかい潜り、闇で働かせようとする人間には国際社会がきびしい罰を与えたので、重い鎖を引きずって歩く象のすがたは、すっかり見られなくなりました。


 夜のジャングルで悲しみに暮れていた母さん象と、大きくなった子どもの象も、細いやさしい目を和ませ、象仲間や善良な人間たちと穏やかに暮らしています。

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