第3話 魔王継承
目が覚めるとそこは見知らぬ場所だった。
「・・・・・・ここ・・・・・・は・・・・・・」
周囲は真っ白な壁に囲まれているのに、どこまでも広がっている様に感じられる不思議な場所、真っ白な壁も人工物と言うにはあまりに自然すぎる、しかし自然物にしては作り物の様に整っている。
この場所にあるあらゆる情報がここが現実でない事を表している。
「やっぱここはあの世なのかねー」
「天国じゃありませんよ」
俺が誰に言うでもなく呟くと、どこからともなくそんな声が聞こえて来る。
「まぁ、かと言って地獄でもありませんが」
声のした方を振り向くと、真っ白な空間には似合わない鮮やかな藍色の髪と透き通った紅い瞳を持った少女がそこには立っていた。
「フフ、久しぶり・・・・・・いや初めましてと言うべきですめ」
「あ・・・・・・えっと・・・・・・どなたですか?」
女の子に免疫が無い訳じゃないが、目の前のにいる美少女に一瞬見惚れてしまう。
「あぁすみません、自己紹介してませんでしてね。・・・・・・私はルナ、よろしくお願いしますね」
そう言って微笑んだ少女からは初対面のはずなのに、何故か懐かしさが感じられる。
「俺は黒木相真と申します。お見知り置きを」
状況も状況で混乱してる為、コミュ力の無さが露骨に出ている堅苦しい挨拶になってしまった。
「で、あの世じゃないならここはどこなんだ?」
「ここは君の精神世界、簡単に言うと心の中みたいなものです」
「せーしんせかい?」
最初に浮かんだ疑問を目の前の少女ルナに問い掛けてみると、とんでもない答えが返って来る。
(精神世界って何?心の中ってどういうこと?)
質問する前よりも疑問が増え、もう意味が分からない。
「全然わからない、悪いけど1から説明してくれないか?」
「良いですよ、えっと・・・・・・まず心臓を刺されたのは分かってますか?」
「・・・・・・ああ、分かってるよ」
ルナが申し訳なさそうにそう聞いて来る。
(刺された時は感覚が無かったけど・・・・・・言葉にすると違うダメージがあるな)
俺は無意識のうちに刺された辺りを手で触る。
「・・・・・・確かに相真君は刺されました。しかし、まだ死んではいません」
「・・・・・・どういうことだ?」
「さっき精神世界だと言いましたね。君がに死ぬ前に君の意識を
「引きずり込んだ?」
(そう言われてもなぁ、流石に信じられないだが)
「刺されたはずの君がピンピンしてるのが何よりの理由じゃないですか?」
俺の心が読めているかのように説明をしてくれる。
「読めてるんですよ、本当に」
「マジ?」
「マジですよ。君の精神世界であるこの場所を管理してるのは私なんですから当選じゃないですか」
(心を読まれるってなんか恥ずかしいな)
「話が逸れてしまいましたね・・・・・・君はまだ死んでいませんが、このままではいずれ死んでしまいます」
ハッキリと告げる。しかしその瞳には悲しみの色が見え、それが嘘では無い事が伝わって来る。
「・・・・・・ですが君を助ける事は可能です」
「え・・・・・・本当・・・・・・か?」
さっきから色々とんでもない事を聞いてきたが、それは流石に聞き流せない。本当に助かるのか?心臓を刺されているのにどうやって?など色々な思考が頭をよぎる。
「ええ本当です。それどころか君を刺したあの男をぶっとばす事だって可能ですよ」
俺の心を読んでか、ルナが捕捉を入れてくれる。そしてルナはさっきまでの微笑とは違う、少し不敵な笑みを浮かべ、
「私が
「・・・・・・はい?」
いきなり厨二病ワードのオンパレードみたいなこと言われて、呆然としてしまう。
「えっと・・・・・・それマジで言ってるのか?能力とか魔力とか流石に信じられないんだが」
「精神世界なんかで私と話してる時点で今更では?」
「いや・・・・・・確かにその通りなんだけど・・・・・・」
「まぁ相真君は一般人ですし、信じられないのはしょうがないですが」
ルナは俺の肩に手を置くとハッキリとした口調で、
「でも信じて下さい、私は君を助けたいんです」
そう告げて、俺を見つめる力強いその瞳に吸い込まれそうになる。
「・・・・・・ああ、分かった。じゃあその能力とやらで俺は助かるのか?」
「ええ、ですが1つだけ・・・・・・」
「ん、なんだ?」
「もし君が能力者になったとすれば・・・今よりもっと辛く苦しい運命が待っていると思います、それでもいいですか?」
ルナは申し訳なさそうな、それでいて悲しそうな表情でそう告げる。
(・・・・・・辛く苦しい運命・・・・・・ね)
「なぁ1つ聞いていいか?」
「はい、なんですか?」
「もしここで俺が生き返らなかったら・・・・・・あの2人は・・・・・・結梨と朱音はどうなる?」
「・・・・・・恐らく助からないかと・・・・・・あの男はなんらかの方法で身体強化を行なっていました、一般人に逃げ切るのは不可能かと・・・・・・」
俺の質問にルナはバツが悪いと言った表情をしてそう答える。
「・・・・・・なるほど、じゃあその話に乗るよ。そうすればあの2人を助けられるんだろ」
「ええ、出来ます。・・・・・・でも本当にいいんですか?」
「ああ・・・・・・どんなに辛く苦しくても、大切な人が死ぬのを黙って見てるなんて出来ないからな」
「・・・・・・フフ、確かにそうですね」
俺の答えにルナは一瞬驚いた様な表情を浮かべるがすぐにさっきまでの様に優しく微笑み、
「分かりました。では
そう言って俺の胸の辺りに触れると、マンガなどでよく見る魔法陣の様な物が現れる。
「うお!何これ凄え!」
俺が自分の胸の前に現れた魔法陣に驚いていると、その魔法陣は周りの真っ白な壁とは対照的に漆黒の輝きを見せる。
そしてこの空間が闇色の光に包まれたーー
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