第31話 襲撃
「あー疲れたー」
戦闘テストを終えた俺は医務室のベッド上で大の字になる。
俺が医務室にいる理由は小さな怪我を治療する為と、防御魔術を破壊された圭一を送り届けたからだ。
「やっぱ相真は強えな」
圭一がベッドの上に座りながらそう言う。
圭一は直接の怪我はほとんどしていない。だが防御魔術が破壊されると精神的に相当疲労するらしく、圭一はいつもの元気は無く少し気怠そうにしている。
「ちょっと相真くんベッドで寝ないで下さい」
「少しくらいいいじゃないですかー」
ベッドの上で仰向けになる俺に北条先生が注意の言葉を口にする。AとSランクの生徒の戦闘テストが全て終わったので北条先生は医務室で待機中だ。AとSランクの生徒の戦闘テスト中は緊急事態に備えて近くで待機していたが今はその必要も無いのでテスト終了まで医務室にいるらしい。
「あー暇だなー」
「じゃあ私の手伝いでもして下さいよ。怪我人を連れてきて下さい」
「いや、それはご遠慮します。とっととマンションに戻ろうぜ圭一」
北条先生の提案を俺は華麗にスルーして医務室の扉に手を掛ける。
今日は自分のテストさえ終われば後は自由時間なのでマンションに戻ろうが何しようが問題は無い。
「まぁいいぜ。俺も取り敢えず寝たいしな」
「ってことで俺達は帰りますね」
「はーい。気をつけて帰って下さいね。それと成績発表が5時からあるのでそれまでには朝の集合場所に集まっておいて下さいね」
「分かってますよ」
北条先生にそう報告して俺達は医務室を後にした。
『そろそろ起きた下さい相真くん』
「ん、あぁ」
『もうすぐ5時ですよ』
「ふぁ〜、そうかもうそんな時間か」
マンションについてすぐにベッドに入って昼寝をしたのだが、気がついたらもう夕方、すでに時計の針は4時半を回っている。
『そろそろ行かないとな。持ち物って無いよな』
『ありません。いつもの武装だけすればいいと思います』
いつもの武装とは俺が日常生活でも携帯している伸縮性のあるスイッチブレードとグロック17(銃弾に当たって壊れたので今は持っていない)のことである。軍校でも緊急事態に備えていつも武器を携帯する様に言われており、俺もきちんと武器を携帯している。
「おう相真。丁度同じタイミングだな」
「ああ、じゃあ一緒に行くか」
俺が自分の個室を出ると玄関で靴を履く圭一の姿が見えたので一緒に登校することにした。
「まったく、どうしてまた登校しないと行けないんだよ」
「成績発表だからな。しょうがねーよ」
俺は歩きながら文句を垂れ流す。圭一は苦笑しながらそう返す。
「成績発表ってただの結果発表だろ?実際の生徒ランクが発表される訳じゃねぇし行く意味あるのかね」
成績発表と言っても戦闘テストなら勝敗が、実技テストと実施テストならテストの点数が発表されるだけだ。勿論それも大事だが必ずしも生徒ランクと直結する訳ではないのであまり興味が湧かない。
「特に俺達みたいな戦闘テストをした奴はあんまり意味無いしなー・・・・・・」
そう話す圭一が足を止める。それと同時に俺もその場で止まり半身で構える。
その理由は数メートル先で立っている1人の男だ。
その男は全身黒色の戦闘着を纏い覆面をしている。そしてその右手にはコンバットナイフが握られている。
「黒木相真だな?貴様を連行する」
「ーーッ!?へぇ・・・・・・」
そう言い放つと男はコンバットナイフを逆手持ちにして構える。
「おい?アイツ何者だ?」
「心当たりはあるが詳しくは分からないな」
「敵だよな?」
「多分」
俺は制服と内ポケットからスイッチブレードを取り出して展開する。
《
男が地面を蹴りこちらに接近して来ると同時に俺は能力を発動する。
俺と男の距離がゼロとなり斬撃が振るわれる。そのタイミングに合わせて俺はスイッチブレードの斬撃をぶつけて防ぐ。
そこから始まる至近距離での斬撃の応酬。
繰り出される斬撃をいなし、防ぐ、そして返しの斬撃を振るう。
「あらよっと!」
「くっ・・・・・・」
俺が近接戦闘をしていると横から急接近した圭一がサバイバルナイフを男へと振るう。
男は俺の斬撃を捌き、圭一の斬撃をガードする。圭一の奇襲を防いだ男は後方へと下がる。
「コイツが1人とも限らないし速攻で行くぞ、圭一」
「おうよ!」
ーー白鷺流剣術 斑鳩ーー
距離を取った男へと魔力を集中させて爆発的に上昇した脚力で急接近する。
高速で接近し、刹那の間に振るわれる刃を男はコンバットナイフで防ぐ。
(これに反応するのか。だがーー)
俺は斬撃の勢いそのままに身体を屈める。
それと同時に斑鳩を防いで隙が生じた男にいつの間にか距離を詰めていた圭一が斬撃を振るう。
スイッチ。
片方の人間が攻撃して、その隙をカバーする様に連続でも一方の人が攻撃する技術だ。攻撃の隙を減らせるだけでなく、相手が攻撃を防いだ刹那に攻撃出来るので防御が難しいという利点もある。
「くはっ・・・・・・」
圭一の斬撃を受けて男は苦痛の声を漏らしながら膝をつく。
「ナイス圭一」
「そっちもな!」
「これからどうすッ!?」
俺は圭一と勝利のグータッチをしようとするが、背後から氣を感じてすぐさま後ろを振り返る。そこにはーー
「おいおい。負けてんのかよ。ガキに負けるなんて組織の名に傷が付くぜ。なぁ?」
「そうだな」
そこにはさっきの男と同じ様な格好の2人の男が歩いて来る。
1人は身長190センチくらいでゴリマッチョな体格。もう1人はもう一方とは対照的に身長は低めでガタイも一般人並みだ。
だがその2人がさっきの男と同程度の実力だというのは簡単に理解出来る。
「おいおいマジか?こりゃヤベェぞ!」
「本当にな・・・・・・」
圭一は目を見開きながら驚き、俺は顔を
さっきの男を倒せたのは2対1という状況だったからであり、2対2の状況で同じレベルの戦いをするのは不可能だろう。
(どうするか・・・・・・)
俺がこの状況を打開する策を模索しているとーー
「大丈夫かい?君達」
「ああん?なんだてめっーーカハッ!?」
「何?」
男達のさらに後ろから聞き覚えのある声と共にもう1人の男性が現れる。
その声を聞き後ろを振り返ったゴリマッチョな男が血反吐を吐いて倒れる。
その男の胸を見ると地面から伸びる漆黒の刃に貫かれている。何故そうなったのかはすぐに分かった。
「和佐さん!」
「やっほ〜」
公安ゼロのエージェント兼軍校校長の護衛。赤城和佐が歩いて来た。
「貴様ッ!」
こちらへと悠々と歩いて来る和佐さんにもう1人の黒ずくめの男が後ろからコンバットナイフでの突きを放つがーー
「あがっ!?なんだ?」
「無駄だよ。もう僕の終わってるから」
黒ずくめの男の身体に絡まっている影の鎖。
ドシュッ。その影が一瞬で引き締まり、男の身体がバラバラになる。
「この人知り合いか?」
「ああ、公安の人」
「なるほどな。滅茶苦茶強えな」
「そうだな」
俺の元まで寄って来た圭一が小声でそう話し掛けたくる。
俺も和佐さんの戦ってるところを見たのは初めて見たが、あの男達を瞬殺したのは本当に凄い。
「和佐さん。こいつらって」
「『ラグナロク』の連中だよ。狙いは相真君の拉致と僕の殺害らしい」
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