はじまりの合図
今村広樹
前編
カズマが彼女に話しかけられたのは、高校にある図書室でこの世界について調べていたときのことだった。かれは気がついたらこの世界にいたので、学生に混じっていろいろ学んでいたのである。
「ねえ、あなた世界横断レースに興味ない?」
と、いきなり学生服をきた少女が話しかけてきて、カズマはドギマギしながら、こう返した。
「いや、世界横断レースなんて知らないし、そもそも君がだれかもわからないんだけど」
「ああ、そういえば、あなた来訪者だったわね、じゃあ1から説明しましょう!!!」
と、少女はない胸を反らしながら、説明を始める。
さて、まずは世界横断レースと呼ばれるイベントについて、説明してみよう。この世界には帝国、共和国、皇国のいわゆるトリニティと呼ばれる国々があり、さらに学園都市や資源財団、連合警察といった団体があるのだけど、この6つの勢力が共同で運営する世界横断レースというのがあるの。帝都を出発して、野を越え山越え、未知の世界を探索しながら、帝都に戻るというレースね。当然、早く着いたほうが1位になるわ。わたしも出たいんだけど、2人1組であと整備士が必要らしいのよね。整備士についてはわたしに
が適任と言われたわ。
「…というわけで、頼めるかしら?」
カズマはしばらく考えた風だったが、首を軽く会釈するように動かすと
「ああ、あの先生の紹介か、それならいいよ」
「ええ、ありがと」
「でも、名前も知らない人と」
「エレンよ!」
と、食いぎみに少女は名前を教える。
「よろしくね!」
「ああ、よろしく」
「というわけで、まずはこれにでるわよ」
エレンはカズマにチラシを突きつける。そこには
『
と、書かれていた。
「これは?」
「予選会よ。本選のまえに、何回か予選に出ないといけないの」
「ふうん」
そうして、予選会当日。
「なんだい、このポンコツは?」
となりにきた選手に揶揄されて、エレンはカリカリ怒って、こう返した。
「なによ、性能と新しさは比例しないのよ!」
「まあまあ」
と、カズマはなだめるが、たしかにその相手と比べると格段にオンボロな蒸気馬車なので、正直不安だったりした。
『出場者の方は、所定のスタート位置に待機してください』
「ほら、いくよ!」
エレンは心底ワクワクしてる様子で、自分たちのスタート位置を指差した。
やがて、レースのはじまりの合図である、
パァァァァ~ン!!!
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