第25話 僕が君の敵だから
「何だよ光瑠。俺、お前を怒らせる様な事したか?」
「・・・・・・」
俺は背後に回した腕に力を込めスイッチブレードを振るう事で光剣を払い除ける。
光剣と身体との距離が空いた瞬間に俺は身体を反転させて光瑠と向かい合う。
「何のつもりだよ光瑠」
「悪いね。これは命令なんだ」
「何だよ命令って!」
光瑠は躊躇なく光剣を振るってくる。光剣の斬撃をスイッチブレードで防ぎながら光瑠に話し掛ける。
「クッ!」
光剣の刃が頬や肩を掠める。斬撃自体は充分に防げる範疇だ。しかし光瑠と殺し合いをする事を躊躇っている事が斬撃を防げない事に繋がっている。
「《
光剣を振るう光瑠を狙って飛来する黄金に輝く流星の如き槍。
光瑠は光剣を振るう手を止めてバックステップでその槍を回避する。
「星那さんか。何もしなければ君に危害を加えるつもりはない。大人しくしていてくれ」
「白夜君が何者かは分からないけど、この事を私に連絡されたら困るんじゃない?」
「問題無いよ。電波を遮断する結界を張っておいたからね」
「なるほど。でも私は引く気は無いわ」
「そうか」
いつもの様に笑顔を浮かべながら結梨へと忠告するが、結梨はその忠告を拒否して魔法陣を出現させる。
「《
結梨の目の前の魔法陣から無数に飛び出るのは野球ボールサイズの星色の魔弾。
光瑠はそれを回避しながら俺へと迫る。
「意味わからねぇ!何で俺がお前と戦わないといけないんだよ!」
「理由なんて僕が君の敵である、それだけで良いだろ」
光剣とスイッチブレードかぶつかり合い、生じた風が光瑠の髪を揺らす。
そこから再び始まる斬り合い。光剣とスイッチブレードの刃が何度も重なり合っては甲高い音が鳴り響く。
「良いわけあるかよ!」
垂直に振り下ろされる光剣をスイッチブレードの刃を横にしてガードする。
未だに防戦一歩だ。光瑠が強いというのもあるが、俺が心の中で光瑠との殺し合いを拒んでいるというのが響いている。
「本気で来い、でないと死ぬぞ黒木相真。《
そんな俺の心に喝を入れる様に、それまでの光瑠からは考えられないドスの効いた声で圧倒的な殺気を放ちながらそう言う。
それと同時に光瑠の右手に握られていた光剣に大量の魔力が注がれていき、光剣の形状が変化する。さっきまでの光剣は光が剣の形をしている、という見た目だったが今の光剣はさながら光を纏っている『聖剣』と呼ぶべきか。
「チッ。
あの聖剣はヤバい、と氣が教えてくれる。俺はしょうがなく
聖剣によるこれまでの最高速での袈裟斬りを俺はフルパワーでの横一閃で迎え撃つ。
互いの剣圧により双方が後ろに下がる。
「何でお前と戦わないといけないかも、お前が敵だって事も、何にも分かんねぇ!だから、お前をぶっ倒して全部話させる!」
俺は覚悟を決めてスイッチブレードを強く握り半身で構える。
「そうしてくれると助かるよ相真」
互いが同時に地面を蹴り、距離が詰まる。
次の瞬間、聖剣とスイッチブレードの刃がぶつかり、甲高い音が鳴る。
顔を狙った聖剣での刺突。俺はそれを首の動きだけで躱す。
刺突を外した光瑠は聖剣を横に振り首を狙うが、俺がスイッチブレードを聖剣が振るわれる前に聖剣にぶつける事で斬撃を振るわせない。
しかし光瑠の攻撃はまだ終わらす、至近距離での蹴りを放つ。俺はバックステップで後方に下がってそれを回避。
「「ハァァァ!」」
2人の気合の篭った声が重なる。
僅かに空いた距離を一瞬で詰めて互いに渾身の袈裟斬りを振るう。
刹那未満の格好。これまでにない威力の斬撃がぶつかり合い、双方が後ろに数メートル吹っ飛ぶ。
強制的に距離を離される。その瞬間ーー
「《
光瑠の手に握られていた聖剣が聖弓へと変化する。
そして3本の光り輝く矢が俺へと放たれる。
矢の速度自体は防げない程じゃない、3本という数も大した事はない。しかし3本の矢が同時に迫るとなれば話は別だ。
防げる矢は1本、精々2本が限界だ。
(急所に当たりそうな矢だけ防いで後は受けるしかないか・・・・・・)
その時ーー
「《
俺の目の前に銀河の様に輝く障壁が展開され、全ての矢をシャットアウトする。
「サンキュー助かった」
「私も一緒に戦うわよ」
「いいのか?光瑠は殺す気だぞ?」
「アンタが殺せるのを黙って見てるよりマシよ」
「ハハ、そうかよ。なら2人で勝つぞ」
俺達と光瑠との距離は数メートル。この距離を詰めなければ攻撃する事すら出来ない。だが、それはあくまで俺が攻撃する場合だ。
「《
結梨の目の前に直径1メートル程ある大きな魔法陣が展開される。その魔法陣から赤、青、金、紫などの光を放つ極太レーザーが放出され、光瑠へと迫る。
「へぇ・・・・・・」
光瑠はその極太レーザーを聖剣で叩き斬る。あれだけ魔力が圧縮された魔術を術式破壊するとは流石と言うべきか。だが俺達もこれだけで仕留められるとは思っていない。
「おっと」
レーザーの横から低くした姿勢で距離を詰め、中段の斬撃を叩き込む。
巨大なレーザーで視界と聖剣を封じてからの奇襲。
しかし左手の掌でスイッチブレード刃を受ける。
「チッ」
掌に展開している障壁魔術。大きさを絞る事で強度を増す。普通の障壁なら斬れていた俺の斬撃も完全に防がれた。
光瑠はバックステップで下がり、俺から距離をとる。
「《
光瑠の頭上に展開される星色の魔法陣。その魔法陣から出現する流れ星の如き魔弾。
だがあの魔術の欠点は速度が遅い事。範囲が広いとはいえ、後ろに下がれば簡単に避けられる。
光瑠もそれを理解したようで、後方へと一気に跳ぶ。
「おっらァ!」
空中にいる光瑠へ斬撃を飛ばす。攻撃範囲は狭いが威力と速度が高い斬撃。
「くっ・・・・・・」
光瑠は空中にいながらも聖剣を思いっきり横に振り、なんとか斬撃を防ぐ。
だが光瑠から初めて余裕が消えた。
「良い連携だね。でもッ!」
地面を蹴り俺に接近せんと駆ける。だがーー
「ーー!」
光瑠ぎ俺との距離を約半分まで詰めた所で急カーブする。光瑠の進行方向にいるのは結梨。
あれだけの威力の魔術を連続で撃てば隙が生まれる。あの聖剣なら障壁魔術も破壊出来る。奇襲出来れば結梨を殺せる。
(って考えてるんだろうな)
「結梨狙うのは分かってるぜ!」
「うぐっ!?」
結梨へと迫る光瑠に背後から蹴りを喰らわせる。光瑠は数メートル吹っ飛んで建物にぶつかる。
だが光瑠は蹴った瞬間に蹴りとは反対方向に跳ぶ事でダメージを減した。
(氣ってやっぱ凄えな)
今回は光瑠の視線、脚の動き、殺気の強さで結梨を狙っている事が予め分かっていた。なので光瑠が結梨を捉える前に攻撃出来た。
氣で情報を集められたからこそ出来た芸当だ。
「いやぁ、強いね。2人共」
「お前もよく耐えるな」
「負ける訳にはいかないからね。今度はこっちから行くよ。《
鍵言と共に光瑠の持つ聖剣が形が聖槍へと変わる。
光瑠はその聖槍を両手で構える。そしてーー
「ハァ!」
数メートルの距離を一気に詰めて聖槍での刺突。俺の腹を貫かんとする勢いで突きを放つ。
(その攻撃はもう分かってるよ)
槍での刺突は体育祭で経験している。体育祭の頃より数段速いが、
俺は槍での刺突をギリギリまで引き付けて半身を翻して躱す。
そしてカウンターの斬撃を首へと叩き込むがーー
「チッ」
斬撃は首に当たる寸前で障壁魔術によって防がれる。
どうやら予め仕掛けておいた様だ。
(俺が首狙うと読んで障壁を仕掛けたのか。だがもし読みを外せば大ダメージだ。おいおいコイツ・・・・・・)
「随分とギャンブラーだな」
「そうでもないさ。頭と首は守っていた。それ以外の箇所なら体捌きでなんとでもなるからね」
「うおっ!」
光瑠は聖槍と持ち手の部分での打撃を放つ。横に跳んでダメージを減らしたがそれでも近くの建物まで吹っ飛ばされた。
「《
光瑠は聖槍を聖斧に変化させ建物の壁に背を掛ける俺へと迫る。そして聖斧を垂直に振り下ろし、重い一撃を放つ。
俺はスイッチブレードを横にして剣身に左手を添えて頭上から迫る聖斧をガードする。
スイッチブレードと聖斧の拮抗が続く。どうやら光瑠はスイッチブレードごと俺を斬る気らしい。
「今度はこっちが読み切ったぞ!」
「《
俺がニヤッと笑いそう言うと、光瑠の背中を無数の流星の如き魔弾が捉える。
「くはっ!?」
さっき吹っ飛ばさせた時、吹っ飛ぶ方向をコントロールして光瑠が俺に追撃すれば結梨に背中を向けてしまう様にした。
「流石・・・・・・だね・・・・・・」
光瑠は鮮やかな赤色の血を口から吐き出す。
「ならそろそろ僕も本気を出そうかな」
「ッ!?」
その言葉と共に圧倒的な殺気が光瑠を包み込む。あまりの殺気に俺は無意識のうちに後退りしてしまう。
光瑠は口の周りの鮮血を拭って顔を上げる。そしてーー
「《
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます